原発性高脂血症に関する調査研究

文献情報

文献番号
201610064A
報告書区分
総括
研究課題名
原発性高脂血症に関する調査研究
課題番号
H27-難治等(難)-一般-021
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
石橋 俊(自治医科大学 医学部 内科学講座 内分泌代謝学部門)
研究分担者(所属機関)
  • 寺本 民生(帝京大学 臨床研修センター)
  • 山下 静也(地方独立行政法人 りんくう医療セン ター病院)
  • 木下 誠(帝京大学医学部 内科学講座 総合内科)
  • 武城 英明(東邦大学医学部 附属佐倉病院)
  • 荒井 秀典(独立行政法人 長寿医療センター病院)
  • 林 登志雄(名古屋大学医学部 付属病院 老年病学)
  • 島野 仁(筑波大学大学院 医学医療系 代謝学)
  • 池脇 克則(防衛医科大学校 抗加齢血管内科)
  • 後藤田 貴也(杏林大学 生化学)
  • 斯波 真理子(国立循環器病研究センター 病態代謝部)
  • 横手 幸太郎(千葉大学大学院 医学研究院)
  • 宮本 恵宏(国立循環器病研究センター 予防健診部)
  • 石垣 泰(岩手医科大学 糖尿病・代謝内科)
  • 岡崎 啓明(東京大学・医学部 附属病院 糖尿病代謝・内科)
  • 野原 淳(金沢大学大学院医 薬保健学総合研究 脂質研究講座)
  • 稲垣 恭子(日本医科大学 内分泌・糖尿病代謝科)
  • 倉科 智行(自治医科大学 内科学講座 内分泌代謝学部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
5,785,000円
研究者交替、所属機関変更
分担研究者交替 木下誠(平成28年)→塚本和久(平成28年)

研究報告書(概要版)

研究目的
 家族性高コレステロール血症(FH)(ホモ・ヘテロ接合体含む)、家族性Ⅲ型高脂血症、高カイロミクロン血症患者の病態および治療実態の調査を通じ、予後改善への貢献、診療ガイドラインの改訂を目的としている。
 また指定難病のうちLCAT欠損症、シトステロール血症、タンジール病、原発性高カイロミクロン血症、脳腱黄色腫症、無βリポタンパク血症について、「難病の患者に対する医療等に関する法律」の運用に適するような、診断基準の確立を目的とする。
研究方法
FH・家族性Ⅲ型高脂血症・高カイロミクロン血症の予後実態調査(PROLIPID研究)」は、患者登録後より前向きに各種イベントの発生および死亡を追跡することにより、上記疾患患者におけるイベント発生率・死亡率を明らかにするため昨年度に立ち上げた研究であり、本年度は施設登録および症例登録の推進およびベースライン調査を行った。 
 国内外の文献や確定診断患者の情報をもとに、原発性高脂血症に関する調査研究班での協議を経て本邦での各疾患の診断基準を策定したが、診断基準の改変を行った。
 また、本研究班の所管する指定難病について、市民公開講座や各種学会・医師会に対する啓発活動を行った。
結果と考察
「家族性高コレステロール血症・家族性Ⅲ型高脂血症・高カイロミクロン血症の予後実態調査」研究のベースライン調査を行った。2016年12月時点で236例の登録があり、FH214例、Ⅲ型1例、高カイロミクロン血症21例であった。FH症例については、登録時(治療中)LDL-C平均値は140.0mg/dlであり、日本動脈硬化学会の定める治療目標値の100mg/dl未満には到達していなかった。背景として、年齢53.6歳、男性45.5%、女性のうち閉経後が56.6%であった。身長160.9cm、体重61.3kg、ウエスト周囲径81.7cmと、肥満を認めなかった。現在喫煙中症例が6.6%あった。早発性冠動脈疾患の家族歴は21.5%に認めた。併存症については、糖尿病および耐糖能異常が14.1%、降圧薬内服中の患者が31.7%であった。現在の治療について、90.2%がスタチンで治療され、さらに62.6%の症例で平均1.4剤のスタチン以外の治療を併用していた。併用症例のうちエゼチミブが69.6%、コレスチミドが39.2%、プロブコールが11.8%に使用されていた。
高カイロミクロン血症では、トリグリセリド値が未治療時2648.4mg/dl、登録時(治療中)498.5mg/dlであった。90.5%が男性で、閉経後女性はいなかった。現在喫煙中は25%、日常的飲酒習慣ありが66.7%であった。52.4%に糖尿病を認め、38.1%が降圧薬を内服中であった。治療については、33.3%にスタチンが投与されており、残りの66.7%のうち、78.6%にフィブラート(ベザフィブラート・フェノフィブラート)、57.1%にω-3系不飽和脂肪酸製剤、28.6%にエゼチミブが投与されていた。
 ガイドラインについて、日本動脈硬化学会より2017年発刊予定の「脂質異常症治療ガイド2013年版改訂版」「2017年度版動脈硬化性疾患診療ガイドライン」の、家族性高コレステロール血症とその他の原発性高脂血症についての執筆を班員が中心に行った。
家族性高コレステロール血症について、世界FHデーにあたる9月24日、国立循環器病センターにて家族性高コレステロール血症アフェレシス患者会10周年を記念して、市民公開講座を開催した。FH患者およびその家族76名が参加し、医師、栄養士、患者会会員などの講演のほか、集団討議・質疑応答も行われた。
また、LCAT欠損症の啓発のため、腎臓病学会や県疾病対策課、医師会と協力し「尿蛋白陽性でHDL-コレステロール20mg/dl未満」例に対する精査協力を依頼した。
 
結論
本邦のFH患者ではスタチン治療を受けていない患者が約1割あった。治療目標値100mg/dl未満を達成するには、さらに他の治療薬の併用を積極的に推進する必要がある。今後も症例を集積し、予後実態調査の可能なレジストリにしていく必要がある。指定難病の啓発活動について、多角的に展開していく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2017-06-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-06-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201610064Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,785,000円
(2)補助金確定額
5,485,000円
差引額 [(1)-(2)]
300,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,564,860円
人件費・謝金 967,860円
旅費 355,290円
その他 1,596,990円
間接経費 0円
合計 5,485,000円

備考

備考
300,000円 返還

公開日・更新日

公開日
2018-02-19
更新日
-