文献情報
文献番号
201608014A
報告書区分
総括
研究課題名
糖尿病腎症重症化予防プログラム開発のための研究
課題番号
H28-循環器等-一般-007
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
津下 一代(公益財団法人 愛知県健康づくり振興事業団 あいち健康の森健康科学総合センター)
研究分担者(所属機関)
- 岡村 智教(慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学)
- 三浦 克之(滋賀医科大学医学部・公衆衛生学)
- 福田 敬(国立保健医療科学院)
- 植木浩二郎(国立国際医療研究センター研究所)
- 矢部 大介(関西電力医学研究所)
- 後藤 資実(名古屋大学医学部付属病院)
- 和田 隆志(金沢大学大学院医薬保健学総合研究科)
- 安田 宜成(名古屋大学大学院医学系研究科)
- 森山美知子(広島大学大学院医歯薬保健学研究院)
- 佐野 喜子(神奈川県立保健福祉大学)
- 樺山 舞(大阪大学大学院医学系研究科)
- 村本あき子(あいち健康の森健康科学総合センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
日本健康会議「健康なまち・職場づくり宣言2020」にて糖尿病腎症対策の目標値が掲げられ、国保等を中心とした予防対策を強化することとなった。先行研究班において「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」(暫定版)を作成、本研究班は同プログラム(受診勧奨・保健指導)の実証支援と評価、横展開方策の検討を目的としている。
研究方法
1)自治体のプログラム実証支援:一定の基準は示しつつ地域の実情にあわせ柔軟に対応するため、実施計画書の雛形を作成、参加自治体の計画書を作成を支援した。相談窓口設置、現地ヒアリングや個別相談会を行った。研究班ホームページにて共有事項についてはQ&Aとして掲載。研究班は運営マニュアルの雛型、『事業の進め方のフロー』を具体化した『進捗管理シート』を作成、参加自治体より定期的に様式を回収し、事業の進捗を確認した。研修会、情報交換会等を通じて、自治体専門職のスキル向上も行った。2)データベースの構築:対象者データ(臨床検査値、問診、透析導入の有無、介護認定の有無、レセプト情報)を登録するための共通様式を作成した。効果指標は、検査値(血糖、HbA1c、血圧、尿蛋白、Cr、eGFR等)、問診(服薬状況、喫煙等)、糖尿病性腎症病期、透析導入の有無、レセプト情報(医療費、傷病名、薬剤名)により評価する。3)レセプト情報を用いた事業評価:医療機関受診勧奨後の受療確認、心血管イベントの発症、透析導入の有無等を確認するためには、長期的に継続してレセプト情報を抽出する必要がある。これらの円滑な実施のためKDBの活用法を明示した。4)マクロ的評価方法の検討:保健事業の全体像を把握するため、事業評価シートを作成。糖尿病性腎症対象者抽出(健診受診者、糖尿病有無、腎症病期、糖尿病治療有無)、受診勧奨できた人数、受診につながった人数、保健指導募集と参加人数、完了人数等医療保険加入者全体を意識した評価を行う。
結果と考察
1)自治体のプログラム実証支援:90自治体(85市町村、5広域連合)が参加。増加の見込みである。①抽出基準自治体が計画した全54プログラム中、33プログラムは研究班が提示した基準により対象者を抽出、21プログラムは各自治体の実情にあわせ、独自の抽出基準を用いていた。②選定方法:プ健診やレセプトデータの有無、未治療者・治療中断者・治療者別の対象者区分を整理した「対象者抽出の考え方」を作成した。最多は「健診で糖尿病性腎症(3期以上)かつ糖尿病治療歴がない」を条件としたものであり(46)、次いで「健診で糖尿病性腎症(3期以上)かつ糖尿病治療中」であった(33)。③保健事業の種別とフロー:受診勧奨のみ実施18件、受診勧奨後同一対象者に保健指導を実施12件、受診勧奨と保健指導プログラムを別の対象者に実施9件、保健指導プログラムのみ実施12件であった。合計で、受診勧奨実施は39自治体、保健指導プログラムは33自治体が計画した。 ④運営支援:研修会2回、ワークショップのほか個別相談会(8自治体)、面談・メール・電話による個別相談支援を124件(平成28年2月末現在)実施。⑤進捗管理:8月末では約半数が地域連携に未着手、事業計画の進捗に差があった。12月末では、事業計画は約9割、所内体制や地域連携の達成率は7割以上、マニュアル作成は36%であった。
2)対象者データベースの構築:29年1月末、43自治体952例を登録。67.7±8.2歳、BMI25.5±3.9kg/m2、HbA1c 7.53± 1.37%、eGFR63.4±21.8mL/min/1.73m2。腎症病期分類では、2期以下26.3%、3期69.5%、4期4.2%であった。
3)レセプト情報を用いた評価: 565例のレセプト情報を取得。傷病名では糖尿病72.6%、高血圧66.7%、脂質異常症53.5%、糖尿病眼合併症23.4%、脳血管疾患15.7%、虚血性心疾患13.4%。糖尿病治療薬服薬者割合は、DPP‐4阻害薬35.4%、ビグアナイド薬22.0%、スルホニル尿素20.5%、αグルコシダーゼ阻害薬14.8%、降圧剤ではCa拮抗薬は31.6%、ARB薬は27.5%であった。
4)プログラムのマクロ的評価:事業評価シートを平成29年3月末に回収し、医療保険加入者全体を意識した評価を行う予定である。
2)対象者データベースの構築:29年1月末、43自治体952例を登録。67.7±8.2歳、BMI25.5±3.9kg/m2、HbA1c 7.53± 1.37%、eGFR63.4±21.8mL/min/1.73m2。腎症病期分類では、2期以下26.3%、3期69.5%、4期4.2%であった。
3)レセプト情報を用いた評価: 565例のレセプト情報を取得。傷病名では糖尿病72.6%、高血圧66.7%、脂質異常症53.5%、糖尿病眼合併症23.4%、脳血管疾患15.7%、虚血性心疾患13.4%。糖尿病治療薬服薬者割合は、DPP‐4阻害薬35.4%、ビグアナイド薬22.0%、スルホニル尿素20.5%、αグルコシダーゼ阻害薬14.8%、降圧剤ではCa拮抗薬は31.6%、ARB薬は27.5%であった。
4)プログラムのマクロ的評価:事業評価シートを平成29年3月末に回収し、医療保険加入者全体を意識した評価を行う予定である。
結論
全国90自治体が参加を得て約千例登録、糖尿病性腎症重症化予防保健指導プログラムの実証を開始した。対象者の抽出方法や抽出された対象者をプログラムへとつなぐフロー、進捗管理シートやデータ登録シート、事業評価シート等、自治体等で活用可能なツールを開発し、評価のための基盤整備をした。研究参加自治体の実証支援を継続しつつ課題を整理、プログラムの有効性を評価したうえで、汎用性のあるプログラムへと改訂する予定である。
公開日・更新日
公開日
2017-06-23
更新日
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