小児・若年がん長期生存者に対する妊孕性のエビデンスと生殖医療ネットワーク構築に関する研究

文献情報

文献番号
201607015A
報告書区分
総括
研究課題名
小児・若年がん長期生存者に対する妊孕性のエビデンスと生殖医療ネットワーク構築に関する研究
課題番号
H26-がん政策-一般-016
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
三善 陽子(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科、小児科学)
研究分担者(所属機関)
  • 左合 治彦(国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター)
  • 鈴木 直(聖マリアンナ医科大学 医学部、産婦人科学)
  • 岡田 弘(獨協医科大学越谷病院 泌尿器科)
  • 清水 千佳子(国立がん研究センター中央病院 乳腺・腫瘍内科)
  • 加藤 友康(国立がん研究センター中央病院 婦人腫瘍科)
  • 藤崎 弘之(大阪市立総合医療センター 小児血液腫瘍科)
  • 松本 公一(国立成育医療研究センター  小児がんセンター)
  • 河本 博(国立がん研究センター東病院 小児腫瘍科)
  • 大庭 真梨(斉藤 真梨)( 東邦大学医学部医学科 社会医学講座医療統計学分野)
  • 瀧本 哲也(国立成育医療研究センター 小児がん登録室)
  • 加藤 雅志(国立がん研究センター がん対策情報センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
5,313,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者辞退 研究者氏名:河本博 辞退年月日:平成28年8月31日 辞退理由:国立がん研究センターを退職したため

研究報告書(概要版)

研究目的
小児・若年がんの治療成績向上に伴い長期生存者(キャンサーサバイバー)が増加している。がんの治療後には様々な晩期合併症のリスクがあり、妊孕性が低下する患者も少なくない。患者は自らの社会生活のQOLに関わる妊娠出産・挙児に関する適切な情報と医療サービスを求めている。しかし本邦ではその実態が把握されておらず、挙児希望の患者を適切に評価し、必要に応じて医療的・心理的に支援するシステムが確立していない。平成28年度に本研究班は、小児・Adolescent and Young Adult(AYA)世代のがん患者に対する情報提供と相談支援、各種実態調査に基づく新規エビエンス形成、生殖医療ネットワークへの橋渡しにより、妊孕性温存から治療後に健康な挙児を得るまでの連続した医療サービス提供と生殖医療ガイドラインの基盤作成を目的に、以下の研究を倫理面に配慮して実施した。
研究方法
1、小児・若年がん患者のニーズに即した医療サービス提供
(1)生殖医療ネットワークの発展
(2)ポータルサイト「小児・若年がんと妊娠」の充実
(3)がん診療拠点病院における生殖医療連携のモデル作り
(4)情報提供と相談支援のあり方の検討と相談窓口の運営
(5)日本のがん・生殖医療(Oncofertility)の発展に向けた国際交流
2、小児・若年がん患者の性腺機能と妊孕性に関する新規エビデンスの形成
(1)小児・若年がん患者の性腺機能と妊孕性に関する実態調査
①日本小児内分泌学会理事・評議員対象「小児・若年がん患者に対する生殖医療に関するアンケート調査」二次調査
②産科医(周産期医療連絡協議会の会員)対象のCCS女性における妊娠・分娩の実態調査
③血液腫瘍の男性がん患者の妊孕性温存に関する実態調査
④がん患者を診療する医師の「妊孕性に関する話し合い」に対する意識調査
⑤小児がん拠点病院におけるフォローアップの実態調査
⑥若年がん患者へのアンケート調査
(2)CCS女性を対象とした性腺機能・妊孕性に関する多施設前向きコホート研究(pilot study)
(3)若年早期乳癌患者に対する生殖技術の安全性および治療後の妊孕性に関するデータベース構築に関するパイロット研究
(4)妊孕性温存を目的とした未熟精巣組織と精子凍結保存法の確立に関する研究
結果と考察
小児・若年がん患者の性腺機能と妊孕性の問題に取り組む本研究により、我が国の医療現場の実態が把握され、様々な問題点が抽出された(詳細は報告書参照)。とりわけ小児・AYA世代の患者においては肉体的・精神的・社会的な未熟性、希少がんの種類と治療の多様性、患者に対する説明と理解度の差、治療と晩期合併症の時間的隔たり、医療の急速な進歩、地域や施設による医療格差などの問題があり、診療科間の連携と情報共有の必要性が示された。性腺障害のリスクに応じた妊孕性温存療法から、治療後の長期フォローアップ体制の充実、そして挙児希望者に対する生殖補助医療から妊娠分娩管理まで、連続した医療サービスの提供に貢献した。
結論
小児とAYA世代がん患者の診療にかかわるヘルスケアプロバイダーが連携した我々の取り組みは、今後我が国のがん診療においてロールモデルになると考えられる。日本全体の小児・若年がん患者の妊孕性に関する円滑な診療体制構築に向けて、生殖医療ネットワークの更なる発展が望まれる。

公開日・更新日

公開日
2017-06-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2017-06-23
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201607015B
報告書区分
総合
研究課題名
小児・若年がん長期生存者に対する妊孕性のエビデンスと生殖医療ネットワーク構築に関する研究
課題番号
H26-がん政策-一般-016
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
三善 陽子(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科、小児科学)
研究分担者(所属機関)
  • 左合 治彦(国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター)
  • 鈴木 直(聖マリアンナ医科大学・医学部 産婦人科学)
  • 岡田 弘(獨協医科大学越谷病院 泌尿器科)
  • 清水 千佳子(国立がん研究センター中央病院 乳腺・腫瘍内科)
  • 加藤 友康(国立がん研究センター中央病院 婦人腫瘍科)
  • 藤崎 弘之(大阪市立総合医療センター 小児血液腫瘍科)
  • 松本 公一(国立成育医療研究センター 小児がんセンター)
  • 河本 博(国立がん研究センター東病院 小児腫瘍科)
  • 大庭 真梨(斉藤 真梨) (東邦大学医学部医学科 社会医学講座医療統計学分野)
  • 瀧本 哲也(国立成育医療研究センター 小児がん登録室)
  • 加藤 雅志(国立がん研究センター がん対策情報センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がんの治療後には様々な晩期合併症のリスクがあるため長期フォローアップが重要である。その中でも治療に伴う妊孕性低下は小児・若年がん患者のサバイバーシップに大きな影響を与えており、患者は適切な情報と医療サービスを求めている。しかし我が国ではその実態が把握されておらず、挙児希望のがん患者を適切に評価して必要に応じて医療的・心理的に支援する体制が確立していない。そこで小児・若年がん患者の妊孕性を支援する本研究班は、妊孕性温存療法からがんの治療後に健康な挙児を得るまでの連続した生殖医療サービス提供を目的として、倫理面に配慮して以下の研究をおこなった。
研究方法
1、小児・若年がん患者のニーズに即した医療サービス提供
(1)生殖医療ネットワークの構築と発展
(2)ポータルサイトやパンフレット等による情報提供
(3)がん診療拠点病院における生殖医療連携のモデル作り
(4)情報提供と相談支援のあり方の検討と相談窓口の開設
(5)日本のOncofertilityの発展に向けた国際交流
2、小児・若年がん患者の性腺機能と妊孕性に関するエビデンスの形成
(1)小児・若年がん患者の性腺機能と妊孕性に関する実態調査
①日本小児内分泌学会理事・評議員対象「小児・若年がん患者に対する生殖医療に関するアンケート調査」一次調査、二次調査
②産科医(周産期医療連絡協議会の会員)対象のCCS女性における妊娠・分娩の実態調査
③血液腫瘍の男性がん患者の妊孕性温存に関する実態調査
④がん患者を診療する医師の「妊孕性に関する話し合い」に対する意識調査
⑤小児がん拠点病院におけるフォローアップの実態調査
⑥若年がん患者のアンケート調査
(2)CCS女性を対象とした性腺機能・妊孕性に関する多施設前向きコホート研究(pilot study)
(3)若年早期乳癌患者に対する生殖技術の安全性および治療後の妊孕性に関するデータベース構築に関するパイロット研究
(4)小児・若年がん患者における妊孕性温存療法に関する研究
結果と考察
平成26年度から28年度にかけて小児・若年がん患者の妊孕性に関する様々な問題に取り組んだ本研究により、我が国の医療現場の実態が明らかとなり、様々な問題点が抽出された(詳細は報告書参照)。幅広い診療科と職種からなる生殖医療ネットワーク構築、医療者と患者・家族への情報提供、相談支援体制の整備、各種の実態調査に基づく新規エビエンスの形成、生殖医療ガイドラインの基盤作成をおこなった。性腺障害のリスクに応じた妊孕性温存療法から、長期フォローアップ体制の充実、挙児希望例に対する生殖医療ネットワークへの橋渡しから妊娠分娩管理に至るまでの連続した医療サービス提供に貢献した。
結論
小児とAYA世代がん患者の診療にかかわるヘルスケアプロバイダーの啓発をめざす我々の取り組みは、今後我が国においてロールモデルになると考えられる。日本全体の小児・若年がん患者の妊孕性に関する診療体制構築に向けて、生殖医療ネットワークの更なる発展が望まれる。

公開日・更新日

公開日
2017-06-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2017-06-23
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201607015C

成果

専門的・学術的観点からの成果
小児・若年がんサバイバーの性腺機能と妊孕性に関する問題に取り組む本研究により、我が国の医療現場の実態が把握され、様々な問題点と課題が抽出された。診療科と職種を超えた生殖医療ネットワークの構築、医療者と患者・家族への情報提供と相談窓口の開設、各種の実態調査に基づく新規エビエンス形成により、小児・若年がん患者の性腺機能と妊孕性に関するガイドラインの基盤作成と診療の発展に貢献した。
臨床的観点からの成果
小児・AYA世代がん患者の診療にかかわるヘルスケアプロバイダーの啓発をめざす我々の取り組みは、今後我が国におけるロールモデルになると考えられる。作成したパンフレット(男性および女性がん患者向け、がん専門相相談員向け)は全国のがん診療連携拠点病院の相談室に発送すると共に、研究班ホームページ「小児・若年がんと妊娠」で公開し、自由にダウンロード可能とした。がん患者向けの英文パンフレットも作成し公開した。
ガイドライン等の開発
日本癌治療学会に設立された「日本癌治療学会がん診療ガイドライン作成・改訂委員会小児思春期,若年がん患者の妊孕性温存に関するガイドライン作成ワーキンググループ」(委員長:青木大輔)に、鈴木直(副委員長:産婦人科)、岡田弘(泌尿器)、三善陽子(小児がん、脳腫瘍)、清水千佳子(乳がん)が参加した。
その他行政的観点からの成果
がんの治療前に卵子や精子、受精卵などを凍結保存する「妊孕性温存療法」が、2021年4月より助成の対象となることが決定した。
その他のインパクト
「がんと生殖に関するシンポジウム2015~小児・若年がん患者さんの妊孕性温存について考える~」(2015年2月8日、担当:三善陽子)、「がんと生殖に関するシンポジウム2016~男性がんと生殖機能の温存を考える~」(2016年2月7日、担当:岡田弘)、「がんと生殖に関するシンポジウム2017~乳がん患者の妊娠・出産―エビデンスから実践へー」(2017年3月5日、担当:清水千佳子)を開催した。2017年12月29日朝日新聞<患者を生きる>で研究班の活動が紹介された。

発表件数

原著論文(和文)
4件
原著論文(英文等)
17件
その他論文(和文)
33件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
67件
学会発表(国際学会等)
20件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
がんの治療前に卵子や精子、受精卵などを凍結保存する「妊孕性温存療法」が、2021年4月より助成の対象となることが決定した。
その他成果(普及・啓発活動)
4件
①ホームページ「小児・若年がんと妊娠」を開設した。②シンポジウム・研修会を開催した。③相談窓口を開設した。④妊孕性連携のためのパンフレット(若年がん患者向け、乳がん患者向け、相談員向け)を作成した。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Miyoshi Y, Yorifuji T, Horikawa R, et al
Gonadal function, fertility, and reproductive medicine in childhood and adolescent cancer patients: a national survey of Japanese pediatric endocrinologists.
Clin Pediatr Endocrinol , 25 (2) , 45-57  (2016)
10.1297/cpe.25.45.
原著論文2
Miyoshi Y, Yorifuji T, Horikawa R, et al
Childbirth and fertility preservation in childhood and adolescent cancer patients: a second national survey of Japanese pediatric endocrinologists.
Clin Pediatr Endocrinol , 26 (2) , 81-88  (2016)
10.1297/cpe.26.81.
原著論文3
Takeuchi E, Kato M, Wada S, et al
Physicians’ practice of discussing fertility preservation with cancer patients and the associated attitudes and barriers
Supportive Care in Cancer , 25 (4) , 1079-1085  (2017)
10.1007/s00520-016-3495-5
原著論文4
Kobayashi T, Shin T, Nishio K, et al
A questionnaire survey on attitude toward sperm cryopreservation among hematologists in Japan.
Int J Hematol , 105 (3) , 349-352  (2017)
10.1007/s12185-016-2134-8
原著論文5
Sekiguchi M, Miyoshi Y, Kikuchi N, et al
Pregnancy outcomes in female childhood cancer survivors: Nationwide survey in Japan
Pediatr Int , 60 (3) , 254-258  (2018)
10.1111/ped.13483
原著論文6
Takeuchi E, Kato M, Miyata K, et al
The effects of an educational program for non-physician health care providers regarding fertility preservation
Support Care Cancer , 26 (10) , 3447-3452  (2018)
10.1007/s00520-018-4217-y
原著論文7
Kitano A, Shimizu C, Yamauchi H, et al.
Factors associated with treatment delay in women with primary breast cancer who were referred to reproductive specialists
ESMO Open , 4 (2)  (2019)
10.1136/esmoopen-2018-000459

公開日・更新日

公開日
2021-05-28
更新日
-

収支報告書

文献番号
201607015Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,906,000円
(2)補助金確定額
6,906,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,333,508円
人件費・謝金 1,821,278円
旅費 910,422円
その他 1,247,859円
間接経費 1,593,000円
合計 6,906,067円

備考

備考
・自己資金67円

公開日・更新日

公開日
2017-10-25
更新日
-