炎症性動脈瘤形成症候群の治療法選択に関する研究

文献情報

文献番号
201610085A
報告書区分
総括
研究課題名
炎症性動脈瘤形成症候群の治療法選択に関する研究
課題番号
H28-難治等(難)-一般-003
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
勝部 康弘(日本医科大学 武蔵小杉病院 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 佐地 勉(東邦大学医療センター大森病院 小児科)
  • 吉田 恭子(今中 恭子)(三重大学大学院医学系研究科 実験病理学)
  • 武田 充人(北海道大学大学院医学研究科 小児発達医学分野)
  • 大熊 喜彰(国立国際医療研究センター 小児科)
  • 小林 徹(国立成育医療研究センター 臨床研究開発センター)
  • 加藤 太一(名古屋大学医学部付属病院 小児循環器病学)
  • 池田 和幸(京都府立医科大学 小児循環器科)
  • 吉兼 由佳子(福岡大学 小児科)
  • 須田 憲治(久留米大学 小児科)
  • 山村 健一郎(九州大学 小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
1,140,000円
研究者交替、所属機関変更
該当なし

研究報告書(概要版)

研究目的
炎症性動脈瘤症候群では、全身性動脈炎を基盤として、弾性板など血管壁構造が破壊され、不可逆的な著しい内腔拡張、すなわち動脈瘤が形成される。特に冠動脈瘤は生命予後に直結する重篤な疾患であるが根治療法はない。ほとんどが小児期に発症し、川崎病に合併することがよく知られてきたが、免疫グロブリン治療の普及により伴い冠動脈瘤発症数は著しく減少した。しかし、その後瘤合併数の著しい減少は見られず、ゆっくりとした減少にとどまっている。第23回川崎病全国調査成績によると、年間約15,000人の患者が発生し、冠動脈後遺症のうち瘤、巨大瘤を併せて年間約200人の新たな冠動脈瘤合併患者が発症する。冠動脈瘤形成を予知する有用な指標はない。免疫グロブリン不応例を初期治療開始前に予測して、より集中強化した初期治療を選択する優れた治療戦略をとることが求められている。
このような背景から、これまで様々な免疫グロブリン不応例を予測するモデル(リスクスコア)が提唱されているが、冠動脈病変合併の抑制に大きく貢献しているとは言い難い。
 本研究課題はバイオマーカーにより免疫グロブリン不応例を治療開始前に予測すること、ガイドライン改訂のための資料の提供することを目的とする。
研究方法
1)冠動脈瘤形成実態調査と瘤形成新規予知マーカーの有用性の検証
バイオマーカーを広く検討するため第一段階として、学会、論文等で報告されているバイオマーカーをエビデンスにより分類し(研究デザインによるレベル分類(クラス)と推奨レベルによる分類(グレード))、臨床応用の可能性などを考慮して、前向き研究に行うバイオマーカー(5種類程度)を選定する。選定は研究代表者、分担者がそれぞれ論文等を調査し行う。

2)川崎病患者血中バイオマーカーの前向き研究
デザイン:前向き観察研究
a.症例エントリー:川崎病の診断は厚生労働省川崎病研究班作成改定5版ガイドラインに準拠して行う。
登録データは日本医科大学に収集管理する。
症例登録参加施設:北海道大学、国立成育医療センター、国立国際医療研究センター、東邦大学、三重大学、日本医科大学、富山大学、福岡大学、久留米大学、九州大学
目標症例数:川崎病1000例。
b.検査プロトコール:
血液検査
採血時期:治療前、治療終了2日後(または2nd line治療前)、30病日
検査項目:一般的項目に加えバイオマーカー検査用に血漿、血清を採取し、検査まで-80℃で保存。
心臓超音波検査:入院中~第30病日までに心エコー検査を実施。
結果と考察
研究結果
システマティックレビューは、川崎病の診療に精通する研究代表者ならびに分担者らにより、これまで報告されている川崎病に関連バイオマーカーを列挙してもらい、挙げられたバイオマーカーについて文献の検索を行った。原書のみならず学会報告の抄録も対象とした。検索は司書に依頼し、まず分担者らにコアとなる論文を推薦しもらい、その上で検索式をたてMEDLINE、EMBASE、CENTRAL、医中誌を検索した。検索結果にコアとなる論文が含まれているのを確認した。以上のプロセスを経て評価する論文を抽出し、各バイオマーカーのエビデンス分類を行った。現在これらのバイオマーカーのうちおおよそ4/5の検索が終了している。
前方視的研究に関しては次年度の研究として計画している。本年度はそれぞれの研究分担施設において倫理委員審査会で承認を得るべく準備を行った。

考察
第23回川崎病全国調査成績によると、ここ数年15,000人を超えている。増加の原因は不明である。一方、冠動脈病変を含めた心障害出現の割合は、急性期異常4.2%、後遺症2.6%で第22回の報告と比較するとわずかに減少している。免疫グロブリン不応例予測を目的とした代表的リスクスコアが報告されてたのはいずれも2006年~2007年にかけてである。いずれのスコアも概ね7-8割前後の感度と特異度をもち統計学的には有意に免疫グロブリン不応例を予測するとある。しかしながら、少なくとも第23回の全国調査を見る限り、心障害の出現率はゆっくりと減ってはいるが、リスクスコアが報告されて劇的に減少したとは言えない。
本研究課題では、バイオマーカーに基づき免疫グロブリン不応例の予測ならびに冠動脈病変合併予測を行うことを目的とした。本年度はまず学会ならびに論文等で報告されているバイオマーカーのエビデンス分類を行った。次年度からエビデンス分類に基づき、選定したバイオマーカーについて前方視的に検討を加える予定である。
結論
バイオマーカーにより川崎病免疫グロブリン不応例・冠動脈病変合併例を治療開始前により高い精度で予測すること、ガイドライン改訂のためのデータを提供することを目的とした研究課題である。本年度はシステマティックレビューを中心に研究を行った。

公開日・更新日

公開日
2017-06-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201610085Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,200,000円
(2)補助金確定額
1,200,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 332,933円
人件費・謝金 498,000円
旅費 198,720円
その他 110,347円
間接経費 60,000円
合計 1,200,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-03-07
更新日
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