汎用性のある系統的な苦痛のスクリーニング手法の確立とスクリーニング結果に基づいたトリアージ体制の構築と普及に関する研究

文献情報

文献番号
201607021A
報告書区分
総括
研究課題名
汎用性のある系統的な苦痛のスクリーニング手法の確立とスクリーニング結果に基づいたトリアージ体制の構築と普及に関する研究
課題番号
H27-がん対策-一般-002
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
松本 禎久(国立研究開発法人国立がん研究センター東病院 緩和医療科)
研究分担者(所属機関)
  • 清水 研(国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院 精神腫瘍科)
  • 里見 絵理子(国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院 緩和医療科)
  • 木澤 義之(神戸大学大学院)
  • 明智 龍男(名古屋市立大学大学院)
  • 森田 達也(聖隷三方原病院)
  • 大谷 弘行(国立病院機構九州がんセンター 緩和医療科)
  • 小川 朝生(国立がん研究センター先端医療開発センター 精神腫瘍学開発分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
6,154,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
政策では、がんと診断された時からの緩和ケアや苦痛のスクリーニングが勧められているが、国際的にエビデンスは拮抗し、実臨床での実施可能性や効果に関しては様々な議論がある。また、これまでの質の高い研究はいずれも海外での研究であり、医療制度、提供体制の異なるわが国においての研究が必要である。
本研究では、苦痛のスクリーニングの有用性の検証、およびわが国におけるスクリーニング・トリアージプログラム(STP)の普及を目的とする。
研究方法
1)がん診断された時からの苦痛のスクリーニング等の有用性の検証
1. 看護師によるSTPのランダム比較試験
初回化学療法を受ける進行肺がん患者を対象とし、介入は通常ケアに加えてスクリーニングを組み合わせた看護師主導による専門的緩和ケア介入プログラム対照群は通常ケア群とする。主要評価項目はQOLとする。本研究班においては介入に必要な人的資源・時間、介入内容などの分析を行う。
2. 電子カルテの5thバイタルサインを用いたスクリーニングの有効性の検討
研究者の施設では、患者の苦痛症状を5thバイタルサインとしてSTAS-Jで評価し、電子診療録に記載している。STAS2以上が1週間に2回以上記録されたものをスクリーニング陽性と定義し、陽性患者について、緩和ケアチームがカルテを確認し、患者の状況を判断して、必要があれば推奨を記載する。主要評価項目は、陽性患者のうち、実際に追加の緩和治療が必要と考えられた患者の割合とした。
3. アドバンスケアプランニングの希望に関するスクリーニングの有効性の検討
研究者の施設では、アドバンスケアプランニングの希望を含む質問紙によるスクリーニングを実施しており、データを後ろ向きに収集し解析する。主要評価項目は、亡くなる前30日以内の化学療法の施行率とした。
2)苦痛のスクリーニングを全国の拠点病院に均てん化
1. STPを全国に普及するための研究
拠点病院においてスクリーニングに困難を感じている医療者を対象にワークショップ(WS)を開催する。WSの前後にアンケート調査を実施し、WSの内容は質的分析を行う。
2. PRO-CTCAE日本語版による苦痛のスクリーニングシステムの開発
 PRO-CTCAE日本語版による、がん治療の有害事象評価と併行して実施できる汎用性の高いスクリーニングモデルを構築し、電子端末による実施可能性を評価する研究を行う。
結果と考察
【結果】1)-1. 研究倫理審査委員会の承認を得て登録を開始し、平成29年3月末までに13例の登録が行われた。
1)-2. スクリーニング対象患者は2427人であった。このうち、スクリーニング陽性患者は223人(9.1%)であり、陽性患者のうち12人(5.4%)が追加の緩和治療が必要であると考えられた。
1)-3. 研究施設において2014年、2015年、2016年の死亡が判明した患者数は各々751人、652人、629人で、そのうち、化学療法を施行した患者は各々341人、419人、459人であった。死亡前30日間の化学療法施行率は各々16.4%、12.1%、11.1%と低下傾向にあった。
2)-1. WSを開催し、50施設51名が参加した。WS前後で、知識および困難さが有意に改善した。また、WSの内容について質的分析を行い、アイデアプールを作成した。
2)-2. PRO-CTCAEのうちの主要12項目を抽出し、電子端末作成など実施体制の整備を行った。
【考察】診断された時からの緩和ケア及びスクリーニングの有用性の検証の研究は、これまでの国際的研究と同等の水準であり、医療制度やコミュニケーションの意向の異なるわが国で行われることは、科学的に重要である。
厚生労働行政においては次のような貢献が考えられる。まず、ランダム化比較試験では、必要な人的資源・時間が評価され、結果はスクリーニング陽性者の対応に必要な人的資源・時間の算出に役立ち、拠点病院にスクリーニング・トリアージを導入する際の参考となる。また、調査結果に基づく課題と解決策を検討するWSをスクリーニングが十分に行えていない拠点病院を対象に開催することで、スクリーニング実施の均てん化に寄与する。また、WSの質的分析により、スクリーニングの課題と対策が収集され、各施設での実臨床における運用に際して役立つことが期待される。さらに、PRO-CTCAEを利用した汎用性の高いシステムが開発される。
結論
本年度は、看護師によるSTPのランダム化比較試験の症例登録を開始し、2つのコホート研究の結果を解析した。さらに、苦痛のスクリーニングの課題と解決策を検討するワークショップを開催し、有効性の評価と質的分析を行った。また、がん治療の有害事象評価と並行して実施できるスクリーニングシステムの実施可能性研究の実施体制を構築した。

公開日・更新日

公開日
2017-06-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2017-06-23
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201607021Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,000,000円
(2)補助金確定額
8,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,022,361円
人件費・謝金 2,184,695円
旅費 364,400円
その他 1,582,544円
間接経費 1,846,000円
合計 8,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-05-23
更新日
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