文献情報
文献番号
                      201610015A
                  報告書区分
                      総括
                  研究課題名
                      新生児期から高年期まで対応した、好酸球性消化管疾患および稀少消化管持続炎症症候群の診断治療指針、検査治療法開発に関する研究
                  研究課題名(英字)
                      -
                  課題番号
                      H26-難治等(難)-一般-048
                  研究年度
                      平成28(2016)年度
                  研究代表者(所属機関)
                      野村 伊知郎(国立成育医療研究センター 免疫アレルギー研究部および、生体防御系内科部アレルギー科)
                  研究分担者(所属機関)
                      - 木下 芳一(島根大学医学部 内科学第二)
 - 八尾 建史(福岡大学筑紫病院 内視鏡部)
 - 山田 佳之(群馬県立小児医療センター アレルギー感染免疫科)
 - 大塚 宜一(順天堂大医学部 小児科学講座)
 - 工藤 孝広(順天堂大医学部 小児科学講座)
 - 藤原 武男(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 国際健康推進医学分野)
 - 新井 勝大(国立成育医療研究センター 消化器科)
 - 大矢 幸弘(国立成育医療研究センター アレルギー科)
 - 松本 健治(国立成育医療研究センター 免疫アレルギー・感染研究部)
 
研究区分
                      厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
                  研究開始年度
                      平成26(2014)年度
                  研究終了予定年度
                      平成28(2016)年度
                  研究費
                      12,154,000円
                  研究者交替、所属機関変更
                      -
                  研究報告書(概要版)
研究目的
            好酸球性消化管疾患(以下Eosinophilic Gastro-intestinal Disorder: EGIDとする)は、消化管の炎症性疾患であり以下に挙げる3疾患の総称である。
新生児-乳児における
① 食物蛋白誘発胃腸炎 (N-FPIES; 日本のFood-Protein Induced Enterocolitis Syndromeの意)
幼児から高年期(高齢者)まで罹患する
② 好酸球性食道炎 (EoE; Eosinophilic Esophagitis) 食道に炎症が限局
③ 好酸球性胃腸炎 (EGE; Eosinophilic Gastroenteritis) 消化管の広い範囲に炎症あり
N-FPIES~EGEは一連の疾患であり、治療寛解できない場合、N-FPIESはEGEに移行する。EGIDは診断治療が困難であり、6%は重症者である。特に多くのN-FPIESとEGE患者を擁する日本の医学研究者に本症解明の責任が課せられている。そこで、以下の6つの目的について研究を行う。
1.EGID症例集積により正確な疾患概念を確立する
2.医学情報公開により患者を救う、診断治療指針とMinds準拠ガイドラインを公開し、日本全国で正しい診療が行われるようにする。
3.精度の高い診断法を開発する(血液、消化管組織、便を利用して)。
4.治療法を開発する。
5.発症原因、発症リスクファクターの同定、遺伝的背景の探索
6.世界のEGIDとの比較を、科学的手法で行う。
      新生児-乳児における
① 食物蛋白誘発胃腸炎 (N-FPIES; 日本のFood-Protein Induced Enterocolitis Syndromeの意)
幼児から高年期(高齢者)まで罹患する
② 好酸球性食道炎 (EoE; Eosinophilic Esophagitis) 食道に炎症が限局
③ 好酸球性胃腸炎 (EGE; Eosinophilic Gastroenteritis) 消化管の広い範囲に炎症あり
N-FPIES~EGEは一連の疾患であり、治療寛解できない場合、N-FPIESはEGEに移行する。EGIDは診断治療が困難であり、6%は重症者である。特に多くのN-FPIESとEGE患者を擁する日本の医学研究者に本症解明の責任が課せられている。そこで、以下の6つの目的について研究を行う。
1.EGID症例集積により正確な疾患概念を確立する
2.医学情報公開により患者を救う、診断治療指針とMinds準拠ガイドラインを公開し、日本全国で正しい診療が行われるようにする。
3.精度の高い診断法を開発する(血液、消化管組織、便を利用して)。
4.治療法を開発する。
5.発症原因、発症リスクファクターの同定、遺伝的背景の探索
6.世界のEGIDとの比較を、科学的手法で行う。
研究方法
            1. 全国の患者を主治医にオンライン登録頂き、症例集積研究、疾患コホート研究を行う。
2. Minds準拠ガイドライン作成;システマティックレビューを実施し、推奨度を決定した。 Mindsガイドラインセンターの評価を受け、一般公開する。
3. 2015年度完成。
4. N-FPIESの1/5程度、EGEのほとんどは、治療が困難である。中等症~重症持続型患者について、有望な6種食物除去を評価する。QOLを落とさない6種食物除去、その後の原因食物同定を行った。
5. 他研究計画で行った。
6. 世界からの症例報告、症例集積について、システマティックレビューを行い、人種、症状、消化管炎症部位が日本と欧米の間に差がないかを検討する。
      2. Minds準拠ガイドライン作成;システマティックレビューを実施し、推奨度を決定した。 Mindsガイドラインセンターの評価を受け、一般公開する。
3. 2015年度完成。
4. N-FPIESの1/5程度、EGEのほとんどは、治療が困難である。中等症~重症持続型患者について、有望な6種食物除去を評価する。QOLを落とさない6種食物除去、その後の原因食物同定を行った。
5. 他研究計画で行った。
6. 世界からの症例報告、症例集積について、システマティックレビューを行い、人種、症状、消化管炎症部位が日本と欧米の間に差がないかを検討する。
結果と考察
            1.全国からのオンライン登録により、患者登録は1250名に到達している。発症日がクラスター1(嘔吐有、血便有)のグループが有意に早く、寛解も早期である。また、クラスター1で、消化管穿孔、消化管閉鎖の頻度が高く、一刻も早い治療が必要である。その他、クラスター1と2では経腟分娩が70%前後であるのに対し、クラスター3、4では55%前後と有意に少なく、クラスター3、4では出生後の腸内細菌形成の異常が発症に関わっている可能性が示唆された (Suzuki et al 投稿準備中)。
治療乳の解析によりあらたな疾患概念が付与されようとしている。10アミノ酸鎖程度の小分子が炎症のトリガーとなることが証明された。治療ミルク別の寛解率は、4つのサブグループ(クラスター)において差が見られず、アレルゲン蛋白質の認識メカニズムが共通などではないかとの仮説が生まれた。
2.Minds準拠のガイドラインを完成した。Mindsの評価を得次第公開予定である。米国主導で作成された国際ガイドラインにも日本の実態を盛り込むことができた (Nowak et al. J Allergy Clin Immunol 2017)。
3. 2015年度完成。
4.N-FPIES, EGE, EoEの治療困難症例を多数紹介されて治療を行っている。中等症以上の持続型EGE症例に6種食物除去 (6FED) を試行し、90%に寛解を得た(Sato M et al. AAAAI 2017)。6FEDについては、厚労省難治性疾患克服研究事業及びAMED難治性疾患実用化研究事業においてその有用性と問題点を明らかにする研究を2017-2019年度に行うこととなった。
5.他研究計画で行った。
6.既に発表されている、Ito et al, Allergology International 2015, Ishimura et al J Gastroenterol Hepatol 2015をもとに国際学会などで活発な議論が行われた。
      治療乳の解析によりあらたな疾患概念が付与されようとしている。10アミノ酸鎖程度の小分子が炎症のトリガーとなることが証明された。治療ミルク別の寛解率は、4つのサブグループ(クラスター)において差が見られず、アレルゲン蛋白質の認識メカニズムが共通などではないかとの仮説が生まれた。
2.Minds準拠のガイドラインを完成した。Mindsの評価を得次第公開予定である。米国主導で作成された国際ガイドラインにも日本の実態を盛り込むことができた (Nowak et al. J Allergy Clin Immunol 2017)。
3. 2015年度完成。
4.N-FPIES, EGE, EoEの治療困難症例を多数紹介されて治療を行っている。中等症以上の持続型EGE症例に6種食物除去 (6FED) を試行し、90%に寛解を得た(Sato M et al. AAAAI 2017)。6FEDについては、厚労省難治性疾患克服研究事業及びAMED難治性疾患実用化研究事業においてその有用性と問題点を明らかにする研究を2017-2019年度に行うこととなった。
5.他研究計画で行った。
6.既に発表されている、Ito et al, Allergology International 2015, Ishimura et al J Gastroenterol Hepatol 2015をもとに国際学会などで活発な議論が行われた。
結論
            オンライン症例登録システムに支えられた詳細な臨床データと、それにリンクした免疫学的なデータが支えあって、新たな事実が明らかになった。通常の診断治療指針のブラッシュアップが進み、かつMinds準拠のガイドラインが完成した。今後も世界を代表する臨床研究グループへと発展させ、世界中に存在し、苦しんでいる患者を救う方策を行ってゆきたい。
      公開日・更新日
公開日
          2017-06-02
        更新日
          -