指定難病に該当する胎児・新生児骨系統疾患の現状調査と診療ガイドラインの改訂に関する研究

文献情報

文献番号
201610099A
報告書区分
総括
研究課題名
指定難病に該当する胎児・新生児骨系統疾患の現状調査と診療ガイドラインの改訂に関する研究
課題番号
H28-難治等(難)-一般-017
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
澤井 英明(兵庫医科大学 医学部・産科婦人科学)
研究分担者(所属機関)
  • 室月 淳(宮城県立こども病院 産科)
  • 山田 崇弘(北海道大学 医学部)
  • 高橋 雄一郎(長良医療センター 産科)
  • 宮崎 治(国立成育医療研究センター 放射線診療部)
  • 芳賀 信彦(東京大学 医学部)
  • 鬼頭 浩史(名古屋大学 医学部)
  • 窪田 拓生(大阪大学 医学部)
  • 大森 崇(神戸大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
11,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
客観的な指標に基づく疾患概念が確立されている胎児・新生児の骨系統疾患として、①タナトフォリック骨異形成症、②軟骨無形成症、③低ホスファターゼ症、④骨形成不全症がすでに指定難病に選定されており、全国共通の診断基準・重症度分類が定められている。本研究ではその改訂や小児慢性特定疾病との整合性検証作業、難治性疾患実用化研究事業の診療の質を高める研究で集積したエビデンス等も用いて、現行の指定難病の診断基準や重症度分類などの診療ガイドラインの適正化や普及活動を行い、指定難病や小児慢性特定疾病を中心とした胎児・新生児の難病である骨系統疾患の医療水準の向上に貢献することが目的である。
研究方法
具体的な疾患の担当は、これまでの厚労科研研究班の分担の経緯から、①は研究代表者の澤井が②③④は研究分担者の窪田が(研究協力者:大阪大学・大薗恵一)担当した。
本研究においてH28年度とH29年度は指定難病の診断基準や重症度分類などの診療ガイドラインの適正化や普及活動、患者数の調査とその病状の把握、実際の指定難病の申請状況の調査などを行った。(またはH29年度にかけて実施中である)
結果と考察
1)疾患別の診断基準と重症度分類
・軟骨無形成症、骨形成不全症、低ホスファターゼ症、タナトフォリック骨異形成症の診断基準と分類について
2)疾患頻度の調査
報告された総症例数337症例(2015年3月まで)のデータ(分析未完了)から患者数を推定し、どの程度の頻度であるかを算出した。
骨形成不全症の疾患頻度は疾患頻度としては軟骨無形成症と同じ1人/2万人が一般的であるが、胎児骨系統疾患フォーラムの報告は妊娠中期までの症例(2型)が約半数含まれており、それを含めると1人/1万人にひとりと推定し頻度は多くなる。
タナトフォリック骨異形成症についても同様で、1人/2~4万人とされているが、妊娠中期までに診断されて人工妊娠中絶になっている症例が約半数程度あり、出生しない症例を含むと1人/1万人となる。
 低ホスファターゼ症は1人/2万人となった
2型コラーゲン異常症は1人/2万人となった。
3)コホート研究
 対象施設:北海道、山形県、宮城県、岐阜県、兵庫県、山口県で出産、流産を取り扱う全産婦人科施設 
患者対象:成人妊婦のうち以下の(1)、(2)に該当する患者で、各指定地域で出生した症例としている。
(1)各道県で妊娠中絶した症例において、胎児に骨系統疾患が疑われる場合
(2) 各道県で妊娠22週以降の出生児において骨系統疾患が疑われる場合期間:2015年4月からの2年間は症例登録期間として実施中。
登録症例:
 岐阜県:低フォスファターゼ症 ⇒ 出生1例
     骨形成不全症2型 ⇒ 流産2例
     タナトフォリック骨異形成症 ⇒ 流産1例
 山形県:該当なし
 北海道:軟骨無形成症 ⇒ 出生1例
 宮城県:該当なし
 兵庫県:Ⅱ型コラーゲン異常症 ⇒ 出生1例
     骨形成不全症1か4か5型 ⇒ 出生1例
 山口県:該当なし
考察:4月から症例登録を開始しており、現在で半年程度経過時点でのデータである。現時点ではまだ登録事業を開始したところであり、頻度の推定は困難である。引き続き登録事業を継続する。

4)胎児CTの被曝線量に関する全国調査結果
 宮嵜より報告書別途。残る課題が胎児CTのガイドラインであり、今年度中に完成させる予定である。

5)骨系統疾患の遺伝子診断の実施状況
 北海道大学の山田から、遺伝子診断は軟骨無形成症が大阪市立総合医療センター、骨形成不全症が日本大学板橋病院、低ホスファターゼ症が大阪府立母子保健総合医療センター、タナトフォリック骨異形成症が大阪市立総合医療センター、Ⅱ型コラーゲン異常症が(株)SRLで実施可能になった。

6)骨系統疾患の最新の国際分類2015の和訳状況
 日本整形外科学会が主導で実施中。

7)低ホスファターゼ症の胎児期からの早期診断のためのALP値の指標
 長良医療センターの高橋がアレクシオンファーマ社との共同研究。
結論
骨系統疾患は重症型の場合には胎児期に死亡することがあるため、出生後の統計である日本整形外科学会のデータベースでは正確な把握が困難なことが知られてきた。今回の胎児期~新生児期の疾患データにより、正確な頻度が把握できると考える。
 またコホートの研究については骨系統疾患の発生頻度が少ないことから、継続的な疾患把握が必要と考える。
 指定難病の遺伝性検査体制は、骨系統疾患についてはほぼ確立できたので、保険診療として実施できるかどうかによって実施頻度が変わると推定されるので、引き続き実施体制の整備に努める。

公開日・更新日

公開日
2017-06-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-06-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201610099Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
14,950,000円
(2)補助金確定額
13,790,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,160,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 205,705円
人件費・謝金 0円
旅費 1,448,261円
その他 8,686,076円
間接経費 3,450,000円
合計 13,790,042円

備考

備考
1,160,000円 返還

公開日・更新日

公開日
2018-02-19
更新日
-