若年性特発性関節炎を主とした小児リウマチ性疾患の診断基準・重症度分類の標準化とエビデンスに基づいた診療ガイドラインの策定に関する研究

文献情報

文献番号
201610070A
報告書区分
総括
研究課題名
若年性特発性関節炎を主とした小児リウマチ性疾患の診断基準・重症度分類の標準化とエビデンスに基づいた診療ガイドラインの策定に関する研究
課題番号
H27-難治等(難)-一般-029
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
森 雅亮(国立大学法人 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 生涯免疫難病学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 武井 修治(鹿児島大学医学部保健学科)
  • 伊藤 保彦(日本医科大学大学院医学研究科小児・思春期医学)
  • 小林 一郎(北海道大学大学院医学研究科生殖発達医学分野小児科学)
  • 冨板 美奈子(千葉県こども病院アレルギー・膠原病科)
  • 岡本 奈美(大阪医科大学大学院医学科小児科学 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
4,767,000円
研究者交替、所属機関変更
該当なし

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、小児リウマチ性疾患の中で発症頻度が高いリウマチ・膠原病の特に難治性病態(若年性特発性関節炎(JIA)のマクロファージ活性化症候群、全身性エリテマトーデス(SLE)の中枢神経ループス、若年性皮膚筋炎(JDM)の急速進行性間質性肺炎(ARDS)、シェーグレン症候群(SS)の慢性疲労及び腺外臓器障害等を中心に診断・治療のガイダンスを策定した。それに基づき、関連学会である日本リウマチ学会、日本小児リウマチ学会と本研究のプロダクトを共有し連携体制を密接に取り、患者および保護者を庇護する医療的ネットワークの構築を図ることに着手した。
研究方法
(1)小児リウマチ性疾患の中で発症頻度が高いリウマチ・膠原病(JIA,SLE,JDM,SS)及びしばしば難治性病態を呈する血管炎症候群(川崎病、IgA血管炎を除く)において全国での患者数を把握し、最終的に小児リウマチ診療ネットワークの構築を目指した。(2)JIA,SLE,JDM,SSの疾患毎に分担班を作成し、各班にて診断基準・重症度診断・治療ガイダンス(診療の手引き)を策定し、その有用性を実証する基盤となりうる諸研究を実施した。(3)小児リウマチ・膠原病疾患のうち、難治性病態を呈しやすい血管炎症候群(川崎病、血管炎症候群を除く)の全国的な疫学調査を行い、本邦における実態把握を行った。
結果と考察
(1)JIA,SLE,JDM,SS及び血管炎症候群(川崎病、IgA血管炎を除く)の全国患者数実数調査による患者数の把握と小児リウマチ診療ネットワークの構築:日本小児科学会専門医認定施設を対象にした小児期および成人移行期の小児リウマチ性疾患(JIA,SLE,JDM,SS, 血管炎症候群(結節性多発動脈炎、高安病)患者の全国実態調査を施行し、16歳未満あるいは16歳以上の患者実数を全国的に把握し得た。最終的な回答率は91.3%と極めて高い回答が全国規模で得られたため、これまでおこなった疫学調査の中でも極めて正確性が高い調査結果であると考えられる。このうち、本研究班の代表・分担・協力施設での診療患者数は全体の30~40%を占めており、特にJIAについては16歳未満 49.6%, 16歳以上 58.5%とより高い割合を示していた。この結果を鑑みて、代表的疾患であるJIAを年齢にかかわらず10例以上診療している施設は、全国で50施設強となり、概して各県に1施設が小児リウマチ中核病院として機能することで、全国津々浦々においてその地域特有の小児リウマチ診療ネットワークが構築できる可能性が強く示唆された。(2)JIA,SLE,JDM,SS分担班による診断基準・重症度診断・治療ガイダンス(診療の手引き)の策定と、その有用性を実証する基盤となりうる諸研究を実施した。①JIA班:日本リウマチ学会小児リウマチ調査検討小委員会が共同編集し「若年性特発性関節炎診療ハンドブック2007」を刊行した。1)JIA全体の疫学調査、2) マクロファージ活性化症候群(MAS)の実態調査に基づいた病期別分類と2016年改訂MAS分類基準のvalidation、3)ぶどう膜炎の実態調査、4) MTX-PG血中濃度の解析、②SLE班: 1) 診断基準・重症度分類を網羅した包括的な「小児SLE診療の手引き」の完成、2) その後の検証によるガイダンスの見直しの検討、③JDM班:1) 診断基準・重症度分類を網羅した包括的な「JDM診療の手引き」の完成、2) 新たな国際基準の国内小児例を対象としたvalidation、3)間質性肺炎合併例における予後因子の検討、4) 筋炎特異的自己抗体によるJDMの細分類の提案と準備、④SS班:1) 診断基準・重症度分類を網羅した包括的な「SS診療の手引き」の完成、2) 小児期SS診断の手引き」の診断感度の解析、3) ESSDAIを用いた小児期SS患者の重症度評価。(3)小児期発症高安動脈炎と結節性多発動脈炎の全国詳細調査:1) 小児期発症高安動脈炎の疫学調査(病態、治療の実際、合併症、後遺症)、2) 小児期発症結節性多発動脈炎の疫学調査
結論
本研究の最終目標は、小児期のリウマチ・膠原病の難治性病態に対する診断・治療のガイダンス作成であった。平成27・28年度の2年間において、小児リウマチ性疾患の代表的位置を示すJIA,SLE,JDM,SSにおいて各々の診断・治療ガイダンス(診療の手引き)策定を行い、順調に完成に辿り着くことができた。来年度以降は、成人班と協同で、小児―移行期―成人に通じる診断基準・重症度分類・診断および治療ガイドラインの策定を目指していきたい。今回の研究班での研究成果により各難治性病態の新たなる治療戦略が構築でき、その普及を図っていくことができれば、本研究班の意義は十分に発揮されることになるだろう。

公開日・更新日

公開日
2017-05-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201610070B
報告書区分
総合
研究課題名
若年性特発性関節炎を主とした小児リウマチ性疾患の診断基準・重症度分類の標準化とエビデンスに基づいた診療ガイドラインの策定に関する研究
課題番号
H27-難治等(難)-一般-029
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
森 雅亮(国立大学法人 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 生涯免疫難病学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 武井 修治(鹿児島大学医学部保健学科)
  • 伊藤 保彦(日本医科大学大学院医学研究科小児・思春期医学)
  • 小林 一郎(北海道大学大学院医学研究科生殖発達医学分野小児科学)
  • 冨板 美奈子(千葉県こども病院アレルギー・膠原病科)
  • 岡本 奈美(大阪医科大学大学院医学科小児科学 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、小児リウマチ性疾患の中で発症頻度が高いリウマチ・膠原病の特に難治性病態(若年性特発性関節炎(JIA)のマクロファージ活性化症候群、全身性エリテマトーデス(SLE)の中枢神経ループス、若年性皮膚筋炎(JDM)の急速進行性間質性肺炎(ARDS)、シェーグレン症候群(SS)の慢性疲労及び腺外臓器障害等を中心に診断・治療のガイダンスを策定した。それに基づき、関連学会である日本リウマチ学会、日本小児リウマチ学会と本研究のプロダクトを共有し連携体制を密接に取り、患者および保護者を庇護する医療的ネットワークの構築を図ることに着手した。
研究方法
(1)小児リウマチ性疾患の中で発症頻度が高いリウマチ・膠原病(JIA,SLE,JDM,SS)及びしばしば難治性病態を呈する血管炎症候群(川崎病、IgA血管炎を除く)において全国での患者数を把握し、最終的に小児リウマチ診療ネットワークの構築を目指した。(2)JIA,SLE,JDM,SSの疾患毎に分担班を作成し、各班にて診断基準・重症度診断・治療ガイダンス(診療の手引き)を策定し、その有用性を実証する基盤となりうる諸研究を実施した。(3)小児リウマチ・膠原病疾患のうち、難治性病態を呈しやすい血管炎症候群(川崎病、血管炎症候群を除く)の全国的な疫学調査を行い、本邦における実態把握を行った。
結果と考察
(1)JIA,SLE,JDM,SS及び血管炎症候群(川崎病、IgA血管炎を除く)の全国患者数実数調査による患者数の把握と小児リウマチ診療ネットワークの構築:日本小児科学会専門医認定施設を対象にした小児期および成人移行期の小児リウマチ性疾患(JIA,SLE,JDM,SS, 血管炎症候群(結節性多発動脈炎、高安病)患者の全国実態調査を施行し、16歳未満あるいは16歳以上の患者実数を全国的に把握し得た。最終的な回答率は91.3%と極めて高い回答が全国規模で得られたため、これまでおこなった疫学調査の中でも極めて正確性が高い調査結果であると考えられる。このうち、本研究班の代表・分担・協力施設での診療患者数は全体の30~40%を占めており、特にJIAについては16歳未満 49.6%, 16歳以上 58.5%とより高い割合を示していた。この結果を鑑みて、代表的疾患であるJIAを年齢にかかわらず10例以上診療している施設は、全国で50施設強となり、概して各県に1施設が小児リウマチ中核病院として機能することで、全国津々浦々においてその地域特有の小児リウマチ診療ネットワークが構築できる可能性が強く示唆された。(2)JIA,SLE,JDM,SS分担班による診断基準・重症度診断・治療ガイダンス(診療の手引き)の策定と、その有用性を実証する基盤となりうる諸研究を実施した。①JIA班:日本リウマチ学会小児リウマチ調査検討小委員会が共同編集し「若年性特発性関節炎診療ハンドブック2007」を刊行した。1)JIA全体の疫学調査、2) マクロファージ活性化症候群(MAS)の実態調査に基づいた病期別分類と2016年改訂MAS分類基準のvalidation、3)ぶどう膜炎の実態調査、4) MTX-PG血中濃度の解析、②SLE班: 1) 診断基準・重症度分類を網羅した包括的な「小児SLE診療の手引き」の完成、2) その後の検証によるガイダンスの見直しの検討、③JDM班:1) 診断基準・重症度分類を網羅した包括的な「JDM診療の手引き」の完成、2) 新たな国際基準の国内小児例を対象としたvalidation、3)間質性肺炎合併例における予後因子の検討、4) 筋炎特異的自己抗体によるJDMの細分類の提案と準備、④SS班:1) 診断基準・重症度分類を網羅した包括的な「SS診療の手引き」の完成、2) 小児期SS診断の手引き」の診断感度の解析、3) ESSDAIを用いた小児期SS患者の重症度評価。(3)小児期発症高安動脈炎と結節性多発動脈炎の全国詳細調査:1) 小児期発症高安動脈炎の疫学調査(病態、治療の実際、合併症、後遺症)、2) 小児期発症結節性多発動脈炎の疫学調査
結論
本研究の最終目標は、小児期のリウマチ・膠原病の難治性病態に対する診断・治療のガイダンス作成であった。平成27・28年度の2年間において、小児リウマチ性疾患の代表的位置を示すJIA,SLE,JDM,SSにおいて各々の診断・治療ガイダンス(診療の手引き)策定を行い、順調に完成に辿り着くことができた。来年度以降は、成人班と協同で、小児―移行期―成人に通じる診断基準・重症度分類・診断および治療ガイドラインの策定を目指していきたい。今回の研究班での研究成果により各難治性病態の新たなる治療戦略が構築でき、その普及を図っていくことができれば、本研究班の意義は十分に発揮されることになるだろう。

公開日・更新日

公開日
2017-05-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201610070C

成果

専門的・学術的観点からの成果
若年性特発性関節炎(JIA),全身性ループスエリテマトーデス(SLE),若年性皮膚筋炎(JDM), Sjögren症候群(SS)分担班による診断基準・重症度診断・診療の手引きの策定と、その有用性を実証する基盤となりうる諸研究を実施した。その結果、本研究の最終目標とした難治性病態を兼ねた各疾患の診断・治療の手引きは完成した。すべての疾患について、一定のパブリックコメント期間を経て、関連学会(日本リウマチ学会、日本小児リウマチ学会、日本シェーグレン学会)の承認を得、発刊に至った。
臨床的観点からの成果
診断・治療のガイドライン作成と普及により、リウマチ・膠原病診療の一般医と専門医の診療の分業体制が進む。難治例は専門医の医療に集約化され、子どもたちの医療・福祉の向上につながる。今回分担班で掲げた研究内容をもとに、文献検索で蓄積されたデータを駆使して、各疾患の難病性病態の診断・診療の手引きを作成することができた(JIA, SLE, JDM,SS) 。今後の病態解明に役立てることができたという点で、効率性も高い(SLEについては現在投稿中)。
ガイドライン等の開発
上述したが、JIAの診療ガイダンスは、日本リウマチ学会小児リウマチ調査検討小委員会が共同編集し「若年性特発性関節炎診療ハンドブック2017」を学会主体で作成したが、本疾患に特有な「小児非感染性ぶどう膜炎初期診療の手引き 2020年版」を刊行した。SLE,JDM,SSについては、それぞれの診療ガイダンス「小児SLE診療の手引き」「JDM診療の手引き」「小児SS診療の手引き」を日本リウマチ学会、小児リウマチ学会で内容を確認していただき、学会承認を得て発刊に至った。
その他行政的観点からの成果
小児リウマチ性疾患の代表的位置を示すJIA,SLE,JDM,SSにおいて各々の診断・治療ガイドラインを見込んだ診療の手引きの策定を行うためロードマップとマイルストンを具体的に明示し、着実に完成に辿り着くことができた。研究班での研究成果により各難治性病態の新たなる治療戦略が構築でき、その普及を図っていくことができれば、本研究班の意義は十分に発揮されることになる。将来的には、診断・治療の手引きを「難病指定」などに活用することで、治療の標準化や医療費請求の客観化につながるように働きかけたい。
その他のインパクト
現在、成人班と一体化し小児―移行期―成人に通じる診断基準・重症度分類・診療ガイドラインの策定を目指し、次のステージへの進展に進めている。JIA, SLE, JDM,SS診療の手引きを日本リウマチ学会の公式誌であるModern Rheumatologyに総説として公表し、本邦の現状を海外に知らしめた。また、2021年1月に5回シリーズで、読売新聞で「[医療ルネサンス]子どもの膠原病」の特集を掲載していただいた。これにより、社会の関心が向上し小児リウマチ性疾患の知名度を上げることに繋がった。

発表件数

原著論文(和文)
25件
原著論文(英文等)
19件
その他論文(和文)
12件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
17件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yasumura J, Yashiro M, Okamoto N, Mori M. et al
Clinical features and characteristics of uveitis associated with juvenile idiopathic arthritis in Japan: first report of the pediatric rheumatology association of Japan (PRAJ).
Pediatr Rheumatol. , 17 , 15-24  (2019)
doi: 10.1186/s12969-019-0318-5.
原著論文2
Kobayashi I, Akioka S, Kobayashi N, Mori M et al
Clinical practice guidance for juvenile dermatomyositis (JDM) 2018-Update.
Mod Rheumatol. , 30 , 411-423  (2020)
doi: 10.1080/14397595.2020.1718866.
原著論文3
Tomiita M, Kobayashi I, Itoh Y, Mori M. et al
Clinical practice guidance for Sjögren’s syndrome in pediatric patients (2018) – summarized and updated.
Mod Rheumatol. , 31 , 283-293  (2021)
doi: 10.1080/14397595.2020.1816319.
原著論文4
森 雅亮 他 研究班
小児全身性エリテマトーデス(SLE)診療の手引き 2018年版.
小児全身性エリテマトーデス(SLE)診療の手引き 2018年版. , 羊土社(東京) (2018年5月)  (2018)
https://www.yodosha.co.jp/yodobook/book/9784758118378/
原著論文5
森 雅亮 他 研究班
若年性皮膚筋炎(JDM)診療の手引き 2018年版.
若年性皮膚筋炎(JDM)診療の手引き 2018年版. , 羊土社(東京) (2018年5月)  (2018)
https://www.yodosha.co.jp/yodobook/book/9784758118354/
原著論文6
森 雅亮 他 研究班
小児期シェーグレン症候群(SS)診療の手引き 2018年版
小児期シェーグレン症候群(SS)診療の手引き 2018年版 , 羊土社(東京) (2018年5月)  (2018)
https://www.yodosha.co.jp/yodobook/book/9784758118361/
原著論文7
森 雅亮 他 研究班
小児非感染性ぶどう膜炎初期診療の手引き 2020年版.
小児非感染性ぶどう膜炎初期診療の手引き 2020年版. , 羊土社(東京) (2020年12月.)  (2020)
https://www.yodosha.co.jp/yodobook/book/9784758118880/

公開日・更新日

公開日
2017-06-13
更新日
2021-07-01

収支報告書

文献番号
201610070Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,196,000円
(2)補助金確定額
6,196,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 136,734円
人件費・謝金 177,000円
旅費 3,594,876円
その他 858,390円
間接経費 1,429,000円
合計 6,196,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2018-02-16
更新日
-