小児の急性脳症・けいれん重積状態の診療指針の確立

文献情報

文献番号
201610069A
報告書区分
総括
研究課題名
小児の急性脳症・けいれん重積状態の診療指針の確立
課題番号
H27-難治等(難)-一般-028
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
水口 雅(東京大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 前垣 義弘(鳥取大学 医学部)
  • 齋藤 真木子(東京大学 大学院医学系研究科)
  • 山内 秀雄(埼玉医科大学 医学部)
  • 高梨 潤一(東京女子医科大学 八千代医療センター)
  • 山形 崇倫(自治医科大学 医学部)
  • 佐久間 啓(公益財団法人 東京都医学総合研究所)
  • 奥村 彰久(愛知医科大学 医学部)
  • 齋藤 伸治(名古屋市立大学 大学院医学研究科)
  • 廣瀬 伸一(福岡大学 医学部)
  • 芳賀 信彦(東京大学 医学部附属病院)
  • 久保田 雅也(国立成育医療研究センター 病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
5,423,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
急性脳症は小児の感染症の最も重篤な合併症である。インフルエンザ、突発性発疹などありふれた感染症の経過中に、けいれんや意識障害が急に出現する。死亡や神経学的後遺症に至る例も多い。急性脳症は日本国内での発症が年に千人弱であり、さほど多くはない。しかしインフルエンザや出血性大腸炎の流行を契機に多発して、地域の救急医療を危機に陥らせることがあり、医学的、社会的な問題は大きい。急性脳症は多くの症候群に分類されるが、そのうちけいれん重積型(二相性)急性脳症と難治頻回部分発作重積型急性脳炎は難病指定された。またDravet症候群、Angelman症候群、結節性硬化症、先天性副腎皮質酵素欠損症、先天性無痛無汗症などの難病も、経過中に急性脳症を合併しやすいことが知られている。急性脳症の発症時における代表的な症状は意識障害とけいれん重積である。このうち意識障害に関しては「小児急性脳症診療ガイドライン」、けいれん重積に関しては「小児のけいれん重積状態診療ガイドライン」が必要であり、日本小児神経学会がそれらの策定にあたってきた。本研究は学会による両ガイドライン作成を支援し、基盤となる疫学、診断、治療のエビデンスを供給することを目的とした。
研究方法
本研究は日本小児神経学会のガイドライン統括委員会(担当理事:前垣義弘・研究分担者)の下に設置された小児急性脳症診療ガイドライン策定委員会(委員長:水口雅・研究代表者)と小児のけいれん重積状態診療ガイドライン策定委員会(委員長:林北見・東京女子医科大学教授)と密接に連携しながら進められた。とりわけ急性脳症診療ガイドライン策定には本研究班の多くの研究分担者(高梨潤一、奥村彰久、山内秀雄、廣瀬伸一、佐久間啓、山形崇倫)が委員として直接関与した。本研究班の分担研究では、小児の急性脳症やけいれん重積状態に関する疫学、病因、病態、診断、治療を調査・研究して、診療の確立、向上のためのエビデンスを蓄積した。なお平成28年度の途中で、先天性無痛無汗症とその関連疾患を研究する芳賀信彦と久保田雅也が本研究班に合流した。
結果と考察
小児急性脳症診療ガイドラインが平成28年度に完成し、2016年7月に出版された(ガイドライン策定委員長:水口雅・研究代表者)。Mindsによる評価を受けた上でMindsの掲載対象ガイドラインとして選ばれた。小児のけいれん重積状態診療ガイドラインについては、平成27年度にクリニカルクエスチョンの設定とエビデンス(論文)の収集と評価、平成28年度に推奨文の作成が行われた(ガイドライン統括委員会担当理事:前垣義弘・研究分担者)。平成29年度に完成し、公開される予定である。本研究班の分担研究では、小児の急性脳症やけいれん重積状態に関する疫学、病因、病態、診断、治療を調査・研究して、診療の確立、向上のためのエビデンスを蓄積した。指定難病である難治頻回部分発作重積型急性脳炎(AERRPS)については、遺伝子解析により疾患関連性のある遺伝子多型を見出した(齋藤真木子・研究分担者)。同じく指定難病であるけいれん重積型(二相性)急性脳症(AESD)については、脳波解析による熱性けいれん重積との鑑別の可能性を指摘し(前垣義弘・研究分担者)や、髄液プロテオーム解析により早期診断のためのバイオマーカーを探索した(山形崇倫・研究分担者)。またAESDの軽症型と見なしうる興奮毒性型急性脳症の存在を指摘した(高梨潤一・研究分担者)。その他の急性脳症のうち、可逆性脳梁膨大部病変を伴う急性脳症・脳炎(MERS)の家族例において網羅的遺伝子解析を行い、原因となる遺伝子変異の有力な候補を見出した(奥村彰久・研究分担者)。ヒトパレコウイルス3型脳症の実態について全国調査を実施した(山内秀雄・研究分担者)。小児の抗NMDA受容体脳炎の臨床的特徴と髄液中サイトカインプロファイルを明らかにした(佐久間啓・研究分担者)。急性脳症を合併しやすい先天性無痛無汗症について、AESDを合併した症例の臨床経過を分析した(久保田雅也・研究分担者)。また、骨関節系の合併症についても検討した(芳賀信彦・研究分担者)。
結論
小児急性脳症診療ガイドラインが小児神経学会により作成され、2016年8月に刊行された。小児のけいれん重積診療ガイドラインの策定も進み、2017年に公表の見込みである。急性脳症の疫学、診断、治療に関するエビデンスの集積が進んだ。

公開日・更新日

公開日
2017-05-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201610069Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,049,000円
(2)補助金確定額
7,002,000円
差引額 [(1)-(2)]
47,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,517,358円
人件費・謝金 336,400円
旅費 568,238円
その他 954,805円
間接経費 1,626,000円
合計 7,002,801円

備考

備考
47,000円 返還

公開日・更新日

公開日
2018-03-09
更新日
-