総合的な思春期・若年成人(AYA)世代のがん対策のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
201607024A
報告書区分
総括
研究課題名
総合的な思春期・若年成人(AYA)世代のがん対策のあり方に関する研究
課題番号
H27-がん対策-一般-005
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
堀部 敬三(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 臨床研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 清水 千佳子(国立がん研究センター中央病院)
  • 小原 明(東邦大学 医学部)
  • 大園 誠一郎(国立大学法人浜松医科大学 医学部)
  • 山本 一仁(愛知県がんセンター中央病院 臨床試験部)
  • 松本 公一(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 小児がんセンター)
  • 多田羅 竜平(大阪市立総合医療センター)
  • 鈴木 直(聖マリアンナ医科大学 医学部)
  • 古井 辰郎(岐阜大学大学院 医学系研究科)
  • 中塚 幹也(岡山大学大学院 保健学研究科)
  • 北島 道夫(長崎大学病院 産婦人科)
  • 木村 文則(滋賀医科大学 医学部)
  • 高井 泰(埼玉医科大学 医学部)
  • 森重 健一郎(岐阜大学大学院 医学系研究科)
  • 中村 晃和(大阪府済生会吹田病院)
  • 清水 研(国立がん研究センター中央病院)
  • 鈴木 礼子(東京医療保健大学 医療保健学部)
  • 川井 章(国立がん研究センター中央病院)
  • 丸 光惠(甲南女子大学 看護リハビリテーション学部)
  • 高橋 都(国立がん研究センター がん対策情報センターがんサバイバーシップ支援部)
  • 新平 鎮博(国立特別支援教育総合研究所 研究企画部)
  • 小澤 美和(学校法人聖路加国際大学 聖路加国際病院)
  • 高山 智子(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策情報センターがん情報提供部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
19,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国の思春期・若年成人(AYA)世代のがん医療の実態調査および患者・がん経験者のニーズ調査を行い、その結果をもとにこの世代の特徴に配慮したAYA世代がん対策のあるべき姿を具体的に政策提言する。診療・支援のツールや評価法の開発、ガイドラインの作成、および、妊孕性温存のための生殖医療提供体制の構築を行い、AYA世代のがん患者の包括医療の向上を図る。さらに、これらを広く医療関係者、国民に周知して普及啓発を図る。
研究方法
AYA世代のがん治療中患者・がん経験者とその家族、および健常者(対照)に対するアンケート調査、がん診療連携拠点病院および小児がん拠点病院のがん登録部門、相談部門、緩和ケアチームに対する診療・相談体制と実績、相談員緩和ケアスタッフの意識調査、がん関連領域の専門医に対するWebによる意識調査、がん診療連携拠点病院の看護師に対する意識調査、および、各種個別研究を実施する。
結果と考察
患者・経験者および家族のアンケート調査(治療中がん患者225 人、がん経験者261人、AYA世代一般健康人(ウェブ調査) 200人、親217人、きょうだい81人)では、患者の悩みの上位は、自身の将来、仕事、経済面、診断・治療、生殖機能で、年齢階層別では15歳~19歳で学業と体力の維持・運動が上位に位置した。がん経験者の悩みでは、生殖機能と後遺症・合併症、体力の維持・運動が上位に上がった。患者・経験者は、多岐にわたり個別性が高い情報・相談ニーズがあり、意思決定への参加意欲や自己管理への意識が高い。療養環境の困りごとの上位は、食事が合わない、同世代がいない、Web環境がないであった。若年者ほど食事に不満を持っていた。親の悩みの上位は、経済面、仕事、患者との関係であり、きょうだいの悩みの上位は、患者の後遺症・合併症、患者の診断・治療、きょうだい自身の将来、家族の将来であった。
地域がん診療連携拠点病院および小児がん拠点病院235施設から回答が得られた。AYA世代患者数は施設あたり中央値年間47人(全がん患者の4.35%)で、特に15-19歳、20-24歳、25-29歳の患者数は少なく、年間中央値はそれぞれ2例、3例,8例であった。がん種は、年齢階層で部位に特徴があった。年間2例以下の少数診療施設では、血液、婦人科腫瘍、がん薬物療法、小児血液・がん、緩和医療、生殖医療の各専門医や精神腫瘍医の数が有意に少なく、診療の85%は子宮頸部であった。年間11例以上の多数例施設では、血液、脳、子宮頸部が上位を占めたが、生殖医療や緩和医療の専門医、精神腫瘍医の配置は60%に満たなかった。緩和ケアスタッフ(475人)の約4割で25歳未満患者の緩和ケアの実践経験がなく、実践経験者もケア困難感を認めた。リソース不足が認識された。
がん関連専門医の意識調査(1348人)では、「AYA」という言葉を知らない専門医が約40%いる一方、80%以上の専門医がAYA世代(若年)を意識して診療していた。望ましい診療体制として「AYA診療チーム」が多く、小児血液・がん専門医の95%がAYA世代に特別な配慮が必要と回答した。一方、25歳を超える患者には特別な配慮は必要ないと考える専門医が多かった。診療患者数は5名以下が大多数であった。
看護師調査(分析:1982人)では、必要と考える支援の上位に「メンタルサポート」「診断時の情緒心理面への支援」「どう生きたいか(どう死にたいか)」が挙げられた。ケアの実施経験では、性・生殖に関連する項目の実施経験は乏しかった。ケア困難感が高いカテゴリーに「コミュニケーションに関すること」が挙げられた。
個別調査研究として、医療コミュニケーションに関する面接調査、食生活に関するアンケート調査、教育支援の実態調査、就労問題に関するシステマティックレビュー、情報提供ツール・あり方の検討、骨軟部腫瘍疾患特異的健康関連QOL評価尺度を用いた前向き臨床研究を実施した。また、がん・生殖医療連携ネットワークの整備を全国各地に展開した。がん・生殖医療ナビゲータの養成と配置の重要性が認識された。
結論
各種実態調査により、AYA世代がん患者・経験者のアンメットニーズが明らかになり、25歳未満のAYA世代がん診療の施設集約化と25歳以上のがん診療の最適化が求められた。実態調査を基に、医療者の教育、適切な情報発信とアクセスツールの開発、AYAの専門的支援のための「AYA支援チーム」形成の推進、「AYA診療拠点」の指定、地域連携体制の整備、既存リソースの有効活用の推進の政策提言を行った。今後、AYA世代に特化した実用的な包括医療のガイドラインの作成、各種ツールの開発、および普及活動を行うことで、AYA世代がん患者と医療者の相互理解が進み、診断時からのスムーズな緩和医療・包括医療の実現に繋がることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2017-11-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

その他
総括研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2017-06-23
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201607024Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
24,700,000円
(2)補助金確定額
24,700,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,697,381円
人件費・謝金 5,011,206円
旅費 3,641,446円
その他 7,661,250円
間接経費 5,700,000円
合計 24,711,283円

備考

備考
差額は自己資金にて充当したため

公開日・更新日

公開日
2017-11-30
更新日
-