文献情報
文献番号
201608007A
報告書区分
総括
研究課題名
非肥満者に対する保健指導方法の開発に関する研究
課題番号
H27-循環器等-一般-008
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
下方 浩史(名古屋学芸大学 大学院栄養科学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 安藤 富士子(愛知淑徳大学 健康医療科学部)
- 大塚 礼(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター NILS-LSA活用研究室)
- 葛谷 雅文(名古屋大学 未来社会創造機構)
- 大藏 倫博(筑波大学 大学院人間総合科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
6,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
腹囲が男女の基準値以内で、BMIが25未満の非肥満でありながら高血糖、血清脂質異常、血圧高値のうちの2つ以上を有している非肥満の代謝異常者は日本に多数いると推定されるが、特定健診の予防対策から外れてしまっている。本研究では15年間の追跡がなされている無作為抽出された地域住民コホートの3,983人、25年にわたって追跡されている大規模健診コホートの16万人を対象とし、非肥満の高血糖、血清脂質異常、血圧高値をターゲットとして、その病態とリスク要因を明らかにし、仮想的な無作為化対照試験(RCT)による栄養と運動の介入、エビデンスレベルまで含めた文献研究を行い、これらの結果から、非肥満の代謝性異常者の生活習慣改善への効果的な保健指導方法に関するガイドラインの策定を目指した。
研究方法
①地域住民コホート研究
非肥満者の代謝異常による虚血性病変発症のリスク評価を行った。NILS-LSAの15年間の縦断データを用いて、対象者をBMIが25未満で腹囲が基準値以下の非肥満者でありながら高血糖、血清脂質異常、血圧高値の2つ以上を有する代謝性異常となる病態(非肥満の代謝異常)、メタボリックシンドローム(メタボ)、代謝異常のない者の3群に分け、代謝異常のない者に対しての、虚血性心疾患及び心電図の虚血性変化のリスクを、一般化推定方程式を用いてオッズ比として求めた。
②大規模健診コホート研究
地域住民コホートと同様に非肥満の代謝異常による心電図での虚血性変化のリスクについてメタボと比較しながら一般化推定方程式を用いて解析を行った。
③運動・栄養仮想介入研究
NILS-LSAの縦断的なデータを用いて多彩なRCTを仮想的に実施し、非肥満者の代謝性異常を改善する最適な介入方法を探索した。
④文献研究及び非肥満者に対する保健指導方法に関するガイドラインの策定
非肥満者の代謝性異常の定義とスクリーニングのための検査、疫学、動脈硬化性疾患罹患、死亡リスク、栄養介入、運動介入、その他の生活習慣介入の6つの重要課題について合計17のクリニカル・クエスチョン(CQ)を作成し、国内外の論文のシステマティック・レビューを行った。
非肥満者の代謝異常による虚血性病変発症のリスク評価を行った。NILS-LSAの15年間の縦断データを用いて、対象者をBMIが25未満で腹囲が基準値以下の非肥満者でありながら高血糖、血清脂質異常、血圧高値の2つ以上を有する代謝性異常となる病態(非肥満の代謝異常)、メタボリックシンドローム(メタボ)、代謝異常のない者の3群に分け、代謝異常のない者に対しての、虚血性心疾患及び心電図の虚血性変化のリスクを、一般化推定方程式を用いてオッズ比として求めた。
②大規模健診コホート研究
地域住民コホートと同様に非肥満の代謝異常による心電図での虚血性変化のリスクについてメタボと比較しながら一般化推定方程式を用いて解析を行った。
③運動・栄養仮想介入研究
NILS-LSAの縦断的なデータを用いて多彩なRCTを仮想的に実施し、非肥満者の代謝性異常を改善する最適な介入方法を探索した。
④文献研究及び非肥満者に対する保健指導方法に関するガイドラインの策定
非肥満者の代謝性異常の定義とスクリーニングのための検査、疫学、動脈硬化性疾患罹患、死亡リスク、栄養介入、運動介入、その他の生活習慣介入の6つの重要課題について合計17のクリニカル・クエスチョン(CQ)を作成し、国内外の論文のシステマティック・レビューを行った。
結果と考察
①地域住民コホート研究
虚血性心疾患となるオッズ比は非肥満の代謝異常では1.63(95%信頼区間1.26-2.10)、メタボでは1.61(1.23-2.11)であり、ともに有意で同程度のオッズ比であった。また男女別にみても、非肥満の代謝異常、メタボともに、男女それぞれで有意なリスクとなっていた。心電図の虚血性変化のリスクについては、オッズ比は非肥満の代謝異常では1.25(1.11-1.41)、メタボでは1.40(1.26-1.56)であり、ともに有意であった。また男女別にみても、非肥満の代謝異常、メタボともに、男女それぞれで有意なリスクとなっていた。
②大規模健診コホート研究
非肥満の代謝異常では虚血性変化となるオッズ比は1.23(1.20-1.27)、メタボでは1.45(1.41-1.50)でともに有意であり、また男女別にみても非肥満の代謝異常、メタボともに、男女それぞれで有意であった。
③運動・栄養仮想介入研究
歩行や運動の量、強度を様々なカットオフ値を用いてRCTのシミュレーションを行ったところ、2年後の非肥満の代謝性異常の改善には、一日の歩数が5,500歩以上、運動による一日のエネルギー消費量100kcal以上、3METSまでの低強度の運動時間一日45分以上が有効との結果が得られた。これらのことから、非肥満の代謝性異常の改善には、強度の高いスポーツなどの実践は必ずしも必要でなく、歩行やその他の日常生活動作を十分に行うことが重要であることが明らかとなった。栄養摂取に関しては減塩と動物性食品の制限が有用である可能性が示唆された。
④文献研究及び非肥満者に対する保健指導方法に関するガイドラインの策定
1995年以降の文献検索を行い2,809件の論文を抽出し、アブストラクトからの1次スクリーニング、文献フルテキストを精読する2次スクリーニングを実施し、各CQについて評価指標等の信頼性・妥当性、介入の効果等のエビデンスレベル、推奨グレード、コンセンサスレベルを含むリストを作成した。
虚血性心疾患となるオッズ比は非肥満の代謝異常では1.63(95%信頼区間1.26-2.10)、メタボでは1.61(1.23-2.11)であり、ともに有意で同程度のオッズ比であった。また男女別にみても、非肥満の代謝異常、メタボともに、男女それぞれで有意なリスクとなっていた。心電図の虚血性変化のリスクについては、オッズ比は非肥満の代謝異常では1.25(1.11-1.41)、メタボでは1.40(1.26-1.56)であり、ともに有意であった。また男女別にみても、非肥満の代謝異常、メタボともに、男女それぞれで有意なリスクとなっていた。
②大規模健診コホート研究
非肥満の代謝異常では虚血性変化となるオッズ比は1.23(1.20-1.27)、メタボでは1.45(1.41-1.50)でともに有意であり、また男女別にみても非肥満の代謝異常、メタボともに、男女それぞれで有意であった。
③運動・栄養仮想介入研究
歩行や運動の量、強度を様々なカットオフ値を用いてRCTのシミュレーションを行ったところ、2年後の非肥満の代謝性異常の改善には、一日の歩数が5,500歩以上、運動による一日のエネルギー消費量100kcal以上、3METSまでの低強度の運動時間一日45分以上が有効との結果が得られた。これらのことから、非肥満の代謝性異常の改善には、強度の高いスポーツなどの実践は必ずしも必要でなく、歩行やその他の日常生活動作を十分に行うことが重要であることが明らかとなった。栄養摂取に関しては減塩と動物性食品の制限が有用である可能性が示唆された。
④文献研究及び非肥満者に対する保健指導方法に関するガイドラインの策定
1995年以降の文献検索を行い2,809件の論文を抽出し、アブストラクトからの1次スクリーニング、文献フルテキストを精読する2次スクリーニングを実施し、各CQについて評価指標等の信頼性・妥当性、介入の効果等のエビデンスレベル、推奨グレード、コンセンサスレベルを含むリストを作成した。
結論
非肥満者の高血糖、血清脂質異常、血圧高値をターゲットとして、その病態とリスク要因を明らかにした。また非肥満の代謝性異常の改善をエンドポイントとした仮想的な無作為化対照試験(RCT)による栄養と運動の介入研究を行った。さらにエビデンスレベルまで含めた文献研究により「非肥満の代謝性異常者の生活習慣改善への効果的な保健指導方法に関するガイドライン」の策定を行った。
公開日・更新日
公開日
2017-06-23
更新日
-