四肢形成不全の疾患概念と重症度分類法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
201610077A
報告書区分
総括
研究課題名
四肢形成不全の疾患概念と重症度分類法の確立に関する研究
課題番号
H27-難治等(難)-一般-036
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
芳賀 信彦(東京大学医学部附属病院 リハビリテーション科)
研究分担者(所属機関)
  • 高村 和幸(福岡市立こども病院 整形・脊椎外科)
  • 鬼頭 浩史(名古屋大学 整形外科)
  • 高山 真一郎(国立成育医療研究センター病院 整形外科)
  • 緒方 勤(浜松医科大学 小児科)
  • 藤原 清香(東京大学医学部附属病院 リハビリテーション科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
808,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 四肢形成不全は、胎生期に生じ出生時に四肢の形態異常を示す疾患の総称である。日本では年間400名程度の四肢形成不全児が出生していると考えられるが、医療政策につながるような詳細な内容は明らかになっていない。四肢形成不全は希少疾患であるため、出生時から成長に伴い継続的な対応が必要であるにも関わらず、十分な医療体制が確立されていない。本研究では、研究班メンバーらの診療経験と研究成果に基づき、日本における疫学調査を行い、疾患概念を確立するとともに、患者の生涯にわたる診療やADL・QOL等の観点から重症度を規定することを目的とした。
研究方法
 平成28年度は、全国疫学調査を実際に行うとともに、これを支援するために関連する研究を行った。
1)対象疾患の確定:研究代表者、研究分担者間で検討を行った。調査対象とする疾患は四肢形成不全の中で機能障害の程度が比較的強く、診療方針に関する一定の見解が得られていない症状を有するものとした。
2)小児科領域から、裂手裂足症の遺伝的背景に関する検討を行った。
3)リハビリテーション領域から、リハビリテーション医師、理学療法士、作業療法士、義肢装具士等の多職種連携診療の経験に基づき、上肢形成不全における義手使用の状況とその効果を調査した。
4)上記2)、3)の結果を参考にした上で、整形外科・リハビリテーション領域の研究代表者、研究協力者の診療経験に基づき、調査対象の基準設定を行い、疫学の専門家の協力を得て、アンケート調査の方法を確定した。その上で、「難病の患者数と臨床疫学像把握のための全国疫学調査マニュアル第二版」に従い、一次調査と二次調査を行った。
結果と考察
 研究代表者、研究分担者間で本研究の対象疾患に関する検討を行った結果、機能障害の程度が比較的強く、診療方針に関する一定の見解が得られていない疾患と確定した。具体的には、四肢の先天性切断と、長管骨の一部または全体の欠損(橈骨形成不全、尺骨形成不全、近位大腿骨限局性欠損症、脛骨形成不全、腓骨形成不全)である。Holt-Oram症候群や血小板減少症―橈骨欠損症候群など四肢形成不全が症侯群の一症状である疾患も対象とすることとした。
 小児科領域では、研究分担者の緒方らは、研究代表者、他の研究分担者の協力を受け、裂手裂足症の遺伝的背景に関する検討を行った。シルバーラッセル症候群、裂手裂足症、性分化疾患を有する男児における世界2例目の父性発現遺伝子IGF2の変異同定、裂手裂足症、性分化疾患を有する男児における世界初のUBA2遺伝子変異同定、などの成果が得られた。
 リハビリテーション領域から、多職種連携診療の経験に基づく上肢形成不全における義手使用の状況を調査した。東京大学医学部附属病院リハビリテーション科における四肢形成不全外来で、小児上肢形成不全に対し、多職種連携で義手の処方と導入、作業療法を行った22名を検討した。処方・製作した義手の内訳は、装飾用義手1、把持・荷重用受動義手18、能動義手6、作業用義手5、電動義手15(一人で複数を使用している場合がある)であった。このうち21名は、日常生活の中で毎日もしくは定期的な使用、もしくは自発的な義手の装着ができていた。
 以上の結果を参考に、学の専門家の協力を得て、全国アンケート調査を行った。調査対象期間を2014年1月1日より2015年12月31日とした。
 一次調査の調査対象は、のべ2283施設・診療科であり、返送があったのは1766施設・診療科であった(回収率77.4%)。このうち162施設・診療科より調査対象期間内に調査対象患者が有りとの報告があり、二次調査を実施した。二次調査に対して95施設から回答があった(回収率58.6%)。
 二次調査結果から重複症例の除外を行ったところ、患者数は412人であり、障害肢数は630肢(634障害)であった。上肢の障害が442肢、下肢が188肢であり、分類別ではTransverse deficiencyが262障害、Longitudinal deficiencyが209障害、Intercalary deficiencyが12障害、Central deficiencyが107障害、その他が44障害であった。
 今回の調査結果の解析はまだ終了していないが、概要を得ることができた。今後更に分析・検討を行い、最終的な患者数を踏まえて、四肢形成不全の本邦における発生率を推計する予定である。
結論
 四肢形成不全の疾患概念と重症度分類法の確立に向け、対象となる疾患を、機能障害の程度が比較的強く、診療方針に関する一定の見解が得られていない疾患と確定した。その上で小児科領域、リハビリテーション領域の診療経験・研究成果を参考に、また疫学の専門家の協力も得て、全国疫学調査を行った。

公開日・更新日

公開日
2017-05-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-05-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201610077B
報告書区分
総合
研究課題名
四肢形成不全の疾患概念と重症度分類法の確立に関する研究
課題番号
H27-難治等(難)-一般-036
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
芳賀 信彦(東京大学医学部附属病院 リハビリテーション科)
研究分担者(所属機関)
  • 高村 和幸(福岡市立こども病院 整形・脊椎外科)
  • 鬼頭 浩史(名古屋大学 整形外科)
  • 高山 真一郎(国立成育医療研究センター病院 整形外科)
  • 緒方 勤(浜松医科大学 小児科)
  • 藤原 清香(東京大学医学部附属病院 リハビリテーション科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 四肢形成不全は、胎生期に生じ出生時に四肢の形態異常を示す疾患の総称である。日本では年間400名程度の四肢形成不全児が出生していると考えられるが、医療政策につながるような詳細な内容は明らかになっていない。四肢形成不全は希少疾患であるため、出生時から成長に伴い継続的な対応が必要であるにも関わらず、十分な医療体制が確立されていない。本研究では、研究班メンバーらの診療経験と研究成果に基づき、日本における疫学調査を行い、疾患概念を確立するとともに、患者の生涯にわたる診療やADL・QOL等の観点から重症度を規定することを目的とした。
研究方法
 平成27年度には、全国疫学調査の対象疾患の確定、調査手法の検討を行い、平成28年度は、全国疫学調査を実際に行った。また平成27年度、28年度ともに、全国疫学調査を支援するために関連する研究を行った。
1)対象疾患の確定:研究代表者、研究分担者間で検討を行った。
2)小児科領域から、裂手裂足症および裂手裂足症+脛骨欠損症、Gollop-Wolfgang complexの遺伝的背景に関する検討を行った。
3)リハビリテーション領域から、リハビリテーション医師、理学療法士、作業療法士、義肢装具士等の多職種連携診療の経験に基づき、上肢形成不全における義手使用の状況とその効果を調査した。
4)上記2)、3)の結果を参考にした上で、整形外科・リハビリテーション領域の研究代表者、研究協力者の診療経験に基づき、調査対象の基準設定を行い、疫学の専門家の協力を得て、アンケート調査の方法を確定した。その上で、「難病の患者数と臨床疫学像把握のための全国疫学調査マニュアル第二版」に従い、一次調査と二次調査を行った。
結果と考察
 研究代表者、研究分担者間で本研究の対象疾患に関する検討を行った結果、機能障害の程度が比較的強く、診療方針に関する一定の見解が得られていない疾患と確定した。具体的には、四肢の先天性切断と、長管骨の一部または全体の欠損である。Holt-Oram症候群や血小板減少症―橈骨欠損症候群など四肢形成不全が症侯群の一症状である疾患も対象とすることとした。
 小児科領域では、裂手裂足症および裂手裂足症+脛骨欠損症、Gollop-Wolfgang complexの遺伝的背景に関する検討を行った。51家系、ならびに、Gollop-Wolfgang complex様の骨奇形を有する患者において、BHLHA9遺伝子を含む約200 kbの日本人創始者効果であるコピー数増加を同定した。更に150名以上の裂手裂足症患者の解析を行い、新規遺伝子変異の同定などの成果を得た。
 リハビリテーション領域から、多職種連携診療の経験に基づく上肢形成不全における義手使用の状況を調査した。小児上肢形成不全に対し多職種連携で義手の処方と導入、作業療法を行った22名を検討した、うち21名は日常生活の中で毎日もしくは定期的な使用、もしくは自発的な義手の装着ができていた。乳児症例6名に対し、全例把持機能と荷重性を有する受動義手を製作し作業療法を実施したところ、全症例で義手の受容は良好であった。片側手部欠損の2名では、作業用義手として、運動に活用できる義手の製作を行い、良好な結果を得た。
 以上の結果を参考に、学の専門家の協力を得て、全国アンケート調査を行った。調査対象期間を2014年1月1日より2015年12月31日とした。
 一次調査の調査対象は、のべ2283施設・診療科であり、返送があったのは1766施設・診療科であった(回収率77.4%)。このうち162施設・診療科より調査対象期間内に調査対象患者が有りとの報告があり、二次調査を実施した。二次調査に対して95施設から回答があった(回収率58.6%)。
 二次調査結果から重複症例の除外を行ったところ、患者数は412人であり、障害肢数は630肢(634障害)であった。上肢の障害が442肢、下肢が188肢であり、分類別ではTransverse deficiencyが262障害、Longitudinal deficiencyが209障害、Intercalary deficiencyが12障害、Central deficiencyが107障害、その他が44障害であった。
 今回の調査結果の解析はまだ終了していないが、概要を得ることができた。今後更に分析・検討を行い、最終的な患者数を踏まえて、四肢形成不全の本邦における発生率を推計する予定である。
結論
 四肢形成不全の疾患概念と重症度分類法の確立に向け、対象となる疾患を、機能障害の程度が比較的強く、診療方針に関する一定の見解が得られていない疾患と確定した。その上で小児科領域、リハビリテーション領域の診療経験・研究成果を参考に、また疫学の専門家の協力も得て、全国疫学調査を行った。

公開日・更新日

公開日
2017-05-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201610077C

収支報告書

文献番号
201610077Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,050,000円
(2)補助金確定額
1,050,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 41,994円
人件費・謝金 258,264円
旅費 0円
その他 507,742円
間接経費 242,000円
合計 1,050,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2018-03-07
更新日
-