文献情報
文献番号
                      201608013A
                  報告書区分
                      総括
                  研究課題名
                      1型糖尿病の実態調査、客観的診断基準、日常生活・社会生活に着目した重症度評価の作成に関する研究
                  研究課題名(英字)
                      -
                  課題番号
                      H28-循環器等-一般-006
                  研究年度
                      平成28(2016)年度
                  研究代表者(所属機関)
                      田嶼 尚子(東京慈恵会医科大学 医学部)
                  研究分担者(所属機関)
                      - 池上 博司(近畿大学 医学部)
 - 今川 彰久(大阪医科大学 医学部)
 - 島田 朗(埼玉医科大学 医学部)
 - 杉原 茂孝(東京女子医科大学 医学部)
 - 菊池 透(埼玉医科大学 医学部)
 - 浦上 達彦(日本大学 医学部)
 - 西村 理明(東京慈恵会医科大学 医学部)
 - 植木 浩二郎(国立国際医療研究センター 糖尿病研究センター)
 - 川村 智行(大阪市立大学 医学部)
 - 菊池 信行(横浜市立みなと赤十字病院 小児科)
 - 中島 直樹(九州大学 医学部)
 - 梶尾 裕(国立国際医療研究センター病院 糖尿病内分泌代謝科)
 - 横山 徹爾(国立保健医療科学院 障害健康研究部)
 
研究区分
                      厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
                  研究開始年度
                      平成28(2016)年度
                  研究終了予定年度
                      平成29(2017)年度
                  研究費
                      10,000,000円
                  研究者交替、所属機関変更
                      所属機関異動
研究分担者 今川 彰久
大阪大学医学部( 平成28年4月1日~平成28年11月30日)→ 大阪医科大学医学部(平成28年12月1日以降)
                  研究報告書(概要版)
研究目的
            1型糖尿病はすべての年齢に発症し、生涯にわたってインスリン注射が必須なまれな疾患で生活上の困難もある。しかし、全国の有病者数や治療と生活の実態に関する十分な知見が得られていない。本研究の目的は、①確実な(=インスリン依存の)1型糖尿病(小児および成人)を客観的に判断する基準を策定する、②日常・社会生活に着目した重症度分類を行う、及び、③インスリン依存の1型糖尿病を抽出するための精緻化したアルゴリズムを開発し、ビッグデータを利用して本疾患の全人口における有病者を推定すること、患者登録データベースの構築と試験的実践、である。
      研究方法
            研究班は【診断基準】、【社会的重症度分類】、【登録制度】からなり、それぞれの目標に向けて研究ロードマップに従って、3分科会別に研究を推進した。研究年度内に、全体班会議2回、分科会10回を開催し議論を深めるとともに、それぞれ専門家による疫学的、医療統計学的妥当性の検討を行った。また、関連学会の理事長や有識者からなる諮問委員会を設け、広くご意見や指導を受けた。
本研究は、ヘルシンキ宣言の趣旨および東京慈恵会医科大学倫理員会の審査を受け、疫学研究に関する倫理指針(平成26年12月施行)に則って行った。
      本研究は、ヘルシンキ宣言の趣旨および東京慈恵会医科大学倫理員会の審査を受け、疫学研究に関する倫理指針(平成26年12月施行)に則って行った。
結果と考察
            【診断基準分科会】
グルカゴン負荷試験データのある症例を内科で90例、小児科で105例抽出した。内科系のデータを解析した結果、空腹時CPR値が急性発症1型糖尿病における確実な(=インスリン依存の)診断基準である0.6ng/mlに相当するグルカゴン負荷後のCPRは1.0ng/mlであった。一方、小児科施設のデータではこれとは異なる関連性を示すことが示唆された。
【社会的重症度分類分科会】
1型糖尿病患者403名のイスリン分泌残存能を後方視的に検討した。血中CPR陽性率は発症5年で約50%、10年で約20%。残存膵β細胞機能ありの症例では、完全枯渇例と比較してHbA1c値が低い傾向を認めた。血中CPR値だけで重症度を判定できるのか検証が必要と思われた。強化インスリン療法で治療中の1型糖尿病患者101名を対象に持続血糖測定(CGM)を施行した。CGMデータから得られたSDを四分位に分け、各群の24時間血糖値のSDとこれに対応するHbA1cとの間には有意な相関を認めなかった。HbA1c値は、患者の日常生活を損なう著しい血糖変動幅の有無はでは予測できず、社会的重症度の評価指標として十分ではないことが示唆された。20歳以上の1型糖尿病の日常生活・社会生活の実態を把握するため、重症低血糖、自動車免許の取得、生命保険への加入等、日常生活・QOLへの影響を評価できる項目を追加したアンケート調査票を作成した。
【登録制度分科会】
機械学習を用いて、1型糖尿病推定症例を検出する抽出ロジックを精緻化した。さらに、カルテレビューで同時に評価した「インスリン依存性の有無」を用いて、インスリン依存の1型糖尿病の抽出ロジックを作成し精度を評価した。平成29年度から試行する疾患登録DBの構築を目的として、本研究が作成した分アンケート調査票の項目、インスリン治療研究会第4コホートの項目、および6つの臨床学会で策定された生活習慣病自己管理項目セットを基に、疾患登録DB項目の検討を行った。
      グルカゴン負荷試験データのある症例を内科で90例、小児科で105例抽出した。内科系のデータを解析した結果、空腹時CPR値が急性発症1型糖尿病における確実な(=インスリン依存の)診断基準である0.6ng/mlに相当するグルカゴン負荷後のCPRは1.0ng/mlであった。一方、小児科施設のデータではこれとは異なる関連性を示すことが示唆された。
【社会的重症度分類分科会】
1型糖尿病患者403名のイスリン分泌残存能を後方視的に検討した。血中CPR陽性率は発症5年で約50%、10年で約20%。残存膵β細胞機能ありの症例では、完全枯渇例と比較してHbA1c値が低い傾向を認めた。血中CPR値だけで重症度を判定できるのか検証が必要と思われた。強化インスリン療法で治療中の1型糖尿病患者101名を対象に持続血糖測定(CGM)を施行した。CGMデータから得られたSDを四分位に分け、各群の24時間血糖値のSDとこれに対応するHbA1cとの間には有意な相関を認めなかった。HbA1c値は、患者の日常生活を損なう著しい血糖変動幅の有無はでは予測できず、社会的重症度の評価指標として十分ではないことが示唆された。20歳以上の1型糖尿病の日常生活・社会生活の実態を把握するため、重症低血糖、自動車免許の取得、生命保険への加入等、日常生活・QOLへの影響を評価できる項目を追加したアンケート調査票を作成した。
【登録制度分科会】
機械学習を用いて、1型糖尿病推定症例を検出する抽出ロジックを精緻化した。さらに、カルテレビューで同時に評価した「インスリン依存性の有無」を用いて、インスリン依存の1型糖尿病の抽出ロジックを作成し精度を評価した。平成29年度から試行する疾患登録DBの構築を目的として、本研究が作成した分アンケート調査票の項目、インスリン治療研究会第4コホートの項目、および6つの臨床学会で策定された生活習慣病自己管理項目セットを基に、疾患登録DB項目の検討を行った。
結論
            本研究は1型糖尿病の病態解明や医療水準の向上に資するとともに、本疾患に対する社会の理解の普及と啓発、重症度別に対応する医療の提供等、医療体制や福祉等の改善点を明らかにすることができるなど、研究成果の波及効果は大きい。今後とも研究分担者間で緊密な連携をとり、関連学会である日本糖尿病学会、日本小児内分泌学会、日本医療情報学会の強力な支援のもとに一丸となり本研究を遂行する。
      公開日・更新日
公開日
          2017-06-23
        更新日
          -