キャッスルマン病の疫学診療実態調査と患者団体支援体制の構築に関する研究

文献情報

文献番号
201610045A
報告書区分
総括
研究課題名
キャッスルマン病の疫学診療実態調査と患者団体支援体制の構築に関する研究
課題番号
H27-難治等(難)-一般-002
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
吉崎 和幸(大阪大学 産業科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 岡本 真一郎(慶応義塾大学)
  • 川端 浩(金沢医科大学)
  • 水木 満佐央(大阪大学)
  • 川上 純(長崎大学)
  • 正木 康史(金沢医科大学)
  • 矢野 真吾(東京慈恵会医科大学)
  • 井出 眞(日本赤十字社・高松赤十字病院)
  • 宇野 賀津子(公益財団法人 ルイ・パストゥール医学研究センター)
  • 八木 克巳(公益財団法人 ルイ・パストゥール医学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
803,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動 研究分担者 川端 浩 所属機関名 京都大学( ~28年6月30日)→ 所属機関名 金沢医科大学(平成28年7月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
原因不明の希少病であるキャッスルマン病は、医師ですら認知度が低く診断基準や重症度分類、診療ガイドラインもなく、患者臨床実態もほとんど把握されていない。治療法の確立もされていない。この度、公的に初めて研究班が承認されたため問題点を明らかにし、患者に最適な治療を提供できるようにすることを目的とする。
研究方法
1. 患者数の推定
疫学調査による患者数の推定を行うため、各施設毎の倫理委員会の了承の下に行うこととした。
2. 拠点病院構築
8ブロック毎の拠点病院における関連施設の設立を行う。
3. 患者会発足と活動支援
患者会主催の諸集会に出席する。事務局を研究班代表施設から、患者施設に設置する。
4. 分類診断基準
病理学的分類を従来通りの方法で検討すると共にHHV-8陽性有無による方法、また類縁疾患であるTAFROの位置付けを検討する。
5. 診断基準・重症度分類
病理学的診断と病状の所見による診断項目を検討し、診断基準の策定を目的とするまた、所見・症状の程度及びトシリズマブ使用の有無による重症度分類の策定を試みる。
6. 診療ガイドライン
ガイドライン策定分担グループによる原案を作成し全員で検討する。
7. 国際キャッスルマン病臨床ネットワーク(CDCN)活動
CDCNの主要メンバーである吉崎、井出が国際基準の策定に意見交換する。
8. 疫学実態調査
各施設の倫理委員会の許可を得る前に、代表者所属の大阪大学の倫理委員会の許可をうける努力をする。
9. 疾患概念の研究
疾患概念を検討するため、病理学的検討ばかりでなく、病態解析を要す。炎症状態異常所見の有無を患者血清を用いて行う。
10. 指定難病
指定難病認定のため、関連学会の血液学会及びリウマチ学会の診断基準、重症度分類診療ガイドラインの承認を得る。
結果と考察
1.既存の文献より患者数は約1,500名と推定したが、来年度に実施予定の実態調査により、より確かな患者数推定を行う。
2.拠点病院の協力により、全国100施設の関連施設を設定することができた。
3.患者会主催の講演会、相談会(東京、岡山)に出席した。指定難病承認のための署名運動に協力した。患者会事務局を岡山の患者施設に設立した。
4.昨年の基準を再確認した。即ち、①ヒアリン血管型、②混合型、③形質細胞型に分類した。TAFROについては病理所見のある患者については高血管、少数形質細胞型で特殊型とした。但しリンパ節が腫大しない患者における分類は今後の検討とする。
5.班として診断基準、重症度分類を策定し、28年12月に血液学会に上程し、学会承認を得た後、29年2月号に「臨床血液」に掲載された。リウマチ学会に対しては現在学会に上程し、「Modern Rheumatology」掲載が検討されている。
6.5と同上である。
7.CDCNにより国際的診断基準が検討され29年1月にBloodに掲載承認された。CDCN総会において吉崎が当研究班について紹介し、川端がTAFROについて概説を説明し、西本がキャッスルマン病の我が国におけるトシリズマブ治療について紹介した。
8.大阪大学の倫理委員会の承認を得た。今後疫学実態調査を行う際には各施設毎の倫理委員会の許可の下に調査研究を行なう。更にCDCN主催の研究への参画のため、海外へ患者情報、サンプル提供の必要性があり、再度倫理委員会に上程する。
9.患者血清中のサイトカイン、ケモカインなどのバイオマーカーを測定し、病態解析を行うと共に本疾患の診断に参考となるデーターを得る予定である。またアクテムラ有効患者の予測マーカーの特定に利用を予定している。
10.指定難病としての最後の条件である関連学会の承認が得られたので、指定難病検討委員会への上程を予定している。
結論
1.今実態調査により正確な患者数を推定する。
2.約100の関連施設が把握できた。
3.患者会、参加患者が100名を超え、事務局も患者自身が行う。
4.我国と国際診断基準とのすりあわせを検討する。
5.TAFROの病理像の特定を行う。病理診断ができない患者の取り扱いに検討を要す。
6.暫定診断基準を確定診断基準にする。
7.暫定重症度分類と国際重症度分類との相互性を検討する。
8.暫定診療ガイドラインを策定した。血液学会、リウマチ学会の承認を得る。
9.CDCN活動の一翼を荷なう。

公開日・更新日

公開日
2017-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201610045B
報告書区分
総合
研究課題名
キャッスルマン病の疫学診療実態調査と患者団体支援体制の構築に関する研究
課題番号
H27-難治等(難)-一般-002
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
吉崎 和幸(大阪大学 産業科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 岡本 真一郎(慶応義塾大学)
  • 川端 浩(金沢医科大学)
  • 水木 満佐央(大阪大学)
  • 川上 純(長崎大学)
  • 正木 康史(金沢医科大学)
  • 矢野 真吾(東京慈恵会医科大学)
  • 井出 眞(日本赤十字社・高松赤十字病院)
  • 宇野 賀津子(公益財団法人 ルイ・パストゥール医学研究センター)
  • 八木 克巳(公益財団法人 ルイ・パストゥール医学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動 研究分担者 川端 浩 所属機関名 京都大学( ~28年6月30日)→ 所属機関名 金沢医科大学(平成28年7月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
原因不明の希少病であるキャッスルマン病は、医師ですら認知度が低く診断基準や重症度分類、診療ガイドラインもなく、患者臨床実態もほとんど把握されていない。治療法の確立もされていない。この度、公的に初めて研究班が承認されたため問題点を明らかにし、患者に最適な治療を提供できるようにすることを目的とする。
研究方法
1. 患者数の推定
既存の文献から約1500人と推定したが、より正確な人数を推定するために疫学調査による患者数の推定を行う
2. 拠点病院構築
どの地域でも診療が受けられる体制を構築するため、8ブロックの拠点病院とその関連施設の設定を行う
3. 患者会発足と活動支援
H28年に患者会を発足させた。患者会主催の集会に参画する。事務局を研究班代表施設から、患者施設に設置する
4. 分類診断基準
病理検討委員を中心に病理学的分類を検討する。類縁疾患であるTAFROの位置付けを検討する
5. 診断基準・重症度分類
診断基準検討担当委員を中心に病理・病状所見による診断項目から、診断基準の策定を目的とする。また、重症度分類の策定を試みる
6. 診療ガイドライン
ガイドライン策定分担グループによる原案を作成し全員で検討する
7. 国際キャッスルマン病臨床ネットワーク活動
H27年度CDCNの主要メンバーとして、国際基準の策定のため意見交換する
8. 疫学実態調査
「人を対象とする調査研究」であるため、まず代表者所属の大阪大学の倫理委員会の許可をうける努力をする
9. 疾患概念の研究
病態解析を要す。炎症状態異常所見の有無を患者血清を用いて行う。遺伝子解析は行わない
10. 指定難病
本疾患は難病であるが、指定難病と承認されるためにはその条件を満たさなければならない。関連学会の血液学会及びリウマチ学会の診断基準、重症度分類診療ガイドラインの承認を得る
結果と考察
1. 既存の文献より患者数は約1,500名と推定したが、来年度に実施予定の実態調査により、より確かな患者数推定を行う
2.全国8ブロック地域毎に拠点病院を設定した。続いて拠点病院の協力により、全国100施設の関連施設を設定することができた
3.患者会がH28年に設立された。患者会主催の講演会、相談会に出席した。指定難病承認のための署名運動に協力した。患者会事務局を岡山の患者施設に設立した
4.昨年の基準①ヒアリン血管型、②混合型、③形質細胞型を再確認した。そしてTAFROについては病理所見のある患者については高血管、少数形質細胞型で特殊型とした。但しリンパ節が腫大しない患者における分類は今後の検討とする
5.班として診断基準、重症度分類を策定し、28年12月に血液学会に上程し、学会承認を得た後、29年2月号に「臨床血液」に掲載された。リウマチ学会に対しては現在学会に上程し、「Modern Rheumatology」掲載が検討されている
6. 5と同上である。但しキャッスルマン病診療の参照ガイドとした
7. H27年につづいてCDCNにより国際的診断基準が検討され29年1月にBloodに掲載承認された。CDCN総会において吉崎が当研究班について紹介し、川端がTAFROについて概説を説明し、西本がキャッスルマン病の我が国におけるトシリズマブ治療について紹介した
8.患者数の確認のみならず、情況、治療情況の実態を把握するための調査研究を行なうため、大阪大学の倫理委員会の承認を得た。今後疫学実態調査を行う際には各施設の倫理委員会の許可の下に調査研究を行う。更にCDCN主催の研究への参画のため、海外へ患者情報、サンプル提供の必要性があり、再度倫理委員会に上程する
9.本疾患の疾患概念が不明であるため、患者血清中のサイトカイン、ケモカインなどのバイオマーカーを測定し、病態解析を行うと共に本疾患の診断に参考となるデーターを得る予定である。またアクテムラ有効患者の予測マーカーの特定に利用を予定している
10.難病としての条件は満たしている。研究員の努力と血液学会との連携により、指定難病としての最後の条件である関連学会の承認が得られたので、指定難病検討委員会への上程を予定している
結論
1.疫学調査、実態調査により正確な患者数を推定する
2.約100の関連施設が把握できた
3.参加者が100名を超え事務局も患者自身が行い、全国規模の体制が整った
4.我国と国際診断基準とのすりあわせを今後検討要す
5.TAFROの病理像の特定を行う
6.暫定診断基準を確定診断基準にする
7.暫定重症度分類と国際重症度分類との相互性を考慮する
8.暫定診療ガイドラインを策定した
9.CDCN活動の実質的な活動参加が望まれる
10.疫学調査は各施設の倫理委員会承認を得る
11.疾患概念は血中バイオマーカー測定システムが確立された

公開日・更新日

公開日
2017-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201610045C

成果

専門的・学術的観点からの成果
CD、TAFRO二疾患に類縁のIgG4-RD、あるいはPOEMS症候群は症状は異なるが、CDに類似のリンパ節病理像を示す。このため今回、領域別疾患調査研究班、「非癌、慢性炎症性リンパ節・骨髄異常を示すキャッスルマン病、TAFRO症候群その類縁疾患の診断基準、重症度分類の改正、診断・治療のガイドラインの策定に関する調査研究」が認められ、これら類縁疾患の相異をあきらかにし、納得いく鑑別診断を検討後策定することを目的とする。
臨床的観点からの成果
CD治療についてはIL-6阻害のトシリズマブによる治療が有効であることが示された。治療アルゴリズムの策定を開始した。TAFROについては、ステロイド剤免疫抑制剤、IL-6、IL-1等のサイトカイン阻害剤等が使用され、有効性については一定の結論に達していない。治療アルゴリズム作成が望まれる。2020年の患者会調査によるとトシリズマブは76%の患者で使用されている。
ガイドライン等の開発
診療参照ガイド、重症度分類が策定され、関連学会の血液学会及びリウマチ学会にて承認された。しかし、病因・病態の研究検討を行い信頼性の高いガイドラインの策定のため、その検討委員会を発足した。TAFROについても同様に血液学会にて承認された。より信頼性の高いガイドラインの策定が望まれていたが、2021年に次期班にて策定された。
その他行政的観点からの成果
CDは指定難病としての条件を満足したため、2017年指定難病検討会に申請し、11月に指定難病として承認された。国際的には国際キャッスルマン病診断基準を策定し、Bloodに掲載された。我が国の診断基準とその相異を検討し、成果の発表を準備している。
その他のインパクト
マスコミとしては、キャッスルマン病について読売新聞平成28年3月17日に、キャッスルマン病難病指定について朝日新聞に平成29年11月14日に、その他、毎日新聞に平成30年3月4日の地方版、NHKハートネット福祉情報総合サイトに平成30年5月23日にキャッスルマン病について掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
7件
その他論文(和文)
28件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
28件
学会発表(国際学会等)
6件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
1件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

特許の名称
IgG4関連疾患診断用マーカー及びその利用
詳細情報
分類:
特許番号: 5704684
発明者名: 正木康史、他3名

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
吉崎和幸, 岡本真一郎, 川端浩, 他
キャッスルマン病診療の参照ガイド
臨床血液 , 58 , 97-107  (2017)
原著論文2
Masaki Y, Kawabata H, Kurose N, et al.
Proposed diagnostic criteria, disease severity classification and treatment strategy for TAFRO syndrome, 2015 version.
Int J Hematol , 103 (6) , 686-  (2016)
10.1007/s12185-016-1979-1. Epub 2016 Mar 18.
原著論文3
正木康史、川端 浩、黒瀬 望、他
平成27年度厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患政策研究事業)新規疾患;TAFRO症候群の確立のための研究班. 新規疾患;TAFRO症候群の診断基準・重症度分類・治療指針
臨床血液 , 57 , 195(2029)-203(2037)  (2016)

公開日・更新日

公開日
2021-06-08
更新日
-

収支報告書

文献番号
201610045Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,043,000円
(2)補助金確定額
1,043,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 298,523円
人件費・謝金 39,200円
旅費 390,732円
その他 81,872円
間接経費 240,000円
合計 1,050,327円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2018-02-16
更新日
-