文献情報
文献番号
201610005A
報告書区分
総括
研究課題名
国際標準に立脚した奇形症候群領域の診療指針に関する学際的・網羅的検討
課題番号
H26-難治等(難)-一般-035
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
小崎 健次郎(慶應義塾大学 医学部 臨床遺伝学センター)
研究分担者(所属機関)
- 松原 洋一(国立研究開発法人国立成育医療研究センター・研究所)
- 森崎 裕子(公益財団法人日本心臓血圧研究振興会付属榊原記念病院・臨床遺伝科)
- 増井 徹(慶應義塾大学 医学部 臨床遺伝学センター)
- 仁科 幸子(国立研究開発法人国立成育医療研究センター 感覚器・形態外科部 )
- 松永 達雄(独立行政法人国立病院機構東京医療センター 臨床研究センター 聴覚平衡覚研究部)
- 小崎 里華(国立研究開発法人国立成育医療研究センター 生体防御系内科部 遺伝診療科)
- 青木 洋子(国立大学法人東北大学大学院医学系研究科)
- 森山 啓司(国立大学法人東京医科歯科大学大学院・医歯学総合研究科)
- 黒澤 健司(地方独立行政法人神奈川県立病院機構・神奈川県立こども医療センター・遺伝科)
- 大橋 博文(埼玉県立小児医療センター 遺伝科)
- 古庄 知己(国立大学法人信州大学医学部附属病院 遺伝子医療研究センター)
- 緒方 勤(国立大学法人浜松医科大学・医学部小児科学講座)
- 齋藤 伸治(公立大学法人名古屋市立大学大学院医学研究科 新生児・ 小児科医学分野)
- 水野 誠司(愛知県心身障害者コロニー中央病院 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所)
- 岡本 伸彦(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪母子保健総合医療センター遺伝診療科)
- 松浦 伸也(国立大学法人広島大学・原爆放射線医科学研究所)
- 副島 英伸(国立大学法人佐賀大学医学部分子生命科学講座)
- 吉浦孝一郎(国立大学法人長崎大学 原爆後障害医療研究所)
- 沼部 博直(国立大学法人お茶の水女子大学 基幹研究院)
- 樋野村亜希子(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 難病・疾患資源研究部)
- 難波 栄二(国立大学法人鳥取大学 生命機能研究支援センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
30,100,000円
研究者交替、所属機関変更
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研究報告書(概要版)
研究目的
〈奇形症候群医療支援ネットワークの形成〉合併症が他臓器にわたる奇形症候群患者に最善の医療を提供する為に全国各地域の専門医・ナショナルセンターと先天異常を専門とする各科の専門医との連携を目的とする。〈疾患特異的成長手帳の必要性〉プライマリーケア医師・患者家族に対して年齢に応じた疾患の手引きを提供し診療の標準化を目指す事を目的に疾患特異的成育手帳を作成する。〈遺伝子変異陽性患者の全国分布の把握〉稀少疾患の自然歴や合併症に関する情報を得る事や将来的な薬物治療の実施を念頭に置き、患者個人のプライバシーを保護しつつ患者・主治医と研究者の継続的な連携の確保を企図した。〈患者由来研究資源の活用の為の基盤〉研究リソースとする為の方法の最適化を行いつつ医薬基盤研を通じて研究班内外の研究者に公開する為のフレームワークを設計・運用を目的とした。
研究方法
〈研究班の体制〉日本小児遺伝学会の全面的支援及び耳鼻科・眼科・歯科専門医の参画により「先天性異常の疾患群の診療指針と治療法開発をめざした情報・検体共有のフレームワークの確立」班を組織し臨床研究ネットワーク体制を構築した。〈研究対象〉当該ネットワークを活用し「主要な奇形症候群の診療指針に関する学際的・網羅的検討」を行いエビデンスに基づいた診療指針の確立・普及を行った。〈臨床症状と合併症と変異のデータベース登録〉成長発達・合併症に係わる臨床情報を体系的に収集しデータベース化し後ろ向き及び前向きに登録した。先行研究班等が遺伝子診断により診断の確定した奇形症候群患者の遺伝子変異を集積し、国際遺伝子変異レジストリーLOVD形式にて国際的に公開している。〈疾患特異的成長手帳〉集積した合併症データをエビデンスとして健康管理の為の年齢別のチェックリストを作成・公開し、我国の医療環境下における妥当性を検証した。〈非典型症例の遺伝子診断による臨床診断基準の再評価〉当研究グループにて策定・策定中の臨床診断基準に部分的にのみ合致する患者には遺伝子診断を実施し変異陽性例の症状幅を明らかにした。〈遺伝子変異陽性患者の登録〉各施設の倫理委員会の承認を経て実施した遺伝子診断により既に確定診断されている患者のレジストリーを作成、登録を進めると共に遺伝子変異のリストを個人情報を削除し、ウェブサイトに公開した。〈患者由来研究資源の活用の為の基盤〉登録のあり方について日本小児遺伝学会の倫理委員会で討議し研究班との連携の枠組みを策定した。末梢血リンパ球を収集し「疾患特異的iPS細胞を活用した難病研究:疾患特異的iPS細胞技術を用いた神経難病研究」研究班を含む疾患特異的研究者グループに提供した。
結果と考察
【結果】〈臨床症状と合併症と変異のデータベース登録〉H27年に引き続きHPO 形式に従い体系的・網羅的な表現型・症状の集積・登録を継続した。米国NIHによる先天異常症候群の変異陽性例の表現型の国際共有のプロジェクトに日本代表として参画した。〈疾患特異的成長手帳〉本研究班の対象疾患45疾患に関して診断基準・重症度分類を策定した。日本小児遺伝学会と連携し全45疾患の診療ガイドラインも策定を終え普及を図っている。〈患者由来研究資源の活用の基盤〉研究協力を希望する患者が自らの意思でウェブ登録しiPS研究協力機関に受診する事を支援するウェブサイトの運営を行った。H29.3.10迄に合計9件の登録があり先天異常症候群の細胞株339件を受け入れた。【考察】疾患特異的成長手帳は合併症の予防・早期診断という観点から医療の標準化・医療水準の向上に貢献し患者のQOL向上に期待できる。さらには医療機関と教育・福祉関係者との連携を促進する働きも期待できる。この手引きは研究班のネットワーク活動を通じて得られ同時に多くの共同研究が遂行された。集積データの臨床医・研究者による活用という難病事業に共通する課題の解決にも反映し手帳の将来的有用性が示された。研究班で診断基準の作成に関与した疾患のうち、8疾患については指定難病の診断に必要な遺伝学的検査であることが評価され保険適応となった。今後他の指定難病の確定診断の為の遺伝学的検査についても、順次保険適応として認められる事が期待される。
結論
H25年度までの研究班で疾患毎に起草した後研究分担者間で疾患間の記載方法の統一を図った。この結果先天異常症候群の共通の特徴として難聴・言語療法、屈折障害と眼鏡の使用、咬合障害と矯正歯科治療などに関する方針の記載の充実を図る事が必要であり、全国の小児耳鼻科・眼科・歯科医師との連携の必要が明らかとなった。H26年度からはその専門医が加わり疾患特異的成長手帳に関して各専門医師より網羅的な検討が行われた。母子手帳を踏襲した疾患特異的成長手帳を45疾患について整備し、患者の年齢に応じたチェックポイントを明記することができた。
公開日・更新日
公開日
2017-06-01
更新日
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