ダイオキシンによる子宮内膜症誘発機序に関する研究

文献情報

文献番号
199800560A
報告書区分
総括
研究課題名
ダイオキシンによる子宮内膜症誘発機序に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
安田 峯生(広島大学医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 山下敬介(広島大学医学部)
  • 松井浩二(広島大学医学部)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 生活安全総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
15,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、ヒトの子宮内膜症が増加しつつあるとの懸念が広がっており、ダイオキシン汚染との関連性が疑われている。ヒト子宮内膜症の発症機序の解明に資するため、これを実験的に検証する目的で本研究を開始した。研究は以下のように進められる。(1)子宮内膜症マウスモデルを確立すること。(2)ヒトの場合、ダイオキシン汚染と子宮内膜症との関連が言われているので、上記の子宮内膜症マウスモデルを用いて、ダイオキシンの影響を評価すること。(3)ダイオキシンが子宮内膜(粘膜)の増殖(あるいは抑制)に関与することが明らかとなれば、ついでその増殖(あるいは抑制)メカニズムを解明すること。具体的には、その作用はダイオキシンの子宮内膜への直接作用かどうか。あるいは、免疫障害・内分泌障害を介するものかどうか。ついで、得られた結果から、ヒト子宮内膜症発症に至るカスケードを解明すること。これらを研究の目的とする。
研究方法
平成10年度は3年計画の初年度にあたり、子宮組織の自家移植法による子宮内膜症マウスモデルを作製し、基礎的実験を行った。マウスやラットでは子宮内膜症の自然発生はなく、またダイオキシンを慢性的に投与しても子宮内膜症はおこらない。そこで、子宮断片を腹膜腔内に移植することにより、外科的に子宮内膜症を誘発した。次のように子宮内膜症モデルを作製した。成熟雌マウス(C57BL/6J)を麻酔下に開腹した。右子宮角を切り出して 2 mm角の子宮断片とし、その3ないし4個を同じマウスの小腸間膜の血管上に漿膜面を下にしてナイロン糸で縫合した。手術後8週までにマウスを屠殺し、移植片のサイズと重量を計測して、子宮内膜の増加の指標とした。なお、移植手術時に併せて両側の卵巣を摘出したところ、移植片は完全に退縮し、移植片の発育には内因性のエストロゲンが必要であることが示唆された。
結果と考察
腸間膜上に自家移植された子宮片は生着・発育し、子宮内膜症実験モデルが確立した。子宮片は3-5 mmの球形ないし卵形の白色の塊をなし、表面から多数の血管が侵入しており、組織学的には子宮内膜を内面にし、間質ならびに筋層に取り囲まれ漿膜で被われたシストを形成し、その内腔には好中球を含む液体が貯留していた。移植の術前10日にダイオキシン(2,3,7,8四塩化ジベンゾパラジオキシン、以下TCDDと略)を体重1キロあたり40μgの割合で1回強制経口投与したところ、子宮片の発育は対照(溶媒投与)と差がなかった。しかし、同量のTCDDを術前10日から術後にかけて3週毎に繰り返し投与したところ、肝腫大・胸腺萎縮が著しく、子宮片には発育抑制と退縮が認められ、この用量ではTCDDは子宮内膜の発育に抑制的に作用するものと推測された。
結論
今までのところTCDDを1つの用量で実験しただけなので、明確な結論を得るにいたったとは言えない。今後、さらに低い用量で実験を行い、ダイオキシンが子宮内膜の増殖に与える影響を評価してゆきたい。
(1,442字)

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