性分化・性成熟疾患群における診療ガイドラインの作成と普及

文献情報

文献番号
201610068A
報告書区分
総括
研究課題名
性分化・性成熟疾患群における診療ガイドラインの作成と普及
課題番号
H27-難治等(難)-一般-025
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
緒方 勤(浜松医科大学 小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 堀川 玲子(国立研究開発法人国立成育医療研究センター 内分泌代謝科)
  • 位田 忍(大阪母子医療センター 消化器・内分泌科)
  • 長谷川 奉延(慶應義塾大学 小児科)
  • 鹿島田 健一(東京医科歯科大学 小児科)
  • 中井 秀郎(自治医科大学 小児泌尿器科)
  • 深見 真紀(国立研究開発法人国立成育医療研究センター研究所 分子内分泌研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
小児慢性特定疾病対象とされた性分化・性成熟関連疾患の診療ガイドライン作成である。また、正確かつ迅速な診断法の樹立、難病に必要とされる管理・治療法のまとめと普及、検体・症例登録も重要な課題である。
研究方法
性分化疾患の概要、診断基準、重症度分類:まず、全ての性分化疾患に共通する概要、診断基準、重症度分類の基本的考えをまとめた。次に、各疾患の概要、診断基準、重症度分類を共同で作成した。
尿ステロイドプロフィール解析の有用性:遺伝子解析により確定された17α水酸化酵素欠損症7例、P450酸化還元酵素欠損症34例から尿を採取し、ガスクロマトグラフ質量分析法を用いた尿ステロイドプロフィルにより尿中ステロイド代謝物を一斉解析を開始した。
遺伝子診断法の検討:初年度に構築した効率的遺伝子診断システムを活用し、次世代シークエンサーを用いたアンプリコンシークエンスとターゲットエンリッチメント、MLPA、アレイCGHなどを用いた疾患関連遺伝子解析を行った。
外科的治療法の検討:乳児期に膣形成術を受けた女児のうち、思春期年齢に達した症例の現状を検討した。
症例情報登録および検体保存:国立成育医療研究センター分子内分泌研究部に構築済みの成育希少疾患症例レジストリシステムを活用した。
結果と考察
性分化疾患の概要、診断基準、重症度分類:全ての性分化疾患に共通する概要、診断基準、重症度分類の基本的考えをまとめ、これに基づき、ターナー症候群、マッキューン・オルブライト症候群、精巣形成不全、卵巣形成不全、卵精巣性性分化疾患、混合性性腺異形成症、17β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素欠損症、5α-還元酵素欠損症、アンドロゲン不応症、アロマターゼ過剰症(エストロゲン過剰症)、アロマターゼ欠損症(アンドロゲン過剰症)、46,XX精巣性性分化疾患の概要、診断基準、重症度分類を作成した。そして、この内容を、日本小児内分泌学会の承認を得た後、日本内分泌学会の基本的承認のもと、厚生労働省が推進する「小児慢性特定疾病と指定難病制度」との参考資料として提出した。。
尿ステロイドプロフィール解析の有用性:遺伝子診断された41例において尿ステロイドプロフィール解析を開始した。4種のコルチコステロン代謝物、4種のコルチゾール代謝物、21-deoxycortisone代謝物をもちいることで、17水酸化酵素欠損症とPOR異常症の鑑別が可能となると期待される。
遺伝子診断法の検討:遺伝子診断における変異同定率は中枢性思春期遅発症で約25%、中枢性性早熟症で約20%、非症候性尿道下裂症で約10%であった。エクソーム解析や全ゲノムシークエンス解析により、「MIRAGE症候群」を含む性分化疾患の新たな発症機序を解明した。かずさDNA研究所と連携し、multiplex PCR法を利用した効率的既知疾患責任遺伝子変異スクリーニングシステムを開発した。
外科的治療法の検討:先天性副腎皮質過形成4例、完全型アンドロゲン不応症2例、部分型アンドロゲン不応症とターナー症候群1例ずつにおいて、思春期の現状を解析した。その結果、外陰部手術の追加、在宅指導など、様々な治療が必要なこと、また精神的な面からも全人的な細やかな対応が必要なことが判明した。
症例情報登録および検体保存:本研究期間では、国内外の医療機関から膨大な数の臨床検体を集積し、バンキングした。これには、末梢血、ゲノムDNAのほか、尿道下裂患者の包皮などが含まれる。さらに、患者の臨床情報と遺伝子解析結果をデータベースに登録した。
結論
全ての性分化疾患に共通する概要、診断基準、重症度分類の基本的考えをまとめ、これに基づき、ターナー症候群、マッキューン・オルブライト症候群、精巣形成不全、卵巣形成不全、卵精巣性性分化疾患、混合性性腺異形成症、17β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素欠損症、5α-還元酵素欠損症、アンドロゲン不応症、アロマターゼ過剰症(エストロゲン過剰症)、アロマターゼ欠損症(アンドロゲン過剰症)、46,XX精巣性性分化疾患の概要、診断基準、重症度分類を作成した。また、遺伝的異質性に富む性分化疾患に正確かつ迅速な診断法を樹立する上で、遺伝子診断ならびに尿ステロイド解析の有用性を確認した。さらに、検体集積体制の整備を行った。これらの成果は、本研究の目的達成に大きく貢献すると期待される。

公開日・更新日

公開日
2017-05-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201610068Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,200,000円
(2)補助金確定額
5,200,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,957,178円
人件費・謝金 1,156,900円
旅費 268,981円
その他 617,124円
間接経費 1,200,000円
合計 5,200,183円

備考

備考
自己資金 183円

公開日・更新日

公開日
2018-03-12
更新日
-