循環器難病に随伴する後天性フォンウィルブランド症候群の診断基準・重症度分類の確立

文献情報

文献番号
201610090A
報告書区分
総括
研究課題名
循環器難病に随伴する後天性フォンウィルブランド症候群の診断基準・重症度分類の確立
課題番号
H28-難治等(難)-一般-008
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
堀内 久徳(東北大学 加齢医学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 小亀 浩市(国立循環器病研究センター 分子病態部)
  • 松本 雅則(奈良県立医科大学 輸血部)
  • 齋木 佳克(東北大学 医学系研究科)
  • 下川 宏明(東北大学 医学系研究科)
  • 木村 剛(京都大学 医学研究科)
  • 安田 聡(国立循環器病研究センター 病院)
  • 中川 義久(天理よろづ相談所病院 循環器内科)
  • 山中 一朗(天理よろづ相談所病院 心臓血管外科)
  • 土井 拓(天理よろづ相談所病院 小児科)
  • 安藤 献児(小倉記念病院 循環器内科)
  • 羽生 道弥(小倉記念病院 心臓血管外科)
  • 福本 義弘(久留米大学 医学部)
  • 海北 幸一(熊本大学 医学部附属病院)
  • 仲瀬 裕志(札幌医科大学 医学部)
  • 下瀬川 徹(東北大学 医学系研究科)
  • 松浦 稔(京都大学 医学研究科)
  • 大花 正也(天理よろづ相談所病院 消化器内科)
  • 鳥村 拓司(久留米大学 医学部)
  • 山口 拓洋(東北大学 医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
3,847,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動 研究分担者 仲瀬裕志 京都大学( 平成28年4月1日~28年4月4日)→ 札幌医科大学(平成28年4月5日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
止血因子フォンウィルブランド因子(VWF)は巨大多量体として産生され、ずり応力依存的に切断される。血中では2-80サブユニットから構成される多量体として存在するが、高分子量領域の多量体が止血機能に重要である。非生理的な高ずり応力下には、VWF切断が亢進し、止血異常症である後天性フォンウィルブランド症候群(AVWS)となる。我々の少数例の研究(T. Tamura他JAT, 2015)より我が国でも数万人はaVWS合併例が存在すると推定されるが、多くの診療現場では本病態は存在すら知られていない。さらに肺動脈性肺高血圧や慢性血栓塞栓性肺高血圧症、(閉塞性)肥大型心筋症、ファロー四徴症等の難病や、重症の拡張型心筋症(難病)等による重症心不全治療の最終治療手段である機械的補助循環でもaVWS合併の報告がある。しかし現状ではそれぞれの疾患でのaVWS合併頻度やaVWSが原因の大出血の頻度すら不明である。本研究では上記の難病を含む循環器疾患を体系的に評価し、疾患毎にaVWS合併の実態を解明し、その診断基準・重症度分類を確立することを目的とする。
研究方法
本研究では、まず、VWF多量体解析の標準化し、定量化法を確立し、そして、種々の疾患を登録し、前向きに2年間観察し、横断的及び縦断的解析によって循環器疾患毎におけるaVWSの頻度、大出血をきたす状況・頻度、出血予知のための指標等を明らかにする。
結果と考察
1.解析法の標準化・定量化:VWF多量体解析法は約2,000万ダルトンにおよぶVWF多量体の非還元条件下のSDS-agarose電気泳動とその後のウェスタンブロットである。平成28年度には、国立循環器病研究センターチーム、奈良医大チーム、そして私たちの東北大加齢研チームが会合を重ねて、標準化を行い、それぞれの施設で同様の結果が出るようにした。本研究では、the VWF large multimer index (T. Tamura他JAT 2015)を用いて定量評価することとした。このIndexを用いることによって、施設間や検査者間等の影響をできるだけ排除でき、また、標準血漿を100%としたときの患者VWF高分子多量体量を%表示で定量評価することができる。本年度は標準血漿を作成した。本研究の全ての解析は、この対照としてこの標準血漿を用いて行う。

 なお、本定量指標は世界的にも認められつつあり、ペンシルベニア大心臓外科と米国の同施設の補助人工心臓(LVAD)症例を定量評価する国際共同研究を開始した。この研究は、国際機械的補助循環学会の国際共同研究費を獲得した。さらに、2017年7月ベルリンで行われる国際血栓止血学会の学術標準化委員会シンポジウムで発表予定である。標準的な定量法として提案する計画である。

2.循環器分野の症例登録:

参加診療施設より平成29年5月17日までに、循環器疾患452例が登録され、1517検体が東北大学加齢研に送付され保管されている。VWFマルチマー解析の準備も整い、順次解析を行う計画である。疾患別では大動脈弁狭窄症が多く、今後、肺高血圧や肥大型心筋症を増やしていく計画である。

3.消化器分野の症例登録:

消化器系では当初、原因不明の小腸出血を対象とする計画であったが、症例が集まりにくいとの指摘があり、明らかな腫瘍や憩室、炎症を認めない、下部消化管(小腸・大腸)と変更した。今後そのような症例においてのAVWSの寄与度を明らかにしていく。

4.補助人工心臓LVADに随伴するAVWSに関する研究:

植込型補助人工心臓装着症例等は約65例の登録があった。我々の東北大におけるこれまでの小規模な成果発表や、国内外での研究成果によって、我が国における人工心臓装着症例の出血性合併症発症におけるAVWSの寄与度の大きな関心が寄せられ、平成28年度に全国のLVAD医療を積極的に行っている10施設と、本AVeC研究における3つのVWF多量体解析施設が共同して、LVAD症例を登録し、AVWSを評価しつつ出血性合併症を前向きに評価する多施設共同前向き臨床研究LVAD-AVWS Studyを開始した。このLVAD-AVWS Studyは、平成29年度の日本医療研究開発機構(AMED)の研究費に採択され、本AVeC Studyと互いに協調しつつも、独立して研究を進めることとなった。

5.ホームページの作成・公開:

本疾患周知のため、本疾患および本厚労省政策研究についてホームページ(http://www2.idac.tohoku.ac.jp/avec/)を作成した。
結論
初年度である平成28年度には、解析法を標準化・定量化し、循環器疾患を中心に順調に症例登録が進んだ。

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201610090Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,000,000円
(2)補助金確定額
5,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,584,581円
人件費・謝金 0円
旅費 176,890円
その他 85,553円
間接経費 1,153,000円
合計 5,000,024円

備考

備考
自己資金 24円

公開日・更新日

公開日
2018-03-06
更新日
-