食欲中枢異常による難治性高度肥満症の実態調査

文献情報

文献番号
201610096A
報告書区分
総括
研究課題名
食欲中枢異常による難治性高度肥満症の実態調査
課題番号
H28-難治等(難)-一般-014
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
龍野 一郎(東邦大学医学部医学科 糖尿病・代謝・内分泌学分野(佐倉))
研究分担者(所属機関)
  • 瀬戸 泰之(東京大学大学院医学系研究科 消化管外科学・代謝内分泌外科学)
  • 松原 久裕(千葉大学大学院医学研究院 先端応用外科学)
  • 岡住 慎一(東邦大学医学部医学科 外科学講座(佐倉))
  • 横手 幸太郎(千葉大学大学院医学研究院 細胞治療内科学講座)
  • 佐々木 章(岩手医科大学医学部 外科学講座)
  • 太田 正之(大分大学医学部 消化器・小児外科学講座)
  • 内藤 剛(東北大学大学院医学系研究科 外科病態学講座生体調節外科学分野)
  • 山本 寛(草津総合病院 第二外科)
  • 卯木 智(滋賀医科大学 糖尿病内分泌内科)
  • 齋木 厚人(東邦大学医学部医学科 糖尿病・代謝・内分泌学分野(佐倉))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
770,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高度肥満は健康障害の発症や重症化を来しやすく、また内科的減量治療に抵抗性である。この高度肥満に対し日本でも一部の術式が保険収載され、平均30%程度の体重減少や合併症の改善を認めている一方で、ほとんど体重減少が得られない症例も一部で存在する。これらの症例に共通するのは、食欲が非常に強く、自己コントロールが不良で、外科治療でも抑制できないことである。この食行動の食欲中枢異常による高度肥満症は生活習慣病とは独立した病態で、比較的若年で発症し、内科・外科治療に反応が乏しく、合併症の悪化に伴い予後の悪い難病と考えられる。平成28年度は、難治性高度肥満症の実態を明らかにするため3つの調査が計画された。
①食欲中枢異常による難治性高度肥満症の実態調査:関連研究施設に受診したBMI35以上の高度肥満のうち、肥満外科治療症例を対象とし、その中で食欲中枢異常があり術後の体重減少が得られない症例を抽出し、術後体重減少不良の定義を行うとともに、そのような症例の背景要因や合併症、予後などを明らかにする。
②透析患者における過去最大体重に関する調査:透析患者の過去最大体重を調査し、透析導入の原因に及ぼす高度肥満の影響をみることで、医療経済的な問題点を明らかにする。
③高度肥満症の全国調査:高度肥満症の全国調査を行い、その頻度や通院状況、合併症、予後などを明らかにする。
「食欲中枢異常による難治性高度肥満症」の診断基準を策定することを本班研究の最終目的とする。
研究方法
①食欲中枢異常による難治性高度肥満症の実態調査:日本肥満症治療学会の後援のもと、国内で肥満外科治療を行っている多数の施設による多施設共同研究。対象は20~65歳で術前BMI35以上の高度肥満症例で術後2年以上経過した527例。過食症、むちゃ食い障害厚など中枢性摂食異常症(摂食障害)は除外した。調査項目は、体重の変化、有病率、外科的治療の効果、合併症、家族歴、新規イベントとした。
②透析患者における過去最大体重に関する調査:みはま香取クリニック、東葛クリニック病院で維持透析中の患者のうち、2010年6月から2016年5月までに透析導入となった724名を対象とした。
③高度肥満症の全国調査:日本糖尿病学会の認定教育施設(686施設)を対象に、糖尿病総患者数に対する高度肥満患者や肥満外科治療検討者などの割合を明らかにする目的で一次調査(アンケート送付)を行い、そのうち賛同が得られた施設において二次調査を行う方針とする。
結果と考察
①食欲中枢異常による難治性高度肥満症の実態調査:体重減少不良のひとつの目安となる超過体重減少率(%EWL)50%未満は、全体の30.0%存在した。平成29年度は「難治性肥満」の定義に用いる指標をさらに検討する。術式はスリーブ胃切除術単一とし、評価指標は再検討し基本的には国際的に標準化されつつある%TWLを用いる方向とし、また%EWLや%EBMILを用いる際の標準体重はBMI25とする。また評価項目は体重のみならず、糖尿病やその他の身体的合併症の改善度を含めることとする。また難治性肥満症例の心理社会的背景調査では、学童期以前からの肥満が多いこと、またそのような集団は発達障害スペクトラムの例が多い傾向があり、より詳細な調査が必要と思われた。
②透析患者における過去最大体重に関する調査:透析患者は過去に高度肥満であった割合が非常に高く、高度肥満が将来の末期腎不全や透析導入に至る病態として重要であることが示唆された。
③高度肥満症の全国調査:高度肥満症の全国調査を行い、その頻度や通院状況、合併症、予後などを明らかにするための一次調査を開始した。
結論
平成29年度は前年度からの調査を継続し、特に肥満外科治療後の体重減少不良の定義に用いる指標や、評価項目として体重以外の身体的合併症の改善度を含める方向で検討する。日本肥満症治療学会で特別企画の開催も行う。最終的には難治性高度肥満症診断基準(案)の作成、関連学会を含めたパブリックコメントの募集、診断基準最終案の策定を行う。食欲中枢異常による難治性高度肥満症例は、その頻度は低いことが想定されるが、現在医療として手立てがない状態であり、その放置は合併症の多発・重症化や、医療難民化をもたらしている。本班研究において難治性高度肥満症診断基準を策定することで、食欲中枢異常による難治性高度肥満という病態を正しく広く認識してもらうことができ、抗肥満薬の開発、治験などがより推進されることを期待する。症例を集積することにより、家族発症例などを見出すことも出来ると思われ、今後の病態解明に貢献できると思われる。

公開日・更新日

公開日
2017-08-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201610096Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,000,000円
(2)補助金確定額
990,000円
差引額 [(1)-(2)]
10,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 281,143円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 479,260円
間接経費 230,000円
合計 990,403円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-03-01
更新日
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