働くがん患者の職場復帰支援に関する研究-病院における離職予防プログラム開発評価と企業文化づくりの両面から

文献情報

文献番号
201607017A
報告書区分
総括
研究課題名
働くがん患者の職場復帰支援に関する研究-病院における離職予防プログラム開発評価と企業文化づくりの両面から
課題番号
H26-がん政策-一般-018
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 都(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策情報センター がんサバイバーシップ支援部)
研究分担者(所属機関)
  • 西田 俊朗(国立がん研究センター中央病院)
  • 森 晃爾(産業医科大学・産業生態科学研究所)
  • 坂本 はと恵(国立がん研究センター東病院 サポーティブケア室)
  • 坪井 正博(国立がん研究センター東病院 呼吸器外科)
  • 山中 竹春(横浜市立大学大学院医学研究科 臨床統計学)
  • 錦戸 典子(東海大学健康科学部 産業保健看護学)
  • 青儀 健二郎(独立行政法人国立病院機構四国がんセンター・乳腺・内分泌外科)
  • 立道 昌幸(東海大学医学部 基盤診療学系公衆衛生学)
  • 堀之内 秀仁(国立がん研究センター中央病院 呼吸器内科)
  • 宮下 光令(東北大学大学院医学系研究科 保健学専攻緩和ケア看護学)
  • 西田 豊昭(中部大学 経営情報学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
8,647,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、研究代表者による過去2期の研究班において開発した各種教材を充実させるとともに、医療機関で実施する離職予防プログラムの開発、さらに、企業におけるがん就労者支援の体制整備に向けた研修プログラムの開発、さらにそれらに資する各種調査の実施を目的とした。
研究方法
H28年度は以下の8プロジェクトを実施した。
①がん診断後から離職までの時間に対する要因分析:H27年度横断的観察研究のデータを用いて、診断後から離職までの時間の関連要因を分析した。
②がん患者の離職実態調査(前向き観察研究):H27年度に開始した前向き観察研究を継続実施した。
③「がん就労者のための症状別対応のヒント集」β版への評価コメントと追加事例の収集:H27年度に作成したβ版への評価と追加事例収集を実施した。
④「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」の普及に向けた企業向け研修プログラム立案と教材開発:平成28年2月に厚労省が公開した同ガイドラインを全国の企業に普及させるための研修を立案し、レッスンプラン・投影用スライド(講師用説明テキストつき)・受講者用テキスト・受講者アンケートの4点の教材から成る研修パッケージを作成した。
⑤がん治療スタッフ向け「治療と職業生活の両立支援ガイドブック」の開発:治療医ヒアリングにより両立支援における治療医側の疑問点を明らかにし、がん治療に携わる医療者が、就労継続を希望する患者を支援するためのガイドブックを開発した。
⑥中小企業における両立支援のあり方と支援ツールの開発:都内7社の経営者・人事労務担当者のインタビューを実施し、中小企業の両立支援のポイント6領域24項目を抽出。それにもとづき、中小企業における両立支援度レーダーチャート作成と各項目の重要性の解説からなる支援ツールを開発。
⑦愛媛県におけるがん患者就労支援に向けた中小企業と基幹病院の連携の試み:四国がんセンターと愛媛県内の書店の管理職62名を対象として、がんセンタースタッフによる社内セミナーを実施した。
⑧一般市民向け情報発信: 日本対がん協会と共催でオープン参加シンポジウム「がんサバイバーシップシンポジウム2016」を開催。
結果と考察
以下の番号は研究方法と対応する。
①がん診断後から離職までの時間に対する男女共通の関連要因,女性に特化した関連要因が示された。
②がん患者の離職実態調査(前向き観察研究):H27年度に開始した前向き観察研究を継続実施した。登録6か月後の結果では、約18%の患者が離職ないし離職を考慮していた。支援ニーズの時間的変遷も明らかになった。
③β版は「就労場面での対応にとても/やや役立つ」95.5%、「がん患者のニーズにとても/やや合致している」93.2%という評価が得られ、追加収集事例も加えた最終版を作成中である。
④研修パッケージは労働者安全衛生機構が主催する企業向けガイドライン周知研修の教材として採用が決定した。
⑤総論と16のQ&Aと7のコラムからなるガイドブックを作成し研究班サイトで公開した。
⑥中小企業向け支援ツールを研究班サイトで公開した。
⑦セミナーは、日本のがん統計と政策、県内の相談窓口情報、映像教材による学習、小グループ討論からなり、参加者の好評を得て同社他地区への展開が決定した。
⑧148名の参加を得た。
今後、患者・医療者・企業向けの支援ツールならびに研修教材等としての活用が期待される。
結論
H28年度に予定した8プロジェクトは予定どおり実施した。本研究班では、患者、医療者、企業関係者に向けた実態調査に基づき、それぞれに向けた複数の支援ガイドブックや研修プログラムを開発・評価して公開した。当初予定していた「医療機関で実施する研修プログラム」開発については、がん治療を担う医療機関の条件(設立母体、がん患者の割合、マンパワー、地域が得られる院外のサポート資源等)がさまざまであることから、特定のプログラムの均てん化よりも、各施設で無理なく実施できるアクションチェックリストを検討する方向性のほうが適切という結論に至った。本研究班の知見を活かして、H29年度からの3年プロジェクトでアクションチェックリストを作成する予定である。

公開日・更新日

公開日
2017-06-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-06-23
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201607017B
報告書区分
総合
研究課題名
働くがん患者の職場復帰支援に関する研究-病院における離職予防プログラム開発評価と企業文化づくりの両面から
課題番号
H26-がん政策-一般-018
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 都(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策情報センター がんサバイバーシップ支援部)
研究分担者(所属機関)
  • 西田 俊朗(国立がん研究センター中央病院)
  • 森 晃爾(産業医科大学・産業生態科学研究所)
  • 坂本 はと恵(国立がん研究センター東病院 サポーティブケア室)
  • 坪井 正博(国立がん研究センター東病院 呼吸器外科)
  • 山中 竹春(横浜市立大学大学院医学研究科 臨床統計学)
  • 錦戸 典子(東海大学健康科学部 産業保健看護学)
  • 青儀 健二郎(独立行政法人国立病院機構四国がんセンター・乳腺・内分泌外科)
  • 立道 昌幸(東海大学医学部 基盤診療学系公衆衛生学)
  • 堀之内 秀仁(国立がん研究センター中央病院 呼吸器内科)
  • 宮下 光令(東北大学大学院医学系研究科 保健学専攻緩和ケア看護学)
  • 西田 豊昭(中部大学 経営情報学部)
  • 山本 精一郎(国立がん研究センターがん予防・検診研究センター 保健政策研究部)
  • 溝田 友里(国立がん研究センターがん予防・検診研究センター 保健政策研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、研究代表者による過去2期の研究班において開発した各種教材を充実させるとともに、医療機関で実施する離職予防プログラムの開発、さらに、企業におけるがん就労者支援の体制整備に向けた研修プログラムの開発、さらにそれらに資する各種調査の実施を目的とした。
研究方法
医療機関/患者向け、事業場向け、一般市民向けに以下のプロジェクトを実施した。
①医療機関で実施する離職予防プログラム立案に向けた介入研究の文献レビュー(2008年以降文献、キーワードはrehabilitation, intervention, cancer)を実施。
②働くがん患者を対象とした。2種の多施設調査(横断的観察研究、前向き観察研究)を実施。無記名自記式アンケートにより、医療施設と職場での就労支援実態,離職割合やそのタイミングと理由,情報支援ニーズの時間的変遷等を調査。
③働くがん患者のアンケート自由記述およびインタビュー調査に基づき「がんと仕事のQ&A改定2版」と「症状別職場対応のヒント集」β版を作成し、患者による評価を実施。
④医療者ヒアリングに基づき、医療者向け「治療と職業生活の両立支援ガイドブック」を作成。
⑤病者支援に関する企業8社のヒアリングを実施。
⑥都道府県主導で行われた「がんと就労」に関する調査の報告書レビューを実施。
⑦産業看護職向け研修:ガイドブックを用いた研修プログラムを実施し、前後と3か月後の効果を評価。さらに、産業看護職と人事担当者の合同プログラムの開発・評価を実施。
⑧企業向け研修の開発:ディープ・アクティブラーニング手法による人事向け一日研修プログラムを開発し、広島県内7社を対象としてH27年度にパイロット研修を実施。それをもとに、H28年度には厚生労働省「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」の普及に向けた企業向け研修を担う両立支援促進員のトレーナー研修パッケージを作成するとともに、パイロット研修を実施。
⑨中小企業向け両立支援ツールの開発:都内7社の経営者・人事担当者のインタビューから、中小企業の両立支援のポイント6領域24項目を抽出。それにもとづき、中小企業が自社の両立支援度をチェックするレーダーチャートと解説からなる支援ツールを開発。
⑩企業とがん専門病院連携研修の試み:四国がんセンターと愛媛県内の書店が連携し、がんセンター職員が企業管理職を教育するセミナーの実現可能性を検証。
⑪H26からH28年まで、日本対がん協会との共催でオープン参加のシンポジウムを3回開催。
結果と考察
以下の番号は研究方法と対応する。
①病院介入研究11文献では、いずれも有意な介入効果を認めなかった。
②横断的観察研究(有効回答950)および前向き観察研究(有効回答388)により、診断早期の離職者が多いことや離職までの時間の関連要因、さらに支援ニーズの時間的変遷が明らかになった
③Q&A集改定2版は研究班サイトで公開。ヒント集β版は9割以上の対象から「就労場面での対応に役立つ」「がん患者のニーズにと合致している」と評価された。
④総論と16のQ&Aと7のコラムからなるガイドブックを作成し研究班サイトで公開。
⑤企業規模による対応差やコスト負担が少ない対応策へのニーズが明らかになった。
⑥12都道県が調査報告書を公開していた。
⑦有効回答数40名。半数以上が、研修3か月後にもがん就労者への支援を提供。その86%が「研修が役立った」と評価。
⑧レッスンプラン・投影用スライド(講師用説明テキストつき)・受講者用テキスト・受講者アンケートの4点の教材から成る研修パッケージを作成。労働者安全衛生機構主催が主催する企業向けガイドライン周知研修の教材として採用が決定した。
⑨中小企業向け支援ツール(支援度判定レーダーチャートと各項目の重要性の解説)を研究班サイトで公開した。
⑩日本のがん統計と政策、県内の相談窓口情報、事例学習、小グループ討論からなるセミナーを実施。
⑪3年間で総計350名が参加し、H27年シンポ記録は日本対がん協会サイトで、H28年は研究班サイトで公開。
結論
本研究班では、患者、医療者、企業関係者に向けた実態調査に基づき、それぞれに向けた複数の支援ガイドブックや研修プログラムを開発・評価して公開した。当初予定していた「医療機関で実施する研修プログラム」開発については、がん治療を担う医療機関の条件(設立母体、がん患者の割合、マンパワー、地域が得られる院外のサポート資源等)がさまざまであることから、特定のプログラムの均てん化よりも、各施設で無理なく実施できるアクションチェックリストを検討する方向性のほうが適切という結論に至った。本研究班の知見を活かして、H29年度からの3年プロジェクトでアクションチェックリストを作成する予定である。

公開日・更新日

公開日
2017-06-23
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201607017C

収支報告書

文献番号
201607017Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
11,241,000円
(2)補助金確定額
11,238,000円
差引額 [(1)-(2)]
3,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,247,503円
人件費・謝金 3,780,035円
旅費 1,440,338円
その他 2,176,925円
間接経費 2,594,000円
合計 11,238,801円

備考

備考
千円未満の端数(801円)は自己資金により支出を行った。

公開日・更新日

公開日
2017-11-30
更新日
-