小児期心筋症の心電図学的抽出基準、心臓超音波学的診断基準の作成と遺伝学的検査を反映した診療ガイドラインの作成に関する研究

文献情報

文献番号
201610062A
報告書区分
総括
研究課題名
小児期心筋症の心電図学的抽出基準、心臓超音波学的診断基準の作成と遺伝学的検査を反映した診療ガイドラインの作成に関する研究
課題番号
H27-難治等(難)-一般-019
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
吉永 正夫(国立病院機構鹿児島医療センター 小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 堀米 仁志(筑波大学医学医療系 小児内科学)
  • 大野 聖子(滋賀医科大学アジア疫学研究センター 循環器内科学)
  • 市田 蕗子(富山大学大学院医学薬学研究部 小児科学)
  • 住友 直方(埼玉医科大学国際医療センター 小児循環器学)
  • 長嶋 正實(愛知県済生会リハビリテーション病院 小児科学)
  • 緒方 裕光(国立保健医療科学院研究情報支援研究センター 疫学・生物統計学・公衆衛生学)
  • 堀江 稔(滋賀医科大学 呼吸循環器内科・循環器内科学)
  • 蒔田 直昌(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 内臓機能生理学・分子生理学)
  • 牛ノ濱 大也(大濠こどもクリニック 小児科)
  • 田内 宣生(愛知県済生会リハビリテーション病院 小児科学)
  • 佐藤 誠一(沖縄県立南部医療センター・こども医療センター 小児循環器内科)
  • 高橋 秀人(福島県立医科大学 医学部放射線医学県民健康管理センター情報管理統計室・統計学)
  • 岩本 眞理(済生会横浜市東部病院こどもセンター・小児循環器)
  • 太田 邦雄(金沢大学医薬保健研究域医学系・血管発生発達病態学・小児科学)
  • 立野 滋(千葉県循環器センター 小児科)
  • 小垣 滋豊(大阪大学大学院医学系研究科 小児循環器)
  • 野村 裕一(鹿児島市立病院 小児科)
  • 泉田 直己(医療法人社団永泉会曙町クリニック)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
7,516,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
健常児48,401名の心電図データ、1,500名の心臓超音波データと、心筋症患児 {肥大型心筋症(HCM) 200名、拡張型心筋症 (DCM) 100名、左室心筋緻密化障害 (LVNC) 100名、うち半数は学校心臓検診(心検)抽出例}のデータから、現在まで存在しなかった小児期心筋症の抽出基準/診断基準を作成し、遺伝学的検査を含めた患児情報から診療ガイドラインを作成する。拘束型心筋症 (RCM)、催不整脈性右室心筋症 (ARVC) 患児データも収集し、暫定案を作成する。
研究方法
1. 小児心電図の特徴と基準値作成に関する研究;健常児56,753名の心電図全てを小児循環器医がdouble checkし洞調律のみを抽出した。異常心電図は削除し、最終的に48,401名の心電図を用いて基準値を作成した。2. 健常小児の心臓超音波所見の基準値作成に関する研究;小学1年、中学1年、高校1年の健常児を対象に心臓超音波検査を収集した。測定は米国・欧州心臓超音波学会の勧告に基づいて行った。3. 心筋症患児情報の収集-二次調査結果について-;昨年度実施した一次調査に基づき小児期心筋症患児の患児情報を収集した。4. QRS波高基準による肥大型心筋症の早期診断に関する研究;[4-1] QRS波高基準値の作成. 従来用いられてきている左室肥大基準4方法と新たに3方法の基準も検討した。[4-2] HCMの早期診断の検討. 中学1年以降に初めて診断された8例の小学1年時のECGを入手し、早期診断が可能か検討した。5. 本邦における小児期拡張型心筋症の臨床像と予後に関する調査研究;全国18施設に調査票を配布し、診断時20歳未満のDCMのデータを収集し解析した。6. 心筋緻密化障害に関する研究;LVNCの臨床像解析、遺伝学的検査、患者iPS細胞由来心筋細胞を用いた機能解析を行った。7. 小児の不整脈原性右室心筋症の疫学調査に関する研究;ガイドライン作成に関する研究班で登録された小児心筋症の中で、不整脈原性右室心筋症の実態を調査した。8. 日本人催不整脈性右室心筋症患者の臨床像・遺伝型の特徴;日本人ARVCの発端者75人と家族24人を対象に臨床情報を調べ、デスモゾーム関連遺伝子のスクリーニングを行った。9. 家族性洞不全症候群の遺伝的背景と臨床的特徴に関する研究;日本人家族性洞不全症候群(SSS) 38家系に対し、3つのSSS関連遺伝子 (SCN5A, HCN4, LMNA) の遺伝子解析を行い、パッチクランプ法で新規変異の機能解析を行った。
結果と考察
1. PQ間隔、QRS波高、ST上昇等の各心電図所見は年齢・性によって影響を受けるが、その程度には差を認めた。心電図判読、基準値作成時に注意すべきことと考えられた。2. 左室拡張末期/収縮末期容積は年齢と共に増大するが、駆出率は小、中、高の1年生男女とも同一であった。心筋厚は年齢とともに増大しており、各年齢の基準値が必要である。3. 心検で抽出される頻度はHCM 50%、DCM 10%、LVNC 42%、RCM 43%、ARVC 75%と異なっていた。HCMにおいては心検診断例でも予後は改善されていず、早期診断、早期介入の必要があると考えられた。4. 今回の検討で作成された新基準 {V3基準 (RV3+SV3) を用いると8例中3例は小学1年時に既に診断可能であった。5. 小児期DCMは乳児期から2歳までに心筋症関連症状で診断されることが多く、心不全を呈して予後不良な症例が多かった。6. 臨床的な検討では、左室壁厚のZ-scoreはLVNC患者の予後と相関していた。遺伝学的検査と、iPS細胞を用いた機能解析による評価が重要になる。7. 不整脈原性右室心筋症は稀な疾患であるが、予後は不良であり、早期発見、治療が重要である。8. 日本人ARVCではDSG2変異が多い。若年者では初発症状が心肺停止であることも多く、遺伝子診断による発症前診断が有効である。9. HCN4変異陽性家族性SSSは、心房細動とLVNCを高率に合併し、思春期以降発症するという特徴を持つ家族性SSSのサブグループである。
結論
健常児48,401名の心電図データと統計学的抽出基準を用いることによりHCMの抽出基準を作成可能であることが証明された。今後、この健常児48,401名の心電図データ、最終年度まで収集を続ける健常児心臓超音波データ、患児の心電図・心臓超音波所見を比較検討することにより、感度・特異度を考慮した抽出/診断基準作成が可能と考えられた。このことは小児期心筋症の早期診断、早期介入が行え、次世代を担う子どもの健全育成と心身障害発生予防に大きく貢献する。

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201610062Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,197,000円
(2)補助金確定額
8,197,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,830,761円
人件費・謝金 1,318,165円
旅費 2,040,422円
その他 326,652円
間接経費 681,000円
合計 8,197,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-02-15
更新日
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