検診効果の最大化に資する、職域を加えた新たながん検診精度管理手法に関する研究

文献情報

文献番号
201607027A
報告書区分
総括
研究課題名
検診効果の最大化に資する、職域を加えた新たながん検診精度管理手法に関する研究
課題番号
H27-がん政策-指定-006
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
斎藤 博(国立研究開発法人国立がん研究センター 社会と健康研究センター検診研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 佐川元保(東北医科薬科大学医学部)
  • 青木大輔(慶應義塾大学)
  • 渋谷大助((公財)宮城県対がん協会 がん検診センター)
  • 西田 博(パナソニック健康保険組合健康管理センター)
  • 松田一夫((公財)福井県健康管理協会)
  • 中山富雄(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センターがん予防情報センター疫学予防課)
  • 笠原善郎(恩賜財団福井県済生会病院)
  • 濱島ちさと(国立がん研究センター社会と健康研究研究センター検診研究部)
  • 雑賀公美子(国立がん研究センター社会と健康研究研究センター検診研究部)
  • 町井涼子(国立がん研究センター社会と健康研究研究センター検診研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
8,460,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国でがん検診によるがん死亡率低減を達成するためには、欧米の組織型検診に倣い品質保証の手法による精度管理体制を確立する必要がある。本研究は対策型検診の精度管理体制構築を目的として、1.精度管理指標の設定、2.指標によるモニタリング、3.フィードバックについて各々課題を設定し検討した。その他第2期基本計画の推進に必要な手法として住民に対する情報提供のあり方について検討を開始した。
研究方法
(1)精度管理指標の設定 住民検診のデータベースの元となる地域保健・健康増進事業報告(以下事業報告)について精度向上のための検討を行った。また、現行のプロセス指標基準値(H20年厚労省公表)の修正を検討した。
(2)指標によるモニタリング(全自治体のモニタリング) 全自治体を対象に、健康増進法にもとづく住民検診(健康増進事業)の精度管理体制を把握、分析した。具体的には平成28年における「事業評価のためのチェックリスト(以下CL)」の実施状況、及び平成27年における生活習慣病検診等管理指導協議会(以下協議会)の活動状況を調査した。
(3)フィードバック 前身研究班が開発した、都道府県主導による精度管理を支援するためのツールを更新した。また個別検診受託医療機関に対するモニタリング・フィードバックの体制構築について検討を開始した。まず今年度は4県3市と連携し、モニタリング開始までの体制整備を進めた。
(4)その他  H27年の住民検診で個別受診勧奨を行った自治体を対象に勧奨資材を回収し、その実態把握を開始した。
結果と考察
(1)精度管理指標の設定 現行の事業報告では発見がんに大幅な計上漏れがあり、その主な原因が、自治体担当者が医療機関からの報告を正確に判断できないことにあると分かった。そこで、計上漏れが無くかつ妥当な集計のための要件を5がんについて検討し、新たな事業報告の様式を開発した。これらの様式はH29年度事業報告から反映される。今後、新しい様式の運用により、がん検診本来のターゲットである原発性がんが正確に計上され、正確なプロセス指標値の分析に繋がることが期待される。また現行のプロセス指標基準値を引き上げる改訂案を作成した。この改訂により、今後精度管理水準の更なる向上が期待される。
(2)指標によるモニタリング 市区町村CLの回収率は95.8%(1664/1737市区町村)だった。集団検診のCL全項目実施率は約72%で、実施率が特に低かった項目は受診者への説明実施(約25%)、call-recallの実施(約7%)、精検機関に対する精検結果報告書の返却依頼(約45%)、適切な仕様書による検診機関の委託(約45%)、検診機関への精度管理評価のフィードバック(約19%)だった。一方個別検診のCL全項目実施率は約59~64%で、全体的に集団検診の実施率を下回っていた。特に検診機関に適切な仕様書により委託すること、仕様書が遵守されたかを確認すること、要精検者に受診可能な精検機関名を提示すること、精検結果を検診機関にも共有すること(検診機関の精度向上の為)、については大幅に実施率が下回っていた。これらの実施率が特に低かった項目については、今後自治体にヒアリングを行い、体制改善のバリアや解決策を収集する。都道府県については46県から回答を得た。協議会の活動は改善傾向にあり、特に、住民にがん部会の検討結果を公表した県は約70%(32~34県)で、平成23年の第1回調査時(45%)より大幅に改善した。これは、H23年に本研究班が開発・更新してきた協議会の活動を支援するツールや全国研修会での啓発の効果と考えられる。今後はこれら協議会の活動と県内の精度管理水準向上の関連について分析を進める。
(3)フィードバック 連携先の自治体毎に検診機関CLのモニタリング経路を設定し、県医師会や地域医師会の協力を得るための資料の雛型やCLに基づいた調査票を作成し提供した。2県1市はH28年度中にモニタリングを実施しフィードバックの準備を開始した。その他の自治体も来年以降の開始に向けて準備を開始した。今後これらの自治体にヒアリングし、個別検診受託医療機関に対するCL運用上のバリアや解決策を収集する。それを基に全国自治体でのCL運用体制のモデルを提示する。
(4)その他 勧奨資材の回収率は75.7%(481/635市区町村)で、はがき、パンフレット等多様な資材を回収した。今後これら資材の内容から情報提供の実態を明らかにし、適切な情報提供の好事例を抽出する。
結論
がん死亡率減少の実現にむけた検診精度管理体制の構築のため、精度管理の各段階について課題を設定し検討を進めた。これらの研究成果を今後政策に反映させることにより、精度管理水準の均てん化に繋がり、ひいてはがん死亡率減少に寄与することが期待できる。

公開日・更新日

公開日
2017-06-23
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201607027Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,998,000円
(2)補助金確定額
10,998,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 598,062円
人件費・謝金 353,821円
旅費 2,116,470円
その他 5,391,657円
間接経費 2,538,000円
合計 10,998,010円

備考

備考
物品の購入が入札で決まるため差額がでた。(自己資金:10円)

公開日・更新日

公開日
2018-01-04
更新日
-