慢性活動性EBウイルス感染症とその類縁疾患の診療ガイドライン作成と患者レジストリの構築

文献情報

文献番号
201610032A
報告書区分
総括
研究課題名
慢性活動性EBウイルス感染症とその類縁疾患の診療ガイドライン作成と患者レジストリの構築
課題番号
H26-難治等(難)-一般-071
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
木村 宏(名古屋大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 谷内江 昭宏(金沢大学医薬保健研究域・医学系)
  • 藤原 成悦(国立成育医療研究センター研究所)
  • 大島 孝一(久留米大学医学部)
  • 岩月 啓氏(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 浅田 秀夫(奈良県立医科大学医学部)
  • 新井 文子(東京医科歯科大学大学院)
  • 伊豆津 宏二(国家公務員共済組合連合会・虎の門病院)
  • 大賀 正一(九州大学大学院医学研究院)
  • 澤田 明久(大阪府立母子保健総合医療センター)
  • 金兼 弘和(東京医科歯科大学大学院)
  • 笹原 洋二(東北大学大学院医学系研究科)
  • 今留 謙一(国立成育医療研究センター研究所)
  • 伊藤 嘉規(名古屋大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
10,227,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
慢性活動性EBウイルス感染症、EBウイルス関連血球貪食性リンパ組織球症、種痘様水疱症、蚊刺過敏症は、我が国の小児・若年成人に特有な希少疾患である。これら4疾患は疾患概念が確立し、それぞれが異なる臨床像を持つが、EBウイルスが感染したT細胞・NK細胞の増殖に端を発するという共通点がある。本研究班ではこれら4疾患の実態解明と予後改善を目指し、診療ガイドライン作成と患者レジストリの構築を目的としている。
研究方法
1) 診療ガイドライン作成:平成26年度組織した診療ガイドライン統括委員会・作成グループ・システマティックレビューチームにより、診療ガイドライン作成を進めた。
3) 患者レジストリの構築: これまでの調査結果に基づき診療ガイドライ患者レジストリの構築のための資料・情報の収集に努めた。
4) 中央診断体制の構築:平成26年度に構築した中央診断体制(病理診断:久留米大学、ウイルス学的診断:名古屋大学および成育医療研究センター)に基づいて、慢性活動性EBウイルス感染症診断を実施した。
5) 診療ガイドライン作成のための情報収集:診療アルゴリズム作成・CQに対する回答/解説作成と、本疾患群の診療実態・治療成績・長期予後の把握のために、慢性活動性EBウイルス感染症とその類縁疾患に関する情報収集を、各分担者が行った。
結果と考察
平成27年度選定した25個のCQに対して文献検索を行い、システマティックレビューチームによるレビューを実施した。レビューチームによる要約・解説をもとに、推奨について討議し、投票により推奨を最終決定した。平成28年6月に開催した診療ガイドライン作成委員会にて、本ガイドライン全体についての内容を再検討し、承認を得た。同年7月、日本小児感染症学会にてパブリックコメントを実施し、若干の修正を加えた後にガイドラインを最終化した。並行して、日本小児血液・がん学会、日本皮膚科学会、日本血液学会に、パブリックコメントを依頼し、ガイドラインに対する意見も収集し、修正の参考とした。平成28年11月に慢性活動性EBウイルス感染症とその類縁疾患の診療ガイドライン2016」を発刊し、公開したまた、
慢性活動性EBウイルス感染症およびその類縁疾患は、いずれも平成28年の指定難病の第三次追加で指定に至らなかったため、研究班で独自の疾患レジストリを構築することとした。成育医療センター臨床研究部に事務局を置き、平成29年度にレジストリを開始することに決定。組織およびレジストリのための登録票の作成に着手した。
結論
慢性活動性EBウイルス感染症、EBウイルス関連血球貪食症候群、種痘様水疱症、蚊刺過敏症の4疾患に関する診療情報を集積し、診療ガイドラインを作成、刊行した。本ガイドラインにより、多彩で難治な慢性活動性EBウイルス感染症およびその類縁疾患の、実態解明、疾患予後改善、患者の生活の質改善につながると期待できる。

公開日・更新日

公開日
2017-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201610032B
報告書区分
総合
研究課題名
慢性活動性EBウイルス感染症とその類縁疾患の診療ガイドライン作成と患者レジストリの構築
課題番号
H26-難治等(難)-一般-071
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
木村 宏(名古屋大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 谷内江 昭宏(金沢大学医薬保健研究域)
  • 藤原 成悦(国立成育医療研究センター研究所)
  • 大島 孝一(久留米大学医学部)
  • 岩月 啓氏(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 浅田 秀夫(奈良県立医科大学医学部)
  • 新井 文子(東京医科歯科大学大学院)
  • 伊豆津 宏二(国家公務員共済組合連合会・虎の門病院)
  • 大賀 正一(九州大学医学研究院)
  • 澤田 明久(大阪府立母子保健総合医療センター)
  • 金兼 弘和(東京医科歯科大学大学院)
  • 笹原 洋二(東北大学大学院医学系研究科)
  • 今留 謙一(国立成育医療研究センター研究所)
  • 伊藤 嘉規(名古屋大学 大学院医学系研究科)
  • 森尾 友宏(東京医科歯科大学大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
慢性活動性EBウイルス感染症、EBウイルス関連血球貪食症候群、種痘様水疱症、蚊刺過敏症の4疾患は、EBウイルスが感染したT細胞・NK細胞の増殖に端を発するという共通点がある。いずれの疾患も希少かつ難治であり治療指針が未確立であるため、共通の指針に基づく診療ガイドラインを作成することが喫緊の課題であった。本研究班は、4疾患に対する診療ガイドラインを作成し、更にガイドラインに基づく登録制度(レジストリ)を確立、診療実態の把握・治療成績・長期予後に関する疫学調査を行い、本疾患群の全体像を明らかにすることを目的としている。
研究方法
1) 診療ガイドライン作成:分担研究者を中心として幅広い分野から診療ガイドライン組織を構築することとした。構成はMedical Information Network Distribution Service(Minds)に準拠した。平成26年度、診療ガイドライン統括委員会・作成グループ・システマティックレビューチームを組織し、診療ガイドライン作成を開始した。
2) 診断基準の改定/作成:平成15年にEBウイルス感染症研究会より公表された慢性活動性EBウイルス感染症診断基準の診断指針の内容について、近年の論文・学会発表を参考に、更新が必要と思われる部分を記載した改訂案を作成した。EBウイルス関連血球貪食症候群については新たに診断基準を作成した。
3) 患者レジストリの構築: レジストリ構築に備え、EBV感染症研究会第10回から第23回抄録集ならびに、EBV感染症研究会事務局資料をもとに、アンケート調査状況、研究会参加状況、発表内容について調査・分析した。さらに、長期予後を把握できる。調査結果に基づき診療ガイドライ患者レジストリの構築のための資料・情報の収集に努めた。慢性活動性EBウイルス感染症およびその類縁疾患は、いずれも平成28年の指定難病の第三次追加で指定に至らなかったため、研究班で独自の疾患レジストリを構築することとした。成育医療センター臨床研究部に事務局を置き、平成29年度にレジストリを開始することに決定。組織およびレジストリのための登録票の作成に着手した。
4) 中央診断体制の構築:平成26年度に中央診断体制(病理診断:久留米大学、ウイルス学的診断:名古屋大学および成育医療研究センター)を構築した、この体制に基づいて、慢性活動性EBウイルス感染症診断を実施した。
5) 診療ガイドライン作成のための情報収集:診断基準・診療アルゴリズム・CQに対する回答/解説作成のために、慢性活動性EBウイルス感染症とその類縁疾患に関する情報収集を、各分担者が行った。
結果と考察
平成26年度は、診療ガイドライン作成のために、まず診療ガイドライン作成組織を構築し、ガイドラインの大枠・作成方法・スケジュールを決定した。更に平成15年に制定されて以来改変されていない慢性活動性EBウイルス感染症診断基準の見直し及び改定に着手した。また、ガイドラインを作成するにあたって、必要な臨床/疫学情報・データの収集と整理を行った。
平成27年度は、慢性活動性EBウイルス感染症の診断基準を改定した。また、EBウイルス関連血球貪食症候群に対する診断基準を新たに作成した。ガイドライン本文に記載する疾患の臨床的特徴・疾患スコープ・診療アルゴリズムを、慢性活動性EBウイルス感染症、EBウイルス関連血球貪食性リンパ組織球症、種痘様水疱症、蚊刺過敏症の疾患ごとに作成した。更に臨床的に問題となるクリニカルクエスチョンを全体で25個選定し、文献検索・システマティックレビューを実施した。
平成28年度は、4疾患に対する診療アルゴリズムと25のクリニカルクエスチョン(CQ)の回答/推奨文/解説文の作成に従事し、診療ガイドライン草稿を決定した。日本小児感染症学会/日本血液学会/日本小児血液・がん学会にて外部評価(パブリックコメント)実施した後に、平成28年11月 Minds準拠の診療ガイドライン(慢性活動性EBウイルス感染症とその類縁疾患の診療ガイドライン2016)を刊行した。
結論
慢性活動性EBウイルス感染症、EBウイルス関連血球貪食症候群、種痘様水疱症、蚊刺過敏症の4疾患に対する中央診断体制を確立し、各々の疾患に対する診療ガイドラインを作成、刊行した。本ガイドラインにより、多彩で難治な慢性活動性EBウイルス感染症およびその類縁疾患の、実態解明、疾患予後改善、患者の生活の質改善につながると期待できる。

公開日・更新日

公開日
2017-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201610032C

成果

専門的・学術的観点からの成果
慢性活動性EBウイルス感染症とその類縁疾患の本態はゲノム基盤を含め未だ不明な点が多く、有効な治療法も確立されていない。診療ガイドライン作成にあたって、本疾患群の診療実態・治療成績・長期予後の把握のための情報収集・疫学研究を行った。得られた情報・研究成果は、本疾患群の発症病理の解明および治療法の開発に役立つと考えられる。
臨床的観点からの成果
患者は長期にわたる治療・療養を余儀なくされ、医療の均てん化を図るべく、診療体制を整備することも喫緊の課題であった。本疾患群に対して、診療科/領域そして小児/成人の枠を超えた研究・中央診断体制を構築することができた。これらにより、今後、患者はより早期に適切な医療を享受できるようになると考えている。
ガイドライン等の開発
初年度に中央診断体制と確立した。次いで、最終年度である28年度内の診療ガイドラインの完成・公開を目指し、診断基準の作成・資料集積・診療アルゴリズムの作成を中心とした作業を行った。最終的に、平成28年11月、「慢性活動性EBウイルス感染症とその類縁疾患の診療ガイドライン2016」を発刊することができた。平成29年日本小児感染症学会およびMindsのHPで同ガイドラインを無料公開した。
その他行政的観点からの成果
平成29年度より難治性疾患政策研究事業「慢性活動性EBウイルス感染症と類縁疾患の疾患レジストリと バイオバンクの構築」研究班を組織し、レジストリの構築作業を進め、同ガイドラインの改訂に資する情報を収集することとなった。本研究班および患者研究会よりその有用性を訴えてきたEBV-DNA定量は、平成30年4月から健康保険収載となり、慢性活動性EBウイルス感染症の診断・経過観察に対しても、EBV-DNA定量は保険適用された。
その他のインパクト
年一回、CAEBV患者会(SHAKE)との交流会を開き、研究班の活動を報告するとともに、最新の診療・研究に関する情報提供を行っている。平成30年度も11月18日第9回の患者交流会を開催した。EBV-DNA定量の保険適用にあたっては、患者会の要望に依るところも大きかった。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
19件
その他論文(和文)
7件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
16件
学会発表(国際学会等)
9件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ito Y, Suzuki M, Kawada J, et al.
Diagnostic values for the viral load in peripheral blood mononuclear cells of patients with chronic active Epstein-Barr virus disease.
J Infect Chemother ,  22 , 268-271  (2016)
10.1016/j.jiac.2015.11.002
原著論文2
Ayano Imai et al.
Development of Extranodal NK/T-cell LymphomaNasal Type in Cerebrum FollowingEpstein-Barr Virus-positive Uveitis
Intern Med , 56 , 1409-1414  (2017)
10.2169/internalmedicine.56.7573
原著論文3
Hoshino A, et al.
Dysregulation of Epstein-Barr Virus Infection inHypomorphic ZAP70 Mutation
J Infect Dis  (2018)
10.1093/infdis/jiy231

公開日・更新日

公開日
2017-06-13
更新日
2021-06-08

収支報告書

文献番号
201610032Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
13,294,000円
(2)補助金確定額
13,294,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 7,729,089円
人件費・謝金 766,183円
旅費 1,002,190円
その他 729,538円
間接経費 3,067,000円
合計 13,294,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2018-03-07
更新日
-