文献情報
文献番号
201610038A
報告書区分
総括
研究課題名
希少難治性筋疾患に関する調査研究
課題番号
H26-難治等(難)-一般-079
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
青木 正志(国立大学法人東北大学 大学院医学系研究科 神経内科)
研究分担者(所属機関)
- 西野 一三(国立精神・神経医療研究センター・筋病学・分子遺伝学)
- 林 由起子(東京医科大学・神経生理学)
- 小牧 宏文(国立精神・神経医療研究センター病院・小児神経学)
- 高橋 正紀(大阪大学大学院医学系研究科 保健学専攻 機能診断科学講座 臨床神経生理学研究室)
- 平澤 恵理(順天堂大学大学院医学系研究科老人性疾患病態治療研究センター/脳神経内科・神経内科)
- 大野 欽司(名古屋大学大学院医学系研究科・神経遺伝情報学)
- 杉江 和馬(公立大学法人奈良県立医科大学・神経内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
19,192,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究班では(1)周期性四肢麻痺、非ジストロフィー性ミオトニー症候群といった筋チャネル病(1’)先天性筋無力症候群(2)Schwartz -Jampel症候群(3)Danon病や過剰自己貪食を伴うX連鎖性ミオパチーなどの「自己貪食空胞性ミオパチー」(4)封入体筋炎(5)先天性ミオパチー(6)縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー(DMRVまたはGNEミオパチー)(7)眼・咽頭遠位型ミオパチー(8)三好型ミオパチー(9)Marinesco-Sjögren症候群(10)べスレムミオパチーを対象疾患として扱っている。診断基準・ガイドラインの策定や患者数調査にとどまらず、患者検体を合わせて収集することで、今後の病態研究の基盤整備を行った。診断精度の向上を目的とした遺伝子診断の診断体制の整備も、次世代シークエンサーを用いて行った。
研究方法
各疾患について策定した診断基準に基づき患者登録、患者検体の集積およびそれを利用した解析研究を行う。遺伝性疾患に関しては次世代シークエンサーを用いた診断も追及する。一部は患者血液または骨格筋よりゲノムDNAを抽出し、サンガー法によりシークエンス決定を行った。指定難病への登録に向けて、臨床調査個人票案(新規・継続)を作成するとともに、難病指定医向けテキストを作成し、難病情報センターウェブページの原稿を作成した。
結果と考察
(1’)先天性筋無力症候群に関しては、診断基準、重症度分類、診療の手引き等作成に供するために、神経筋疾患患者登録Remudyに先天性筋無力症候群のレジストリーと協調して本邦における先天性筋無力症候群のさらなる新規同定を進めた。(2)Schwartz Jampel症候群は診療の手引き等の作製を行った。海外機関とも提携し、症例発掘への呼びかけや自然歴、全身合併症の調査、パールカン完全欠損疾患であるdyssegmental dysplasia, Silverman-Handmaker type例の情報を把握し、疾患スペクトラムを調査継続している。(3)自己貪食空胞性ミオパチーに関しては、追跡調査を行って治療状況を含めて臨床情報を継続・更新して蓄積している。特に致死性である心筋症については詳細に情報収集している。新規に見出した希少症例については病理学的および遺伝学的解析を行った。(4)封入体筋炎に関しては臨床情報および骨格筋・血清・DNAなどの生体試料を全国の協力施設での蓄積を継続している。診断のためのバイオマーカーについては血清中の自己抗体NT5c1Aの診断感度・特異度について論文掲載された。全国アンケートによる患者数調査などについて平成22年時点の調査に関して学術誌に報告した。手指の屈曲障害のみが先行した症例についても報告した。また診療の手引き等も作製した。(5)先天性ミオパチーに関しては、各病型の自然歴調査のため全国の協力施設から臨床情報を収集し、登録継続中である。(6)GNEミオパチーに関しては臨床情報と骨格筋などの生体試料を蓄積してきている。国内でのII/III相の臨床試験を継続中であり、新規患者の診断にもつとめている。日本神経学会にGNEミオパチーとしての診断基準の承認を得た。また一定数の患者が通常のシークエンス解析では見逃されてしまうエクソン単位の大欠失を有していることを報告した。(7)眼・咽頭遠位型ミオパチーは引き続き筋病理診断・遺伝子診断を継続している。日本神経学会に眼咽頭遠位型ミオパチーとしての診断基準の承認を得た。(8)ジスフェルリン異常症の症例も全国から依頼を受けて次世代シークエンサーを用いた遺伝子解析を継続している。日本神経学会に三好型ミオパチーおよびその他の遠位型ミオパチーとしての診断基準の承認を得た。(9)マリネスコシェーグレン症候群に関しても症例を蓄積している。日本神経学会および小児神経学会の診断基準の承認を得た。(10)ベスレムミオパチー・ウルリッヒミオパチーは引き続き症例の蓄積と新規例の診断を行っている。日本神経学会および小児神経学会の診断基準の承認を得た。
結論
上記のように各疾患に関して、新規患者の診断を行うと共に、診断基準の整備と学会承認、自然歴の調査、レジストリーの発展などに寄与してきている。これらの基盤を元に将来的には各疾患において、GNEミオパチーでAMEDの支援を受けて先進している臨床試験・治療法開発へとつなげていきたい。そのためには今後も継続した診断・患者調査が必要である。公費負担を含めた社会的支援も重要であり、指定難病制度の実際の運用にも協力していく。
公開日・更新日
公開日
2017-05-31
更新日
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