脳腱黄色腫症の実態把握と診療標準化のためのガイドライン作成

文献情報

文献番号
201610048A
報告書区分
総括
研究課題名
脳腱黄色腫症の実態把握と診療標準化のためのガイドライン作成
課題番号
H27-難治等(難)-一般-005
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
関島 良樹(国立大学法人 信州大学 学術研究院医学系)
研究分担者(所属機関)
  • 小山 信吾(山形大学 医学部)
  • 稲葉 雄二(信州大学 医学部)
  • 濃沼 政美(帝京平成大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
1,045,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
全国調査を通した脳腱黄色腫症の本邦における実態を把握する.また,脳腱黄色腫症の客観的診断基準・重症度分類・診療ガイドラインを作成することにより,本症の医療水準の向上および患者のQOLの向上に貢献する.
研究方法
 平成27年度に日本全国の神経内科教育施設,循環器専門医研修・研修関連施設,小児科専門医研修施設を対象とし,脳腱黄色腫症患者の全国調査を行い,患者の実態を把握した.
 平成28年度には,全国調査の結果を基に客観的指標に基づく診断基準・重症度分類を確立し,文献的な検索も加え診療ガイドラインを作成した.診断基準,重症度分類,診療ガイドラインは,本研究班のホームページ(http://www.ctx-guideline.jp/)に公開し,情報発信した.
(倫理面への配慮)
 本研究グループの構成員は研究を開始するに当たって,所属施設の倫理委員会の承認を受けた.全国調査に当たっては,連結可能匿名化を用いる事により個人情報の保護に配慮した.
結果と考察
結果:
 日本全国の神経内科教育施設,循環器専門医研修・研修関連施設,小児科専門医研修施設,合計2541施設を対象に脳腱黄色腫症に関する第一次全国調査を行い,1032施設(40.6%)から回答を得た.第一次調査で2012年9月~2015年8月の3年間に本症患者の診療経験ありとの回答を得た施設に対して二次調査を実施し,31施設から41例の脳腱黄色腫症患者の詳細な情報を得た.
 本症患者を診療している診療科の内訳は,神経内科が84%で多数を占め,その他は内分泌・代謝内科,循環器内科,整形外科,皮膚科などで診療されていた.初発症状は腱黄色腫(43.9%)が最も多く,痙性麻痺(31.7%),認知機能障害・精神発達遅滞(29.3%),白内障(24.4%),小脳失調症(14.6%)が続いた.発症年齢の平均は,24.4歳であったのに対し,確定診断時の年齢の平均は39.7歳であり,診断までに平均15年以上を要していた.CYP27A1遺伝子に関しては10種類の変異が確認された.この中で,c.1214G>A (p.R405Q),c.1421G>A (p.R474Q),c.435G>T (p.G145=)の頻度が高く,上記3種類の頻度が70%以上を占めていた.c.1214G>Aは脊髄型,c.1421G>Aは古典型,c.435G>Tは非神経型の病型との関連が示唆された.治療に関しては,ケノデオキシコール酸,HMG-CoA還元酵素阻害薬,LDLアフェレーシスによる治療が実施されており,これらの治療により血清コレスタノールが全例で低下し,約1/3の患者で症状の改善が認められた.
 こらら全国調査の解析結果に文献検索による最新の知見を加え,脳腱黄色腫症の診断基準・重症度分類・診療ガイドラインを作成し,本研究班のホームページ(http://www.ctx-guideline.jp/)に公開した.

考察:
 近年の大規模なゲノム情報を利用した疫学研究で,東アジアにおける脳腱黄色腫症の頻度は約64000人に一人と推測されている.しかし,本邦で実際に診断されている患者は少数であり,未診断例が非常に多いと考えられた.また,診断例でも診断までに約15年を要していた.特に,この傾向は小児発症例で顕著であり,11名が15歳未満で発症していたが,15歳未満で診断された例は1例のみであった.また,今回の全国調査で小児科からの症例の報告はなかった.本症は,早期治療により症状の改善が期待できる疾患であり,小児期での早期診断が今後の課題である.本研究班で作成した,診断基準および診療ガイドラインが本症の早期診断・治療に寄与することが期待される.
結論
 2012年9月~2015年8月の3年間に日本全国の医療機関を受診した41名の脳腱黄色腫症患者の詳細な臨床情報を解析した.また,調査結果を基に,本症の診断基準,重症度分類,診療ガイドラインを作成した.

公開日・更新日

公開日
2017-05-15
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201610048B
報告書区分
総合
研究課題名
脳腱黄色腫症の実態把握と診療標準化のためのガイドライン作成
課題番号
H27-難治等(難)-一般-005
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
関島 良樹(国立大学法人 信州大学 学術研究院医学系)
研究分担者(所属機関)
  • 小山 信吾(山形大学 医学部)
  • 稲葉 雄二(信州大学 医学部)
  • 濃沼 政美(帝京平成大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 全国調査を通して,本邦における脳腱黄色腫症の実態を把握する.また,脳腱黄色腫症の客観的診断基準・重症度分類・診療ガイドラインを作成することにより,本症の医療水準の向上および患者のQOLの向上に貢献する.
研究方法
 平成27年度に日本全国の神経内科教育施設,循環器専門医研修・研修関連施設,小児科専門医研修施設を対象とし,脳腱黄色腫症患者の全国調査を行い,患者の実態を把握した.
平成28年度には,全国調査の結果を基に客観的指標に基づく診断基準・重症度分類を確立し,文献的な検索も加え診療ガイドラインを作成した.診断基準,重症度分類,診療ガイドラインは,本研究班のホームページ(http://www.ctx-guideline.jp/)に公開し,情報発信した.
(倫理面への配慮)
 本研究グループの構成員は研究を開始するに当たって,所属施設の倫理委員会の承認を受けた.全国調査に当たっては,連結可能匿名化を用いる事により個人情報の保護に配慮した.
結果と考察
結果:
 日本全国の神経内科教育施設,循環器専門医研修・研修関連施設,小児科専門医研修施設,合計2541施設を対象に脳腱黄色腫症に関する第一次全国調査を行い,1032施設(40.6%)から回答を得た.第一次調査で2012年9月~2015年8月の3年間に本症患者の診療経験ありとの回答を得た施設に対して二次調査を実施し,31施設から41例の脳腱黄色腫症患者の詳細な情報を得た.
 本症患者を診療している診療科の内訳は,神経内科が84%で多数を占め,その他は内分泌・代謝内科,循環器内科,整形外科,皮膚科などで診療されていた.初発症状は腱黄色腫(43.9%)が最も多く,痙性麻痺(31.7%),認知機能障害・精神発達遅滞(29.3%),白内障(24.4%),小脳失調症(14.6%)が続いた.発症年齢の平均は,24.4歳であったのに対し,確定診断時の年齢の平均は39.7歳であり,診断までに平均15年以上を要していた.CYP27A1遺伝子に関しては10種類の変異が確認された.この中で,c.1214G>A (p.R405Q),c.1421G>A (p.R474Q),c.435G>T (p.G145=)の頻度が高く,上記3種類の頻度が70%以上を占めていた.c.1214G>Aは脊髄型,c.1421G>Aは古典型,c.435G>Tは非神経型の病型との関連が示唆された.治療に関しては,ケノデオキシコール酸,HMG-CoA還元酵素阻害薬,LDLアフェレーシスによる治療が実施されており,これらの治療により血清コレスタノールが全例で低下し,約1/3の患者で症状の改善が認められた.
 こらら全国調査の解析結果に文献検索による最新の知見を加え,脳腱黄色腫症の診断基準・重症度分類・診療ガイドラインを作成し,本研究班のホームページ(http://www.ctx-guideline.jp/)に公開した.

考察:
 近年の大規模なゲノム情報を利用した疫学研究で,東アジアにおける脳腱黄色腫症の頻度は約64000人に一人と推測されている.しかし,本邦で実際に診断されている患者は少数であり,未診断例が非常に多いと考えられた.また,診断例でも診断までに約15年を要していた.特に,この傾向は小児発症例で顕著であり,11名が15歳未満で発症していたが,15歳未満で診断された例は1例のみであった.また,今回の全国調査で小児科からの症例の報告はなかった.本症は,早期治療により症状の改善が期待できる疾患であり,小児期での早期診断が今後の課題である.本研究班で作成した,診断基準および診療ガイドラインが本症の早期診断・治療に寄与することが期待される.
結論
 2012年9月~2015年8月の3年間に日本全国の医療機関を受診した41名の脳腱黄色腫症患者の詳細な臨床情報を解析した.また,調査結果を基に,本症の診断基準,重症度分類,診療ガイドラインを作成した.

公開日・更新日

公開日
2017-05-15
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201610048C

収支報告書

文献番号
201610048Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,045,000円
(2)補助金確定額
1,045,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 614,292円
人件費・謝金 0円
旅費 71,560円
その他 359,148円
間接経費 0円
合計 1,045,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2018-03-07
更新日
-