健康寿命及び地域格差の要因分析と健康増進対策の効果検証に関する研究

文献情報

文献番号
201608015A
報告書区分
総括
研究課題名
健康寿命及び地域格差の要因分析と健康増進対策の効果検証に関する研究
課題番号
H28-循環器等-一般-008
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
辻 一郎(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 橋本 修二(藤田保健衛生大学 医学部)
  • 津下 一代(あいち健康の森健康科学総合センター)
  • 横山 徹爾(国立保健医療科学院)
  • 村上 義孝(東邦大学 医学部)
  • 近藤 尚己(東京大学 大学院医学系研究科)
  • 田淵 貴大(大阪府立成人病センター)
  • 相田 潤(東北大学 大学院歯学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
11,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班の目的は、以下の4点である。第1に、「平均寿命の増加分を上回る健康寿命の増加」と「健康寿命の都道府県格差の縮小」という健康日本21(第二次)の目標の達成状況を適切に評価する統計手法を確立する。第2に、コホート研究により生活習慣等と健康寿命との関連を分析し、どの生活習慣をどの程度改善させることで健康寿命は何年延びるかを示す。第3に、生活習慣や社会経済状況が生活習慣病の地域格差に及ぼす影響を解明する。第4に、効果的な生活習慣改善につながる健康増進対策の優良事例を収集し、その効果を分析・評価する。その成果に基づいて、健康日本21(第二次)の中間評価に貢献し、各自治体が取り組むべき健康増進施策を提案する。
研究方法
厚生労働省「国民生活基礎調査」データを分析して、日常生活に制限のない期間の平均(健康寿命)について全国値と各都道府県値を算定し、「平均寿命の増加分を上回る健康寿命の増加」及び「健康寿命の都道府県格差の縮小」という健康日本21(第二次)の目標の達成状況を検討した。高齢者を対象とするコホート研究データを用いて、喫煙習慣や健康的な生活習慣の組み合わせが健康寿命(介護保険非該当での平均生存期間)に及ぼす影響を検討した。行政データを用いて3歳児う蝕有病率と成人喫煙率の都道府県格差の推移について検討した。保健事業の企画立案について愛知県内54市町村にアンケート調査を実施した。すべての研究は「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」を遵守し、所属施設の倫理委員会の承認を受けている。
結果と考察
健康寿命の全国推移と都道府県格差の算定・評価に関する研究:平均寿命と健康寿命との差(日常生活に制限のある期間の平均)は、男性では延伸傾向であり、この傾向が今後も続くとすれば10間で0.2年延伸すると推定された。一方、女性では有意に短縮し、10年間で0.4年短縮すると推定された。健康日本21(第二次)の目標「平均寿命の増加分を上回る健康寿命の増加」は、男性で達成といえないと判定され、女性で達成といえると判定された。健康日本21(第二次)の目標「健康寿命の都道府県格差の縮小」の達成状況を検討したところ、都道府県のバラツキ(標準偏差)は、男性で平成22年の0.57から平成25年の0.47へ約17%縮小した。女性では0.64から0.61へ約6%縮小した。
健康寿命の延伸可能性に関する研究:喫煙習慣別に分析したところ、平均余命と健康寿命(介護保険非該当での平均生存期間)は男性60歳で非喫煙23.7歳、23.2歳、禁煙23.0歳、22.6歳、現在喫煙で20.0歳、19.3歳、女性60歳では平均余命、健康寿命は、非喫煙27.3歳、25.0歳、禁煙22.2歳、20.8歳、現在喫煙22.5歳、20.7歳であった。健康的な生活習慣の該当数が多い者ほど健康寿命は有意に長く、最低群(0~1つ)を基準とした場合の最高群(5つ該当)の50パーセンタイル差の推定値は25.4ヶ月の差がみられた。
生活習慣病の地域格差の要因に関する研究:所得の3分位で地域を分けた際の、最も所得が高い地域と低い地域の平均う蝕有病者率は平成14年各29.7%・41.7%から平成25年16.3%・23.5%となった。う蝕の絶対的格差は減少傾向にあるが、相対的格差は増加傾向にあった。平成16年から22年までの成人喫煙率の都道府県格差は、男性で横ばい傾向、女性で減少傾向であった。
効果的な生活習慣改善につながる優良事例に関する研究:愛知県内の市町村では、新規保健事業実施にあたり、自市町村のセグメント別健康課題を意識するよりも他市町村の保健事業の資料を参考に事業計画を立てるところが多かった。
結論
平均寿命の増加分を上回る健康寿命の増加という健康日本21(第二次)の目標は、男性で達成といえない、女性で達成といえると判定された。健康寿命の都道府県格差の縮小という健康日本21(第二次)の目標について、都道府県のバラツキ(標準偏差)は、平成22年と平成25年との間で、男性で約17%縮小、女性で約6%縮小した。非喫煙者と現在喫煙者との間で60歳時点の健康寿命の差は男性で3.9年、女性で4.3年であった。健康的な生活習慣5種類を全て実践している者と全く実践していない者との間で、65歳時点の健康寿命には25.4ヶ月の差があった。平成14年から25年までの都道府県別う蝕有病率の絶対的格差は減少傾向にあるが、相対的格差は増加傾向にあった。平成16年から22年までの成人喫煙率の都道府県格差は、男性で横ばい傾向、女性で減少傾向にあった。愛知県内の市町村では、新規保健事業の実施にあたり、自市町村のセグメント別健康課題を意識するよりも他市町村の保健事業の資料を参考に事業計画を立てるところが多かった。

公開日・更新日

公開日
2017-06-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-06-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201608015Z