指定難病を目指した2型コラーゲン異常症の疾患概念と診断基準の確立

文献情報

文献番号
201610080A
報告書区分
総括
研究課題名
指定難病を目指した2型コラーゲン異常症の疾患概念と診断基準の確立
課題番号
H27-難治等(難)-一般-039
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
澤井 英明(兵庫医科大学 医学部・産科婦人科学)
研究分担者(所属機関)
  • 芳賀 信彦(東京大学 医学部)
  • 鬼頭 浩史(名古屋大学 医学部)
  • 大薗 惠一(大阪大学 医学部)
  • 宮崎 治(国立成育医療研究センター 放射線診療部)
  • 室月 淳(宮城県立こども病院 産科)
  • 山田 崇弘(北海道大学 医学部)
  • 高橋 雄一郎(長良医療センター 産科)
  • 大森 崇(神戸大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
670,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、いまだに診断基準が明確でないため、多くの患者が適切な診断と治療を受けることができていない、2型コラーゲン異常症の疾患概念と診断基準を確立し、指定難病の認定を目指すことである。
 2型コラーゲン異常症は、同遺伝子の変異で発症するX線所見が類似した複数の疾患をまとめた疾患概念である。従来のX線所見による疾患分類は新たな遺伝子変異による疾患分類と必ずしも一致しないうえ、臨床症状とX線所見からの適切な診断基準がなく、この疾患を疑うことすら困難で遺伝子検査に至らないことも多い。そこで臨床的に本症を疑い、確定診断に至るプロセスの確立を目指す。
研究方法
診断基準の作成】
2型コラーゲン異常症という名称は本邦ではひとつの疾患名ではなく、2型コラーゲン遺伝子の異常により発症する複数の疾患を一括して表す疾患概念(疾患グループ)として使用されている。最新の2010年に改定された骨系統疾患国際分類(Nosology and Classification of Genetic Skeletal Disorders: 2010 Revision, Am J Med Genet A, 2011) では2型コラーゲン異常症として以下の10疾患が提示されている。
2010年国際分類改訂で示された2型コラーゲン異常症は以下の通りである。
原著に示された英語の名称と日本整形外科学会(小児整形外科委員会)による和文名称(研究分担者:芳賀信彦ら2013)
① Achondrogenesis type 2 (ACG2; Langer-Saldino):軟骨無発生症2型(Langer-Saldino型)
② Platyspondylic dysplasia, Torrance type:扁平椎異形成症,Torrance型
③ Hypochondrogenesis:軟骨低発生症
④ Spondyloepiphyseal dysplasia congenita (SEDC):先天性脊椎骨端異形成症(SEDC)
⑤ Spondyloepimetaphyseal dysplasia (SEMD) Strudwick type:脊椎骨端骨幹端異形成症(SEMD)Strudwick型
⑥ Kniest dysplasia:Kniest骨異形成症
⑦ Spondyloperipheral dysplasia:脊椎末梢異形成症
⑧ Mild SED with premature onsetarthrosis:早発性関節症を伴う軽症脊椎骨端異形成症
⑨ SED with metatarsal shortening (formerly Czech dysplasia):中足骨短縮を伴う脊椎骨端異形成症(以前のCzech異形成症)
⑩ Stickler syndrome type 1:Stickler症候群1型、
Stickler-like syndrome(s):Stickler様症候群

これらの疾患を2型コラーゲン異常症という疾患概念でとらえて、一括して診断できる診断基準の作成を目指す。

【症例数の分析】
特定地域を対象とした骨系統疾患の出生コホート調査を実施する。具体的には北海道、宮城県、山形県、岐阜県、兵庫県、山口県での骨系統疾患出生コホート調査から、2型コラーゲン異常症の児の出生と死産を把握し、全国患者数を推定する研究を実施中である。またこれまでに胎児骨系統疾患フォーラムで診断の依頼を受けた症例について分析して、疾患頻度を推定した。
結果と考察
【診断基準の作成】
次ページ以降に研究班で作成した診断基準案を示す。本案については、日本整形外科学会と日本小児科学会に審議を依頼した。

【症例数の分析】
現在症例を収集中であり、平成27年度は本研究採択開始後の研究期間が2ヶ月ほどしかないため、研究結果を記載するに至っていない。
結論
診断基準は2型コラーゲン異常症として一括した診断群が提示できるように作成した。今後の予定として日本整形外科学会と日本小児科学会にて審議され承認を受ける必要がある。その上で正式な診断基準として厚生労働省に提案することとなる。
なお、これらの検討の過程で2型コラーゲン異常症としての一括ではなくて、個々の疾患についての診断基準を求められるようであれば、現在日本整形外科学会において改訂作業中の国際分類の和文翻訳作業とも関連するので、もしそのような指摘が今後なされるようであれば、個々の疾患について再検討の必要がある。

公開日・更新日

公開日
2017-06-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201610080B
報告書区分
総合
研究課題名
指定難病を目指した2型コラーゲン異常症の疾患概念と診断基準の確立
課題番号
H27-難治等(難)-一般-039
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
澤井 英明(兵庫医科大学 医学部・産科婦人科学)
研究分担者(所属機関)
  • 芳賀 信彦(東京大学 医学部)
  • 鬼頭 浩史(名古屋大学 医学部)
  • 大薗 惠一(大阪大学 医学部)
  • 宮崎 治(国立成育医療研究センター 放射線診療部)
  • 室月 淳(宮城県立こども病院 産科)
  • 山田 崇弘(北海道大学 医学部)
  • 高橋 雄一郎(長良医療センター 産科)
  • 大森 崇(神戸大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、いまだに診断基準が明確でないため、多くの患者が適切な診断と治療を受けることができていない、2型コラーゲン異常症の疾患概念と診断基準を確立し、指定難病の認定を目指すことである。
 2型コラーゲン異常症は、同遺伝子の変異で発症するX線所見が類似した複数の疾患をまとめた疾患概念である。従来のX線所見による疾患分類は新たな遺伝子変異による疾患分類と必ずしも一致しないうえ、臨床症状とX線所見からの適切な診断基準がなく、この疾患を疑うことすら困難で遺伝子検査に至らないことも多い。そこで臨床的に本症を疑い、確定診断に至るプロセスの確立を目指す。
研究方法
診断基準の作成】
2型コラーゲン異常症という名称は本邦ではひとつの疾患名ではなく、2型コラーゲン遺伝子の異常により発症する複数の疾患を一括して表す疾患概念(疾患グループ)として使用されている。最新の2010年に改定された骨系統疾患国際分類(Nosology and Classification of Genetic Skeletal Disorders: 2010 Revision, Am J Med Genet A, 2011) では2型コラーゲン異常症として以下の10疾患が提示されている。
2010年国際分類改訂で示された2型コラーゲン異常症は以下の通りである。
原著に示された英語の名称と日本整形外科学会(小児整形外科委員会)による和文名称(研究分担者:芳賀信彦ら2013)
① Achondrogenesis type 2 (ACG2; Langer-Saldino):軟骨無発生症2型(Langer-Saldino型)
② Platyspondylic dysplasia, Torrance type:扁平椎異形成症,Torrance型
③ Hypochondrogenesis:軟骨低発生症
④ Spondyloepiphyseal dysplasia congenita (SEDC):先天性脊椎骨端異形成症(SEDC)
⑤ Spondyloepimetaphyseal dysplasia (SEMD) Strudwick type:脊椎骨端骨幹端異形成症(SEMD)Strudwick型
⑥ Kniest dysplasia:Kniest骨異形成症
⑦ Spondyloperipheral dysplasia:脊椎末梢異形成症
⑧ Mild SED with premature onsetarthrosis:早発性関節症を伴う軽症脊椎骨端異形成症
⑨ SED with metatarsal shortening (formerly Czech dysplasia):中足骨短縮を伴う脊椎骨端異形成症(以前のCzech異形成症)
⑩ Stickler syndrome type 1:Stickler症候群1型、
Stickler-like syndrome(s):Stickler様症候群

これらの疾患を2型コラーゲン異常症という疾患概念でとらえて、一括して診断できる診断基準の作成を目指す。

【症例数の分析】
特定地域を対象とした骨系統疾患の出生コホート調査を実施する。具体的には北海道、宮城県、山形県、岐阜県、兵庫県、山口県での骨系統疾患出生コホート調査から、2型コラーゲン異常症の児の出生と死産を把握し、全国患者数を推定する研究を実施中である。またこれまでに胎児骨系統疾患フォーラムで診断の依頼を受けた症例について分析して、疾患頻度を推定した。
結果と考察
【診断基準の作成】
次ページ以降に研究班で作成した診断基準案を示す。本案については、日本整形外科学会と日本小児科学会に審議を依頼した。

【症例数の分析】
現在症例を収集中であり、平成27年度は本研究採択開始後の研究期間が2ヶ月ほどしかないため、研究結果を記載するに至っていない。
結論
診断基準は2型コラーゲン異常症として一括した診断群が提示できるように作成した。今後の予定として日本整形外科学会と日本小児科学会にて審議され承認を受ける必要がある。その上で正式な診断基準として厚生労働省に提案することとなる。
なお、これらの検討の過程で2型コラーゲン異常症としての一括ではなくて、個々の疾患についての診断基準を求められるようであれば、現在日本整形外科学会において改訂作業中の国際分類の和文翻訳作業とも関連するので、もしそのような指摘が今後なされるようであれば、個々の疾患について再検討の必要がある。

公開日・更新日

公開日
2017-06-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201610080C

成果

専門的・学術的観点からの成果
2型コラーゲン異常症はいまだに診断基準が明確でない。2型コラーゲン異常症の疾患概念と診断基準を確立し、指定難病の認定を目指した。2型コラーゲン異常症は、同遺伝子の変異で発症するX線所見が類似した複数の疾患をまとめた疾患概念である。従来のX線所見による疾患分類は新たな遺伝子変異による疾患分類と必ずしも一致しないうえ、臨床症状とX線所見からの適切な診断基準がなく、この疾患を疑うことすら困難で遺伝子検査に至らないことも多いので診断基準の確立は不可欠であった。
臨床的観点からの成果
胎児骨系統疾患フォーラムの症例を分析し疾患頻度を調査分析した。2型コラーゲン異常症(サブクラス全部を含む)は1人/2万人となった。
ガイドライン等の開発
1)2型コラーゲン異常症の診断基準と重症度分類:疾患としては「2型コラーゲン異常症関連疾患」という疾患名とし、診断基準と重症度分類を作成して、指定難病の候補疾患として厚生労働省に提出した。厚生労働省の指定難病検討委員会の資料等の具体的な書類を添付した。
その他行政的観点からの成果
指定難病検討委員会に提出した書類は審議された結果、指定難病には認定されなかった。指定難病として認定されなかったのは「長期の療養を必要とする」との要件を満たしていない」とのことであった。なお、同時に審議されていた小児慢性特定疾病には認定された。この用件については引き続き調査を続ける。
その他のインパクト
平成28年3月5日に胎児骨系統疾患フォーラムと関西出生前診療研究会と共催で本研究事業の報告会を開催した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
10件
その他論文(和文)
18件
その他論文(英文等)
16件
学会発表(国内学会)
3件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kubota T, Wang W, Miura K et al.
Serum NT-proCNP levels increased after initiation of GH treatment in patients with achondroplasia/hypochondroplasia
Clinical Endocrinology , 84 , 845-850  (2016)
doi: 10.1111/cen.13025
原著論文2
Kitaoka1 T, Tajima T, Nagasak K et al.
Safety and Efficacy of Treatment with Asfotase Alfa in Patients with Hypophosphatasia: Results from a Japanese Clinical Trial
Clinical Endocrinology  (2017)
doi: 10.1111/cen.13343.
原著論文3
Saito T, Nagasaki K, Nishimura G et al.
Criteria for radiologic diagnosis of hypochondroplasia in neonates
Pediatric Radiology , 46 , 513-518  (2016)
DOI 10.1007/s00247-015-3518-2
原著論文4
Takahashi Y, Sawai H, Murotsuki J et al.
Parental serum alkaline phosphatase activity as an auxiliary tool for prenatal diagnosis of hypophosphatasia
Prenatal Diagnosis , 37 (5) , 491-496  (2017)
doi: 10.1002/pd.5040.
原著論文5
Miyazaki O, Sawai H, Yamada T
Follow-Up Study on Fetal CT Radiation Dose in Japan: Validating the Decrease in Radiation Dose
Americal Journal of Roentgenology , 208 (4) , 862-867  (2017)
doi: 10.2214/AJR.16.17316.
原著論文6
日本整形外科学会小児整形外科委員会 、骨系統疾患国際分類和訳作業WG 、小崎慶介 、北野利夫 、鬼頭浩史 、中島康晴 、北中幸子 、室月淳 、西村玄 、芳賀信彦
2015年版骨系統疾患国際分類の和訳
日本整形外科学会雑誌 , 91 (7) , 462-505  (2017)

公開日・更新日

公開日
2017-06-13
更新日
2019-06-03

収支報告書

文献番号
201610080Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
870,000円
(2)補助金確定額
641,000円
差引額 [(1)-(2)]
229,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 47,601円
人件費・謝金 0円
旅費 33,260円
その他 361,000円
間接経費 200,000円
合計 641,861円

備考

備考
229,000円 返還

公開日・更新日

公開日
2018-02-15
更新日
-