文献情報
文献番号
201608022A
報告書区分
総括
研究課題名
地域におけるアルコール対策に関する観察・介入研究
課題番号
H26-循環器等(政策)-若手-001
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
梅澤 光政(獨協医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
1,850,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、地域住民を対象として、飲酒の現状や問題飲酒を把握し、これに対する地域ごとの事情を勘案した対策を作成・実施すること、そしてその効果を検証することを目的とする。今年度は、これまでに蓄積したデータを用いて、問題飲酒と循環器疾患リスク因子の重積について検討した。また、問題飲酒者で摂取頻度の高いアルコール飲料の種類を検討した。更に、特定保健指導対象者かつ問題飲酒のある者を対象としてBI(減酒支援簡易介入)を用いた介入を実施し、その内容を分析した。
研究方法
本研究は横断研究と介入研究から成る。横断研究は、平成26年度・平成27年度にかけて、調査対象地区住民の健康診査に合わせてAUDITを実施し、その結果と健康診査の成績の関連を3年の間に分析し、明らかとするものである。今年度は予定通り実施した過去2年間の調査のデータについて横断的な分析を進め、AUDITの成績と循環器疾患リスク因子の重積について検討するとともに、問題飲酒者の摂取していたアルコール飲料の特徴を分析した。介入研究は、平成26年度にBIの実施者を育成し、平成27年度・平成28年度にかけて、BIによる介入を行う計画である。今年度は昨年度のBI対象者(特定保健指導対象者となり、かつ問題飲酒があった者)のうち、昨年の訪問時に不在等で研究へのリクルートができなかった者について、再度リクルートを行い、昨年の結果と合わせてその効果を評価した。
結果と考察
横断研究では、40-74歳の男女において、それぞれ24.2~29.6%、2.5~4.6%の問題飲酒者を認めた。また、AUDITの成績と循環器疾患リスク因子の重積の分析では、問題飲酒者では性・地域を問わず、喫煙、肝機能異常を有する率が問題飲酒の無い者よりも高く、更に男性の問題飲酒者では高血圧者や食塩摂取量が多いなど、循環器疾患のリスク因子の重積傾向が認められた。問題飲酒者の摂取頻度が高いアルコール飲料の種類の検討からは、問題飲酒者では男女共通で焼酎を摂っている者の割合が非問題飲酒者より高く、また他に摂っている頻度が高いアルコール飲料も男性(日本酒、ウィスキー)と女性(缶チューハイ)で種類は異なるが、いずれも比較的安価にアルコールを摂取できる飲料であることが明らかとなった。介入研究では、BIを2年間で26人に実施した。4週間目の追跡には25人が回答し、その時点で20人が減酒目標を達成していた。更にもう1人が減酒に再挑戦し、8週間目の追跡時に減酒目標を達成していた。年度末のフォローアップには18人が参加したが、その時に実施したAUDITの点数が、介入前のAUDITの点数より改善していた者は11人であった。BIによるパラメーター変化については明らかな結果は得られなかった。BIのリクルートや実施に関するノウハウについては蓄積したことを記述的にまとめた。横断研究の結果より、健康診査時にAUDITを行うことは問題飲酒に関する評価だけでなく、循環器疾患ハイリスク者の評価の観点からも有用であると考えられた。また、AUDITの点数が高い群に対しては減酒だけでなく、生活習慣全般に関する保健指導を行うことが有効であると考えられた。介入研究の結果より、BIは減酒に一定の効果があると考えられた。一方でBIの実施には、リクルートに関する問題や、BIを行う側のアルコールに関する知識の蓄積に関する問題などをクリアするための用意・工夫が必要であると考えられた。
結論
地域住民を対象に、横断研究と介入研究を実施した。横断研究の結果から、AUDITは地域の問題飲酒者の洗い出しに有効なだけでなく、循環器疾患のハイリスク者の洗い出しにも有効である可能性が示された。介入研究の結果から、BIは減酒に有効であると考えられたが、その実施にはリクルートの問題や関わる保健側の人材育成などの問題をクリアする必要があると考えられた。
公開日・更新日
公開日
2017-06-23
更新日
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