文献情報
文献番号
201610004A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性聴覚障害に関する調査研究
課題番号
H26-難治等(難)-一般-032
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
宇佐美 真一(国立大学法人信州大学 学術研究院医学系)
研究分担者(所属機関)
- 福田 諭(北海道大学大学院 医学研究科 )
- 佐藤 宏昭(岩手医科大学 医学部)
- 原 晃(筑波大学 医学医療系)
- 石川 浩太郎(国立障害者リハビリテーションセンター )
- 池園 哲郎(埼玉医科大学 医学部)
- 野口 佳裕(信州大学 医学部 )
- 武田 英彦(虎の門病院 耳鼻咽喉科)
- 加我 君孝(東京医療センター臨床研究センター )
- 松永 達雄(東京医療センター臨床研究センター)
- 小川 郁(慶應大学 医学部)
- 山岨 達也(東京大学 医学部)
- 佐野 肇(北里大学 医療衛生学部)
- 岩崎 聡(信州大学 医学部 )
- 曽根 三千彦(名古屋大学大学院 医学系研究科 )
- 内藤 泰(神戸市立医療センター中央市民病院)
- 西崎 和則(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科)
- 羽藤 直人(愛媛大学 医学部)
- 中川 尚志(九州大学 医学部)
- 東野 哲也(宮崎大学 医学部)
- 高橋 晴雄(長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科)
- 小橋 元(獨協大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
14,355,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
難聴は音声言語コミュニケーションの際に大きな障害となるため、日常生活や社会生活の質(QOL)の低下を引き起こし、長期に渡って生活面に支障を来たすため、診断法・治療法の開発が期待されている重要な疾患のひとつである。しかしながら、聴覚障害という同一の臨床症状を示す疾患の中に原因の異なる多くの疾患が混在しており、各疾患ごとの患者数が少なく希少であるため、効果的な診断法および治療法は未だ確立されていない状況である。本研究では、指定難病である若年発症型両側性感音難聴、アッシャー症候群、ミトコンドリア病を中心に、その類縁疾患(関連疾患)である急性高度感音難聴および、慢性高度難聴を対象に、All Japanの研究体制で調査研究を行う事により、希少な疾患の臨床実態および治療効果の把握を効率的に実施し、診断基準の改訂、重症度分類の改訂および科学的エビデンスに基づいた診療ガイドラインの策定を目的としている。
研究方法
平成28年度は前年度までに引き続き、診断基準改定、診療ガイドライン策定および改訂のための基盤情報となる症例登録レジストリ・ソフトウエアに収集されたデータの分析と、AMED研究班と連携して遺伝子解析を行い、若年発症型両側性感音難聴の罹患者頻度の推計に関する研究、新規若年発症型両側性感音難聴原因遺伝子POU4F3遺伝子変異の臨床像に関する検討、アッシャー症候群の罹患者頻度の推計に関する検討を中心に研究を行った。また、2016年に刊行した「遺伝性難聴の診療の手引き」に関して、関連学会等で発表を行い普及啓発に向けた活動を行った。また、類縁疾患である急性感音難聴に関しては、前年度までに症例登録レジストリ・ソフトウエアを用いた症例登録を通じて集積した臨床情報の詳細な分析を行った。
結果と考察
平成28年度は、日本人難聴患者における若年発症型両側性感音難聴およびアッシャー子症候群の罹患者頻度を明らかにするとともに、日本人患者に見出される変異スペクトラムを明らかにすることを目的にAMED研究班と連携して遺伝子解析を進めるとともに、変異の見出された症例の臨床情報を収集し、その臨床的特徴について詳細に検討を行った。その結果、日本人難聴患者における若年発症型両側性感音難聴患者の占める割合は3.9%程度であることが明らかとなった。また、臨床像・遺伝形式に関しては概ね過去の報告と一致した臨床像を呈していたが、TMPRSS3遺伝子変異例、WFS1遺伝子変異例で過去の報告とは異なる臨床像を呈する症例があることが明らかとなった。今後、さらに解析対象を増やし広く症例を集積していくことが必要である。また、若年発症型両側性感音難聴の候補遺伝子としてPOU4F3遺伝子に着目し遺伝子解析を実施するとともに臨床情報の分析を行った。その結果、POU4F3遺伝子変異による難聴症例は遅発性の症例が多く、全例進行の自覚を有していたことから、若年発症型両側性感音難聴の原因遺伝子であることが明らかとなった。
また、アッシャー症候群に関しては、我が国における罹患者頻度の推計を目的に先天性重度感音難聴症例に絞って解析を行い、日本人における罹患者がおおよそ10万人に1.7人であることを明らかにした。また、変異を認めた症例では、独歩開始の遅れを認める場合が多く遺伝学的検査と組み合わせることで早期介入を行うための重要な情報になり得ることを明らかにした。また、突発性難聴に関しては、重症度・治療効果に関連した因子を検討したところ、めまい症状の随伴、心疾患の既往、脳梗塞の既往、糖尿病の既往が関連していることが明らかとなった。また、治療法に関しては副腎皮質ステロイドに加えプロスタンディン製剤を併用した群では、併用しなかった群よりも、初診時の重症度が高いにもかかわらず、同等の治療成績となることが多数例の検討により明らかになった。
また、アッシャー症候群に関しては、我が国における罹患者頻度の推計を目的に先天性重度感音難聴症例に絞って解析を行い、日本人における罹患者がおおよそ10万人に1.7人であることを明らかにした。また、変異を認めた症例では、独歩開始の遅れを認める場合が多く遺伝学的検査と組み合わせることで早期介入を行うための重要な情報になり得ることを明らかにした。また、突発性難聴に関しては、重症度・治療効果に関連した因子を検討したところ、めまい症状の随伴、心疾患の既往、脳梗塞の既往、糖尿病の既往が関連していることが明らかとなった。また、治療法に関しては副腎皮質ステロイドに加えプロスタンディン製剤を併用した群では、併用しなかった群よりも、初診時の重症度が高いにもかかわらず、同等の治療成績となることが多数例の検討により明らかになった。
結論
平成28年度は、日本人難聴患者における若年発症型両側性感音難聴の割合および遺伝子変異の種類と頻度を明らかにすることを目的に遺伝子解析を進め、日本人難聴患者における若年発症型両側性感音難聴患者の占める割合は3.9%であることを明らかにした。また、若年発症型両側性感音難聴を引き起こし得る新規の原因遺伝子候補としてPOU4F3遺伝子に着目し、日本人難聴患者における頻度、臨床的特徴を明らかにした。アッシャー症候群に関しては、我が国における罹患者頻度の推計を目的に、先天性重度感音難聴症例の遺伝子解析を行い、日本人における罹患者がおおよそ10万人に1.7人であることを明らかにした。また、類縁疾患である急性感音難聴に関しては、前年度までに症例登録レジストリ・ソフトウエアを用いた症例登録を通じて集積した臨床情報の詳細な分析を行い、疾患の原因に関する疫学調査を行うとともに、重症度や予後と関連する因子を明らかにした。
公開日・更新日
公開日
2017-06-02
更新日
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