脳クレアチン欠乏症候群を中心とした治療可能な知的障害症候群の臨床研究

文献情報

文献番号
201610093A
報告書区分
総括
研究課題名
脳クレアチン欠乏症候群を中心とした治療可能な知的障害症候群の臨床研究
課題番号
H28-難治等(難)-一般-011
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
和田 敬仁(京都大学大学院 医学研究科 医療倫理学・遺伝医療学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 小坂 仁(自治医科大学 小児科)
  • 後藤 知英(神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター)
  • 相田 典子(神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター)
  • 新保 裕子(神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター)
  • 秋山 倫之(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 粟屋 智就(京都大学大学院医学研究科)
  • 高野 亨子(信州大学医学部 遺伝医学・予防医学教室)
  • 露崎 悠(神奈川県立こども医療センター 小児神経学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
2,734,000円
研究者交替、所属機関変更
秋山倫之;岡山大学病院小児神経科 講師->岡山大学大学院医歯薬学総合研究科,准教授 粟屋智就;京都大学医学部附属病院 助教->京都大学大学院医学研究科 特定助教

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班では、脳クレアチン欠乏症候群およびATR-X症候群を対象とする。
脳クレアチン欠乏症候群(cerebral creatine deficiency syndromes: CCDSs)は、先天性代謝性疾患の一つであり、脳内クレアチン欠乏をきたし、精神遅滞、言語発達遅滞、てんかんを引き起こし、グアニジノ酢酸メチル基転移酵素(GAMT)欠損症、アルギニン・グリシンアミジノ基転移酵素(AGAT)欠損症、 クレアチントランスポーター(SLC6A8)欠損症の3疾患が知られ、特にSLC6A8欠損症は遺伝性精神遅滞の中では脆弱X症候群やダウン症候群についで、もっとも頻度が高い疾患である。まだ、難病指定されていない。
ATR-X症候群はエピジェネティクスの破綻により発症する上記のクレアチントランスポーター欠損症と同じ、X連鎖性知的障害症候群の一つである。日本で約100名の患者が診断され、家族会(ATR-X症候群ネットワークジャパン)も存在し、難病指定され、治療法の開発も進められている。
本研究の目的は日本におけるCCDSsおよびATR-X症候群の診断基準,重症度分類、診療ガイドラインを作成し、臨床家に周知させ、症例を登録し、近い将来の治験のための基盤整備を進める.
研究方法
1. 脳クレアチン欠乏症候群を中心とした治療可能な知的障害症候群の脳MRI/MRSに関する研究(相田)
2. 脳クレアチン欠乏症候群における3疾患の診断・治療効果評価方法の開発に関する研究(秋山、粟屋、露﨑、小坂)
3. 脳クレアチン欠乏症候群の疫学調査に関する研究(後藤)
4.脳クレアチン欠乏症候群の診断に関する研究(新保)
5. 脳クレアチン欠乏症候群の遺伝学的解析に関する研究(高野)
6. 脳クレアチン欠乏症候群ハンドブックの作成(相田、秋山、粟屋、小坂、後藤、新保、高野、露﨑、和田)
7. 脳クレアチン欠乏症候群の病態解明に対する研究(小坂)
8. 患者レジストリー制度とホームページの作成(和田)
9. ATR-X症候群患者健康管理ハンドブックの作成(和田)
10. ATR-X症候群患者健康管理カードの作成(和田)
10. 脳クレアチン欠乏症の研究会および患者会の開催患者(和田)
結果と考察
1. クレアチントランスポーター欠損症の他に、シェーグレンラルソン症候群、GABAトランスアミナーゼ欠損症、新生児発症メチルマロン酸血症の症例に対する早期診断のMRSの有用性が明らかにされた。
2. 文献調査と患者情報の収集により、診断基準作成のための準備が整ってきている。
3.神奈川県立こども医療センターにおける、発達遅滞・自閉症・てんかんのいずれかを主訴に含んでいた650症例のうち約半数が男児であるとした場合、当院で遭遇すると期待されるクレアチン輸送体欠損症の症例数は最大で年間0.49~5.69人と推定された。
4.クレアチン代謝異常症の診断を目的とし、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)-UV装置を用いて、クレアチン関連化合物の分析条件検討を行い、保持時間10分以内にCR, GA, CNが分離する移動相の条件を検討した結果、0.075%ギ酸水溶液で良好な結果が得られ、尿中のクレアチン関連化合物のHPLC測定は、クレアチン代謝疾患の診断に有用であることが示された。
5.SLC6A8遺伝子には相同性が非常に高い偽遺伝子が存在することまたGC richな領域があるため、増幅が困難でありIon PGMでの同遺伝子のカバー率は87%であり変異を見逃している可能性も考えられた。CCDSsの診断には尿を用いた生化学的スクリーニングや脳MRSの併用が有用であると考えられた。
6.ハンドブックによる疾患の周知が期待される。
7.Glut1欠損症の治療成功はクレアチントランスポーター欠損症に対する治療法につながることが期待される。
8.将来の臨床研究に備えて、基盤が整ってきている。
9.ATR-X症候群でもっとも問題となる消化器症状に対する情報は、患者さん・ご家族に有益な情報になることが期待される。
10.ATR-X症候群の患者さんやご家族がスムーズに医療機関や学校などにコンタクトできることが期待される。
11.日本では診断数の少ないクレアチントランスポーター欠損症のご家族にとって、情報交換の機会となり、孤立感が軽減したと考えられる。

結論
次年度に向けての、診断基準作成や疾患周知、情報提供の準備は順調に整った。

公開日・更新日

公開日
2017-06-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
その他
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2017-07-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201610093Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,549,000円
(2)補助金確定額
3,548,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 771,442円
人件費・謝金 68,700円
旅費 360,546円
その他 1,532,976円
間接経費 815,000円
合計 3,548,664円

備考

備考
1,000円 返還

公開日・更新日

公開日
2018-03-06
更新日
-