希少がんの定義と集約化に向けたデータ収集と試行のための研究

文献情報

文献番号
201607019A
報告書区分
総括
研究課題名
希少がんの定義と集約化に向けたデータ収集と試行のための研究
課題番号
H26-がん政策-一般-021
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
東 尚弘(国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策情報センターがん臨床情報部)
研究分担者(所属機関)
  • 川井 章(国立がん研究センター希少がんセンター)
  • 成田 善孝(国立がん研究センター中央病院 脳脊髄腫瘍科)
  • 佐々木 毅(東京大学医学部附属病院・病理部・診断科)
  • 関本 義秀(東京大学生産技術研究所)
  • 中村 文明(国立循環器病研究センター循環器病統合情報センターデータ統合室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
3,699,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、希少がん対策を円滑に進めるための必要なデータを提供することを目的としている。研究代表者が事務局をつとめる「希少がん対策ワーキンググループ」では診療提供体制と情報公開のあり方についてがん種ごとに検討する事になっており、本年度は四肢軟部肉腫分科会に対するデータ提供として、専門施設のあり方を考えるに資するデータとして、施設別症例数の安定に関する解析を行い、また、二つ目の対象がん種である眼腫瘍についても診療実態の調査を行った。他にも関連して、脳腫瘍に関する介護負担の特徴、病理医の希少がんの定義に関する意識や、思春期・若年成人(AYA)世代のがん種・年齢の分布などの実態、集約化の通院距離・人口カバーに関する追加解析なども行い、総合的に希少がん対策に貢献することを目的とした。
研究方法
院内がん登録データの2次利用で、施設あたりの四肢軟部肉腫症例数を年次毎に集計し、経年変化を検証した。また、眼・眼付属器に発生した腫瘍の初回治療についての集計と分析を行った。
悪性脳腫瘍に関しては、患者の遺族を対象に、治療経過における家族のニーズに関する半構造的インタビュー調査を行った。病理医に対して、希少がん定義に関する意識調査を行うとともに、小児AYAのがん種・年齢の分布などの実態に関する解析を行った。また、集約化の通院距離・人口カバーに関する解析も費用など含め検討した。
結果と考察
希少がんの研究というと、その診療実態や患者の置かれた状況に関する研究も非常に希である。希少がんはそれぞれ希であっても、累計すると一定の数になることから近年注目を浴びているが、状況として共通する部分と共通しない部分がある。一般には、課題のありかや問題の性質、(例えば施設あたりの症例数の少なさ、情報の不足、若手教育の問題など)は共通しているものの、解決のための方策は関係者がそれぞれ分散していることも有り、希少がんそれぞれに分けて考えなければならないことが多い。他にも眼腫瘍については頻度の問題から診療実態が不明瞭、義眼の問題がある、脳腫瘍は神経症状や意識障害、介護の問題などすることが本研究で明らかになった。
今後の対策としては、全体として方向性を見定めつつ、個別のがん種ごとに解決策を検討していく体制は重要であると考えられる。
結論
データや結果は希少がん対策ワーキンググループの資料として提供する、また学術発表を行うなど、今後の希少がん対策に役立てていく予定である。本研究のような政策に密着したデータの算出と反映は今後、他の分野においても応用可能であると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2017-06-23
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201607019B
報告書区分
総合
研究課題名
希少がんの定義と集約化に向けたデータ収集と試行のための研究
課題番号
H26-がん政策-一般-021
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
東 尚弘(国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策情報センターがん臨床情報部)
研究分担者(所属機関)
  • 川井 章(国立がん研究センター希少がんセンター)
  • 成田 善孝(国立がん研究センター中央病院 脳脊髄腫瘍科)
  • 佐々木 毅(東京大学医学部附属病院・病理部・診断科)
  • 関本 義秀(東京大学生産技術研究所)
  • 中村 文明(国立循環器病研究センター循環器病統合情報センターデータ統合室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は希少がん対策に必要となる基礎資料を科学的に提供するために、様々なデータを集めるとともに、関心のある医療従事者などの関係者とともにデータの解釈を継続的に行っていくことで、根拠に基づくだけでなく関係者が納得できる希少がん対策を可能にし、また、これらの議論に基づき、関係者に意欲のあるがん種を、研究進行の過程であきらかにしながら、実際に緩やかな集約化の施策をパイロット的に行い、その筋道をつけること目的とする。
研究方法
検討に必要な基礎情報はa)に関する意識、b)診療実態、c)集約化の利益・不利益の推定に焦点を絞り、海外の制度・状況も参考にした。a) 定義に関しては、医師・患者の意見や経験、診療方針を調査して具体的な希少がんの同定を図った。b) 診療実態では医師からは診療方針や紹介先の存在等、患者からは受診先選定において経験した困難等を調査すると共に、診療報酬関連データやがん登録等、既存の電子化データを併せて検証した。c) 診療施設集約化の影響は、実際の院内がん登録から得た希少がんの発生データを元にして、診療施設が限られることによる交通費・移動時間などの患者負担の増加についての推定や、期待される治療成績向上なども文献やデータによるシミュレーションにより検討した。次にその結果を関係者によるワークショップなどで、議論を重ねることで具体的な定義や対策を明確化し提言した。そこで明らかになった新たな課題については、追加で調査した。
結果と考察
専門医へのアンケートや意見調査を集約して、人口10万人あたり年間発生3~6例あたりに基準があると考えられた。また病理専門医アンケートからは希少性だけでは診断の困難性が決まらないとの意見も聞かれた。一般人対象の意識調査では、約半数が集約化するべき、都道府県間の治療内容に格差があると答えた。その反面、通院時間への要求水準は高くみられた。平成28年度は、四肢軟部肉腫を対象に専門施設として公開すべき情報(症例数など)を同定し、専門家などともに一定の合意をえることができた。ワークショップ等で我が国における集約化と患者アウトカム向上に関するデータの不足、集約化につながる情報の公開の徹底という2点が繰り返し指摘されたことから、対策として協力施設を募ってガイドライン推奨実施率の詳細データ収集や施設規模―アウトカムの検証や、公開すべき情報の収集を行った。
結論
希少がん対策を正しい方向へデータに基づいて検討できるように、様々なデータを提供してきた。今後も、希少がんの検討が進行していくのに合わせて、様々なデータ源を活用してエビデンスを生み出すことを旨としていく。

公開日・更新日

公開日
2017-06-23
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201607019C

成果

専門的・学術的観点からの成果
まず希少がんの定義を臨床現場の医師の意見・感覚を調査して定量化することにより、10万人あたり年間発生6例未満という基準に根拠を与えた。これにより希少がんの範囲が明確となり、希少がんの議論をするための基礎ができた。また、GISをつかった通院距離のシミュレーションなど、データを元にした政策計画の実例を示すことに成功したことには専門的・学術的な成果と言える。また、AYA世代のがんの種類別頻度などを表したことで、今後の議論の基礎を提供した。
臨床的観点からの成果
脳腫瘍の家族の特徴的なニーズを導出したことで、症状の大きく動く脳腫瘍ならではの早期からの見通しの必要性や介護の必要性の認識などを喚起する結果が得られたことは臨床現場へ還元可能であると考えられる。
ガイドライン等の開発
診療ガイドラインに関しては特に関係ないが、希少がん対策ワーキンググループ四肢軟部肉腫分科会の計画する、「専門施設情報公開プログラム」において、専門施設のあるべき症例数条件などを設定する際に参考とされた。
その他行政的観点からの成果
厚生労働省「希少医療・支援のあり方に関する検討会」平成27年3月において、上記の臨床現場における「希少がん」の定義に関する調査結果を示し、検討会において頻度の基準や、政策的な対応の必要性についての考慮をすべきであるとの現場の意見を反映させた。また、希少がん対策ワーキンググループの四肢軟部肉腫分科会、眼腫瘍分科会において、継続的に施設あたりの症例数やその年次を超えた安定性などのデータをしめし、具体的にデータに基づく議論をおこなっていくことに貢献した。
その他のインパクト
骨軟部腫瘍医療の集約化を考えるシンポジウム(平成27年12月5日)を行った。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
20件
その他論文(英文等)
78件
学会発表(国内学会)
9件
学会発表(国際学会等)
6件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2017-06-23
更新日
2018-06-15

収支報告書

文献番号
201607019Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,808,000円
(2)補助金確定額
4,799,000円
差引額 [(1)-(2)]
9,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,594,559円
人件費・謝金 1,350,213円
旅費 209,460円
その他 536,060円
間接経費 1,109,000円
合計 4,799,292円

備考

備考
学会参加時の旅費が予定より少額であったため。(自己資金:292円)

公開日・更新日

公開日
2017-10-24
更新日
-