成人例の左室緻密化障害の全国調査

文献情報

文献番号
201610076A
報告書区分
総括
研究課題名
成人例の左室緻密化障害の全国調査
課題番号
H27-難治等(難)-一般-035
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
池田 宇一(国立大学法人 信州大学 学術研究院医学系  循環器内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 磯部 光章(国立大学法人 東京医科歯科大学 医学部医学科 循環器制御学)
  • 小山 潤(国立大学法人 信州大学 学術研究院医学系  循環器内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
883,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
左室緻密化障害(LVNC; left ventricular non-compaction)はこれまで見過ごされてきた希少心筋疾患で、従来は小児の疾患と考えられてきたが、最近は成人例での報告が散見される。左室緻密化障害は、突然死、心不全、塞栓症などの合併頻度が高いことが報告されているが、わが国における成人例の実態は全く不明である。
 そこで申請者が委員長を務める日本心不全学会のガイドライン委員会が中心となり、多施設コホート研究を実施し、わが国における成人例の左室緻密化障害の発症頻度および予後について明らかにする。
研究方法
【前向きコホート研究】
長野・山梨の両県の基幹病院の心エコー検査室にて検査を受ける患者を対象とし、新規に登録されて成人例の左室緻密化障害患者の前向きコホート研究を行う。左室緻密化障害と診断された患者は定期的にホルター心電図検査、心エコー検査、血液検査(BNPなど心不全関連マーカー)を実施し、心不全、不整脈、血栓塞栓症イベントの発生について追跡調査を行う。
【後向きコホート研究】
日本心不全学会会員施設(355施設)に対して、成人例左室緻密化障害の一次調査のアンケートを送付し、過去3年以内に成人例左室緻密化障害症例の経験の有無について調査する。経験ありと回答のあった施設に対しては、症例の詳細に関する二次調査を依頼し、本疾患の臨床像を明らかにする。
結果と考察
【前向きコホート研究】長野・山梨の両県の基幹病院の心エコー検査室にて検査を受ける患者を研究対象とした。平成27年7月に甲信心エコー図セミナー会員所属20施設に調査依頼を行い、前向きコホート研究を開始した。2年間の調査期間中に新規に8名の成人例の左室緻密化障害症例が登録された。信州大学からは6名の新規登録があったが、心エコー施行患者数は年間約5,000人で本調査実施期間中のスクリーニング患者数は約10,000患者であった。よって、コホート研究から算出された本疾患の罹患頻度は0.06%であった。尚、登録された症例は、定期的にホルター心電図検査、心エコー検査、血液検査(BNPなど心不全関連マーカー)を実施し、心不全、不整脈、血栓塞栓症イベントの発生について追跡中である。
【後向きコホート研究】平成27年7月に日本心不全学会会員(会員数2,443名)に対して、成人例左室緻密化障害の一次調査のアンケートを送付した。結果、141施設の会員から過去3年以内に成人例左室緻密化障害の症例を経験したという報告を受けた。これら141施設に経験症例の詳細に関する二次調査を依頼し、60施設から310症例の左室緻密化障害のデータを収集した。患者は男女比=3:1で男性に多く、何らかの基礎心疾患を持つものが半数を占めた。左室駆出率は38±16%と低下を示し、26%に心不全、11%に不整脈、6%に血栓塞栓症による入院歴を認めた。診断時のNYHAはⅡ度(中央値)、BNP値は中央値323pg/mlと高値を示し、心筋生検では特異的所見を認めないものが86例中38例を占めた。わが国でも成人例の左室緻密化障害は稀であること、また従来の欧米の報告同様、心不全や不整脈の合併頻度が高いことが明らかになった。
 これら研究成果は第3回日本心筋症研究会(平成29年4月22日、岐阜市)で報告した。
結論
わが国でも成人例の左室緻密化障害は稀であり、欧米の報告同様、心不全や不整脈の合併頻度が高いことがデータで明らかにされた。 
 本研究において、わが国における成人例の左室緻密化障害の実態を初めて明らかにすることが出来た。その臨床像は多彩であり、ガイドライン作成に向けて、今後さらなる前向き研究が必要とされる。

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201610076B
報告書区分
総合
研究課題名
成人例の左室緻密化障害の全国調査
課題番号
H27-難治等(難)-一般-035
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
池田 宇一(国立大学法人 信州大学 学術研究院医学系  循環器内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 磯部 光章(国立大学法人 東京医科歯科大学 医学部医学科  循環器制御学)
  • 小山 潤(国立大学法人 信州大学 学術研究院医学系  循環器内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
左室緻密化障害(LVNC; left ventricular non-compaction)はこれまで見過ごされてきた希少心筋疾患で、従来は小児の疾患と考えられてきたが、最近は成人例での報告が散見される。左室緻密化障害は、突然死、心不全、塞栓症などの合併頻度が高いことが報告されているが、わが国における成人例の実態は全く不明である。
 そこで申請者が委員長を務める日本心不全学会のガイドライン委員会が中心となり、多施設コホート研究を実施し、わが国における成人例の左室緻密化障害の発症頻度および予後について明らかにする。
研究方法
【前向きコホート研究】
長野・山梨の両県の基幹病院の心エコー検査室にて検査を受ける患者を対象とし、新規に登録されて成人例の左室緻密化障害患者の前向きコホート研究を行う。左室緻密化障害と診断された患者は定期的にホルター心電図検査、心エコー検査、血液検査(BNPなど心不全関連マーカー)を実施し、心不全、不整脈、血栓塞栓症イベントの発生について追跡調査を行う。
【後向きコホート研究】
日本心不全学会会員施設(355施設)に対して、成人例左室緻密化障害の一次調査のアンケートを送付し、過去3年以内に成人例左室緻密化障害症例の経験の有無について調査する。経験ありと回答のあった施設に対しては、症例の詳細に関する二次調査を依頼し、本疾患の臨床像を明らかにする。
結果と考察
【前向きコホート研究】長野・山梨の両県の基幹病院の心エコー検査室にて検査を受ける患者を研究対象とした。平成27年7月に甲信心エコー図セミナー会員所属20施設に調査依頼を行い、前向きコホート研究を開始した。2年間の調査期間中に新規に8名の成人例の左室緻密化障害症例が登録された。信州大学からは6名の新規登録があったが、心エコー施行患者数は年間約5,000人で本調査実施期間中のスクリーニング患者数は約10,000患者であった。よって、コホート研究から算出された本疾患の罹患頻度は0.06%であった。尚、登録された症例は、定期的にホルター心電図検査、心エコー検査、血液検査(BNPなど心不全関連マーカー)を実施し、心不全、不整脈、血栓塞栓症イベントの発生について追跡中である。
【後向きコホート研究】平成27年7月に日本心不全学会会員(会員数2,443名)に対して、成人例左室緻密化障害の一次調査のアンケートを送付した。結果、141施設の会員から過去3年以内に成人例左室緻密化障害の症例を経験したという報告を受けた。これら141施設に経験症例の詳細に関する二次調査を依頼し、60施設から310症例の左室緻密化障害のデータを収集した。患者は男女比=3:1で男性に多く、何らかの基礎心疾患を持つものが半数を占めた。左室駆出率は38±16%と低下を示し、26%に心不全、11%に不整脈、6%に血栓塞栓症による入院歴を認めた。診断時のNYHAはⅡ度(中央値)、BNP値は中央値323pg/mlと高値を示し、心筋生検では特異的所見を認めないものが86例中38例を占めた。わが国でも成人例の左室緻密化障害は稀であること、また従来の欧米の報告同様、心不全や不整脈の合併頻度が高いことが明らかになった。
 これら研究成果は第3回日本心筋症研究会(平成29年4月22日、岐阜市)で報告した。
結論
わが国でも成人例の左室緻密化障害は稀であり、欧米の報告同様、心不全や不整脈の合併頻度が高いことがデータで明らかにされた。 
 本研究において、わが国における成人例の左室緻密化障害の実態を初めて明らかにすることが出来た。その臨床像は多彩であり、ガイドライン作成に向けて、今後さらなる前向き研究が必要とされる。

公開日・更新日

公開日
2017-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201610076C

成果

専門的・学術的観点からの成果
左室緻密化障害(LVNC; left ventricular non-compaction)はこれまで見過ごされてきた希少心筋疾患で、従来は小児の疾患と考えられてきたが、最近は成人例での報告が散見される。左室緻密化障害は、突然死、心不全、塞栓症などの合併頻度が高いことが報告されているが、わが国における成人例の実態は全く不明である。そこで多施設コホート研究を実施し、わが国における成人例の左室緻密化障害の発症頻度および予後について明らかにした。
臨床的観点からの成果
コホート研究から算出された左室緻密化障害の罹患頻度は0.06%であった。310症例の左室緻密化障害のデータ解析では、男女比=3:1で男性に多く、何らかの基礎心疾患を持つものが半数を占めた。左室駆出率は38±16%と低下を示し、26%に心不全、11%に不整脈、6%に血栓塞栓症による入院歴を認めた。今回の研究成果により、わが国でも成人例の左室緻密化障害は稀であること、また従来の欧米の報告同様、心不全や不整脈の合併頻度が高いことなど、わが国における成人例左室緻密化障害の実態が明らかになった。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
2016年5月14日に、日本心不全学会の分科会である「第2回日本心筋症研究会」を松本市で開催した。当該研究会において、本研究の中間報告を特別企画としておこなった。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
4件
Isolated left ventricular non-compaction cardiomyopathy in adults. J. Cardiol. 2015; 65: 91-97.
その他論文(和文)
1件
池田宇一. 孤立性左室緻密化障害. 循環器内科78:354-359,2015.
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
「左室緻密化障害の形態学的特徴を有する左室収縮不全患者における左室リバースリモデリングの臨床的意義」第1回日本心筋症研究会 (2015,7,4)等
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
第2回日本心筋症研究会(日本心不全学会分科会)を2016年5月14日に開催。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Minamisawa M, Koyama J, Ikeda U
Left ventricular noncompaction cardiomyopathy: Recetnt update on genetics, usefulness of biomarkers, and speckle imaging
Journal of Cardiology , 73 , 95-96  (2019)

公開日・更新日

公開日
2017-06-13
更新日
2019-06-04

収支報告書

文献番号
201610076Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,147,000円
(2)補助金確定額
1,147,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 657,710円
人件費・謝金 0円
旅費 136,300円
その他 88,990円
間接経費 264,000円
合計 1,147,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2018-03-07
更新日
-