文献情報
文献番号
201610042A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性筋疾患の疫学・自然歴の収集および治療開発促進を目的とした疾患レジストリー研究
課題番号
H26-難治等(難)-一般-086
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
木村 円(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター トランスレーショナル・メディカルセンター臨床研究支援部)
研究分担者(所属機関)
- 尾方 克久(国立病院機構 東埼玉病院)
- 青木正志(東北大学大学院 医学系研究科)
- 大野欽司(名古屋大学大学院 医学系研究科)
- 森 まどか(吉村 まどか)(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 病院 神経内科診療部)
- 松浦 徹(自治医科大学 内科学講座)
- 高橋正紀(大阪大学大学院 医学系研究科)
- 大澤 裕(川崎医科大学 医学部)
- 山下 賢(熊本大学大学院 生命科学研究部)
- 渡辺範雄(京都大学大学院 医学研究科)
- 米本直裕(京都大学大学院 医学研究科)
- 石山昭彦(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 病院 小児神経科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
7,039,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者交替
国立病院機構東埼玉病院 川井 充(平成28年4月1日~28年9月22日)→同施設 尾方克久(平成28年9月23日以降)
研究報告書(概要版)
研究目的
難治性筋疾患について、全国に孤在する患者のレジストリーを構築することにより、それぞれの疾患の疫学・自然歴を明らかにし、臨床研究の実施を円滑にするとともに難治性疾患の施策に重要な情報を提供することを目的とした。
我々は、国立精神・神経医療研究センター(NCNP)において筋ジストロフィーの患者が主体的に登録し、しかも正確な遺伝子診断・臨床情報から構成されるナショナルレジストリーRemudyの構築を進め、成果を上げてきた(1-4)。患者・支援団体・研究者からの要望も大きいミオトニー症候群、先天性ミオパチー等の難治性筋疾患について正確な遺伝子診断に基づく疾患レジストリーを構築し、臨床研究基盤を整備することが必要と考えた。
我々は、国立精神・神経医療研究センター(NCNP)において筋ジストロフィーの患者が主体的に登録し、しかも正確な遺伝子診断・臨床情報から構成されるナショナルレジストリーRemudyの構築を進め、成果を上げてきた(1-4)。患者・支援団体・研究者からの要望も大きいミオトニー症候群、先天性ミオパチー等の難治性筋疾患について正確な遺伝子診断に基づく疾患レジストリーを構築し、臨床研究基盤を整備することが必要と考えた。
研究方法
本研究は観察研究として計画した。登録方法として、研究に関する情報をRemudy、共同研究者の施設のホームページなど、及び専門の学会(神経学会、神経治療学会)等を通じ公開した(5)。インフォームドコンセントに同意し、登録を希望する患者本人が、原則として医師に受診したうえで必要事項を確認し、ウェブ登録システムを経由して登録する方法を準備した。具体的には依頼者自身が初期登録を行うとシステムからIDとパスワード(PW)を通知され、以後はこのIDとPWによって入力を行うものとした。必要に応じ登録用紙を準備し、患者情報登録事務局へ書留により郵送での登録方法も受け付けた。登録データは原則として1年に1回定期的に更新とし、登録情報に変更が生じた際は適宜更新を行った。また遺伝子変異が判明していないなど登録条件に満たない登録を希望する患者の場合は仮登録とし、遺伝子変異が判明するなど診断が確定した時点で登録の手続きを進めた。その際、必要に応じ遺伝子解析等を請け負う施設と連携して患者への便宜を図った。また登録者および協力する医療機関等向けに研究・医療に関する情報提供を継続して行った。
データの統計解析にはNCNPの基盤研究として整備されたSASのシステムを用いた。
データの統計解析にはNCNPの基盤研究として整備されたSASのシステムを用いた。
結果と考察
中央登録事務局を拡充整備し、先天性筋無力症候群、先天性ミオパチーを含む先天性筋疾患登録も開始した。筋強直性ジストロフィーを含むミオトニー症候群については大阪大学に登録事務局を設置し、患者・医療者からの問い合わせに対応しながら順調に登録をすすめることができている。ディスファリノパチーは患者会からの要望も強く、また臨床開発が進んでいるが、従来の筋ジストロフィー(三好型遠位型筋ジストロフィー、肢帯型筋ジストロフィーIIB型)と難治性筋疾患(三好型ミオパチー)にまたがるカテゴリーであり、各所での調整が困難であった。成人発症の難治性筋疾患をカバーする登録の枠組が考えられた。
本研究班が対象とする筋ジストロフィーと関連疾患群は、疾患分類上遺伝性難治性筋疾患領域に属する広い領域に含まれている。2017年3月時点では、厚労難治班として本研究班と、難治性筋疾患を対象とした難治・青木班、に加えて患者登録を先駆けて行ってきた神経筋疾患患者情報登録Remudyを運用するNCNP研究開発費による研究班の役割分担が重要である。現状の区分けを確認し、このうち本研究班による筋ジストロフィーおよび関連疾患の患者登録体制を、厚生労働省難病対策課の担当者とも相談し、筋ジストロフィーを対象とした難治・松村班の各ステークホルダーと調整、整備を行った。研究者の立場は難しく、将来的には指定難病登録に集約しこの情報を臨床研究として活用することが望ましいと考えられるが、現状の指定難病登録は疾病の重症度に応じた医療費補助の側面が重視されることから、a) 重症者が主たる登録者であり、治験・臨床研究の参加の候補となる軽症の患者は費用負担の問題があることから登録に積極的ではない、b) 診断および重症度に関する臨床情報は、登録者が医療費補助を受けやすいような社会的な側面からのバイアスを受けやすい。このことから、臨床研究に利用可能な実践的なデータベースとして情報の信頼性を担保することが難しく楽観視はできないと、現時点では結論づけた。将来的な整備が進展し、患者、医療者、登録主体、情報を研究に活用する研究者の全ての立場で、ストレスなくアクセスできる開かれた登録の仕組みとして発展することが望ましい。
本研究班が対象とする筋ジストロフィーと関連疾患群は、疾患分類上遺伝性難治性筋疾患領域に属する広い領域に含まれている。2017年3月時点では、厚労難治班として本研究班と、難治性筋疾患を対象とした難治・青木班、に加えて患者登録を先駆けて行ってきた神経筋疾患患者情報登録Remudyを運用するNCNP研究開発費による研究班の役割分担が重要である。現状の区分けを確認し、このうち本研究班による筋ジストロフィーおよび関連疾患の患者登録体制を、厚生労働省難病対策課の担当者とも相談し、筋ジストロフィーを対象とした難治・松村班の各ステークホルダーと調整、整備を行った。研究者の立場は難しく、将来的には指定難病登録に集約しこの情報を臨床研究として活用することが望ましいと考えられるが、現状の指定難病登録は疾病の重症度に応じた医療費補助の側面が重視されることから、a) 重症者が主たる登録者であり、治験・臨床研究の参加の候補となる軽症の患者は費用負担の問題があることから登録に積極的ではない、b) 診断および重症度に関する臨床情報は、登録者が医療費補助を受けやすいような社会的な側面からのバイアスを受けやすい。このことから、臨床研究に利用可能な実践的なデータベースとして情報の信頼性を担保することが難しく楽観視はできないと、現時点では結論づけた。将来的な整備が進展し、患者、医療者、登録主体、情報を研究に活用する研究者の全ての立場で、ストレスなくアクセスできる開かれた登録の仕組みとして発展することが望ましい。
結論
正確な診断に基づき難治性筋疾患の疫学・自然歴を解明し、新規治療開発を目指した治験・臨床研究の実施を円滑にし、また施策への貢献を目的とした全国規模のレジストリーを構築した。現時点では、新・難病対策事業を補完する臨床研究基盤として重要な役割を果たしている。今後、新・難病対策事業による登録を臨床研究に利用するためにも、環境整備の進展とともに、議論を継続していく必要がある。
公開日・更新日
公開日
2017-06-02
更新日
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