文献情報
文献番号
201610006A
報告書区分
総括
研究課題名
腎・泌尿器系の希少・難治性疾患群に関する診断基準・診療ガイドラインの確立
課題番号
H26-難治等(難)-一般-036
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
飯島 一誠(神戸大学 大学院医学研究科内科系講座小児科学分野)
研究分担者(所属機関)
- 石倉 健司(国立成育医療研究センター 腎臓・リウマチ・膠原病科)
- 中西 浩一(琉球大学 大学院医学研究科育成医学講座)
- 濱崎 祐子(東邦大学 医学部小児腎臓学講座)
- 芦田 明(大阪医科大学 泌尿生殖発達医学講座小児科)
- 伊藤 秀一(横浜市立大学 大学院医学研究科発生成育小児医療学)
- 三浦 健一郎(東京女子医科大学 腎臓小児科)
- 竹村 司(近畿大学 小児科)
- 池住 洋平(藤田保健衛生大学 医学部小児科)
- 四ノ宮 成祥(防衛医科大学校 分子生体制御学講座)
- 森貞 直哉(神戸大学 大学院医学研究科内科系講座小児科学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
17,308,000円
研究者交替、所属機関変更
【所属機関変更】
研究分担者 中西浩一
和歌山県立医科大学小児科准教授(平成26年4月1日~平成29年1月31日) →
国立大学法人琉球大学大学院医学研究科育成医学講座教授(平成29年2月1日)
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究班は、主に小児期に発症する腎・泌尿器系の希少・難治性疾患を対象として、①疫学調査に基づいた実態把握、②診断基準を確立、③診療ガイドラインを作成することを目標とする。また、既に構築されている小児慢性腎疾患(CKD)患者コホートの長期追跡調査を通じて、重症化の危険因子、予後関連因子等に関する研究を疾患横断的に実施する。
研究方法
対象疾患は、①先天性腎尿路奇形(CAKUT)、②アルポート症候群、③先天性ネフローゼ症候群、④非典型的溶血性尿毒症症候群(HUS)、⑤小児ANCA関連腎炎、⑥エプスタイン症候群、⑦ネフロン癆、⑧腎血管性高血圧、⑨腎性低尿酸血症の9疾患である。
結果と考察
以下にそれぞれの疾患に関する平成28年度の成果を示す。①CAKUTが多数を占めるアジア圏初の小児CKDコホートの5年のフォローアップデータを収集し,腎予後(末期腎不全への進行)を明らかにするとともに、CAKUT以外の疾患はCAKUTよりも末期腎不全に進展しやすいことも明らかにした。さらに小児CKDにおいて特に重要な原疾患であるCAKUTの診療ガイドラインを完成させ出版した。②指定難病認定等にも耐えうる診断基準を作成し、それに基づいたアルポート症候群の診療ガイドラインを作成し、平成29年夏前に出版予定である。③先天性ネフローゼ症候群の全国実態調査により、本邦における同症候群患者の特徴や、治療・管理法を把握した。④非典型的HUSの全国実態調査により、これまで児における発症頻度が少ないとされたTTPや二次性TMA の頻度も一定の割合で認められることが明らかとなった。⑤小児ANCA関連腎炎の全国実態調査により、ロジスティック回帰モデルによる多変量解析の結果、ESRD進行の独立危険因子は、診断時のネフローゼレベルの蛋白尿であることが明らかになった(オッズ比 25.6、95%信頼区間:2.31-284.1、P < 0.01)。⑥エプスタイン症候群の全国実態調査により、33例(30家系)の有効回答を得たが、そのうちの19例(58%)の初期診断名は特発性血小板減少性紫斑病であり、本疾患概念の啓発が必要であることが明らかとなった。⑦ネフロン癆の診断基準を作成し、それに基づいた全国実態調査を行ったところ、わが国にはおおよそ200~300名の患者が存在すると考えられた。⑧小児腎血管性高血圧症の診療ガイドラインについて、CQの作成ならびにこれらに対するステートメント、推奨グレードの設定および解説の記載を行うとともに、診断及び治療のフローチャートを作成した。⑨腎性低尿酸血症に関して、Minds準拠の世界初の診療ガイドラインを作成し、近く公開予定である。
結論
以上のように、9つの腎・泌尿器系の希少・難治性疾患を対象に、診断基準の確立、診療ガイドラインの作成、疫学調査、実態調査をほぼ予定どおり達成した。
公開日・更新日
公開日
2017-05-15
更新日
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