全国がん登録、院内がん登録および既存がん統計情報の活用によるがん及びがん診療動向把握に関する包括的研究

文献情報

文献番号
201607012A
報告書区分
総括
研究課題名
全国がん登録、院内がん登録および既存がん統計情報の活用によるがん及びがん診療動向把握に関する包括的研究
課題番号
H26-がん政策-一般-013
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
西本 寛(国立研究開発法人 国立がん研究センター がん登録センター)
研究分担者(所属機関)
  • 松田智大(国立研究開発法人 国立がん研究センター がん登録センター )
  • 伊藤秀美(愛知県がんセンター 研究所疫学・予防 部)
  • 歌田真依((公財)放射線影響研究 所疫学部)
  • 大木いずみ(栃木県立がんセンタ ーがん予防情報相談部)
  • 宮代 勲((地独)大阪府立病院機構大阪府 立成人病センターが ん予防情報センター 企画調査課)
  • 西野善一(金沢医科大学医学部 公衆衛生学)
  • 加茂憲一(札幌医科大学医療人 育成センター)
  • 伊藤ゆり((地独)大阪府立病院機構大阪府 立成人病センターが ん予防情報センター 疫学予防課)
  • 片野田耕太(国立研究開発法人 国立がん研究センター がん登録センター )
  • 斎藤博(国立研究開発法人 国立がん研究センター  社会と健康研究センター 検診研究部)
  • 柴田亜希子(国立研究開発法人 国立がん研究センター がん登録センター )
  • 海崎 泰治(福井県立病院 病理診断科 )
  • 増田 昌人(琉球大学医学部附属病院 がんセンター)
  • 平田 公一(札幌医科大学消化器・総合)
  • 松本 公一(国立成育医療研究センター 小児がんセンター)
  • 川井 章(国立研究開発法人 国立がん研究センター 中央病院・希少がんセンター・骨軟部腫瘍科)
  • 東 尚弘(国立研究開発法人 国立がん研究センター がん臨床情報部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
16,180,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
先進国では、がん罹患・死亡動向の正確な実態と予測が定期的にまとめられ、有効活用されている。都道府県がん登録と院内がん登録との連携強化と、既存の大規模がん統計資料との併用による詳細ながん診療実態把握により、今後求められる、都道府県がん登録と全国がん登録体制との連動を、正しい方向で実現することを目的とする。
研究方法
都道府県がん登録(地域がん登録)の精度管理と全国がん登録への移行
1)47都道府県に1993年あるいは2003年以降のがん罹患個別匿名データ提供を依頼、一定の精度基準を満たすデータより2013年の罹患数・率推計をする。
2)都道府県がん登録作業の更なる標準化や作業精度の向上、電子化等の効率化、標準的ながん対策への活用方法、及び将来的な全国がん登録と都道府県がん登録の連携を検討する。
3)第3次対がんにおいて定めた、都道府県がん登録における「目標と基準」8項目を米国を初めとする諸外国に倣い改訂し「新精度管理基準」策定する。
B) 都道府県がん登録と院内がん登録全国集計データを用いたがん診療実態の把握
1)都道府県がん登録データと、国立がん研究センター実施の院内がん登録全国集計データを比較分析し、がん診療実態把握を進める。
2)院内がん登録全国集計データを、がん診療連携拠点病院と、県指定拠点病院、その他医療機関別に集計し、データの傾向や、症例分布の分析により、それぞれの医療機関内の院内がん登録体制や、受療患者群の特性を県別に把握し、都道府県がん登録の精度向上に役立てる。
C) 都道府県がん登録と既存がん統計の併用によるがん登録資料活用
1)がん関連公的統計資料から取得できるがん診療情報を整理し、将来的なリンケージを想定して、問題点を抽出する。
2)全国がん登録体制でのがん登録データと検診データとの照合による精度管理を見据え、継続的で一般適用可能な評価手法を検討する。
D)がん登録資料を効果的にがん対策に活用する統計手法の検討
1)がん対策の効果的な企画立案・評価に資するがん罹患・死亡・生存率の表現方法を検討する。がん患者や一般国民にとって直感的に理解できる形式を考案する。
2)最新の統計モデル手法を用いて、がん登録情報に対して、将来推計や、場合分けをしたがん診療実態シミュレーションを実施し、国や都道府県のがん対策に活用する。
E)がん登録データの利用と提供に関する研究
1)研究者と国民の双方の理解が得られる全国がん登録情報の提供の在り方を検討する
2)がん患者やその家族を対象として、質問紙作成のためのフォーカスグループ研究を行い、がん登録データの利用と提供に関する問題点を明らかにする。
3)一般国民の捉え方を数量化するために、質問紙調査を実施する。
結果と考察
全国がん罹患モニタリング集計は、カバー範囲を全国に拡大し、高精度のがん罹患統計を作成し、生存率集計も、かつてない規模で実施することができた。全国がん登録体制の準備段階時期に、精度管理目標値を高めたことにより、より質の高いがん登録データの整備が期待される。拠点病院受診割合は、地域によって異なると考えられるため、拠点病院での属性、部位、進展度の状況を明らかにした。拠点病院診療症例の患者特性を明らかにすることは拠点病院全国集計値のわが国のがん患者全体における代表性を考察する上で重要である。がん対策の推進に活用できるよう、がん生存率の府県格差、競合リスクを考慮したがん患者のがん累積死亡率の推定を行った。人口動態死亡票の利用により、がん患者の死因に関する研究を行った。がん登録推進法が想定する、対策型検診の精度評価の感度、特異度等の算出には、がん登録データと検診データの照合が必要である。自治体事業としての精度管理評価事例はないため、青森県、栃木県、和歌山県で事業を試行した。高精度地域を対象としたがん罹患データの分析は、年次推移の分析及び、小児がんの集計を行った。がん死亡が罹患から発生する二項分布モデルを仮定し、がん罹患数の区間推定を行った。研究者等に全国がん登録の匿名化情報が提供されることを国民はどう思うかについて適切な調査票の開発を目的とするフォーカスグループインタビューを行い、意識調査を行った。匿名化されたがん登録情報を断りなく研究に提供利用されることについて、不快、不安や心配の気持ちをあまり持たない人が、持つ人を上回った。
結論
開始された全国がん登録への移行に関して、様々な要因を考慮した提案をすることが出来た。全国がん登録では、積極的なデータの利用と提供が推奨されているが、一般国民の心情を酌んで、慎重に取り扱わなくてはならない。先進国では、がん罹患・死亡動向の正確な実態と予測が定期的にまとめられ、有効活用されている。がん統計は、ニーズにあわせ、最新の方法を適用し、社会に還元する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2017-06-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-06-23
更新日
2018-06-28

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201607012B
報告書区分
総合
研究課題名
全国がん登録、院内がん登録および既存がん統計情報の活用によるがん及びがん診療動向把握に関する包括的研究
課題番号
H26-がん政策-一般-013
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
西本 寛(国立研究開発法人 国立がん研究センター がん登録センター)
研究分担者(所属機関)
  • 松田智大(国立研究開発法人 国立がん研究センター がん登録センター )
  • 伊藤秀美(愛知県がんセンター 研究所疫学・予防 部)
  • 歌田真依((公財)放射線影響研究 所疫学部)
  • 大木いずみ(栃木県立がんセンタ ーがん予防情報相談部)
  • 宮代 勲((地独)大阪府立病院機構大阪府立成人病センターが ん予防情報センター 企画調査課)
  • 西野善一(金沢医科大学医学部 公衆衛生学)
  • 加茂憲一(札幌医科大学医療人育成センター)
  • 伊藤ゆり((地独)大阪府立病院機構大阪府立成人病センターが ん予防情報センター 疫学予防課)
  • 片野田耕太(国立研究開発法人 国立がん研究センター がん登録センター )
  • 斎藤博(国立研究開発法人 国立がん研究センター  社会と健康研究センター 検診研究部)
  • 柴田亜希子(国立研究開発法人 国立がん研究センター がん登録センター )
  • 海崎 泰治(福井県立病院 病理診断科 )
  • 増田 昌人(琉球大学医学部附属病院 がんセンター)
  • 平田 公一(札幌医科大学消化器・総合)
  • 松本 公一(国立成育医療研究センター 小児がんセンター)
  • 川井 章(国立研究開発法人 国立がん研究センター 中央病院・希少がんセンター・骨軟部腫瘍科)
  • 東 尚弘(国立研究開発法人 国立がん研究センター がん臨床情報部)
  • 小笹晃太郎((財)放射線影響研究所)
  • 雑賀公美子(国立研究開発法人 国立がん研究センター  社会と健康研究センター 検診研究部)
  • 堀芽久美(国立研究開発法人 国立がん研究センター がん登録センター )
  • 橋本修二(藤田保健衛生大学医学部衛生学講座)
  • 新野真理子(国立研究開発法人 国立がん研究センター がん登録センター )
  • 固武 健二郎(栃木県立がんセンター・研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
都道府県がん登録と院内がん登録との連携強化と、既存の大規模がん統計資料との併用による詳細ながん診療実態把握により、今後求められる、都道府県がん登録と全国がん登録体制との連動を、正しい方向で実現することを目的とする。第3次対がん10か年総合戦略では実現できていない詳細な精度管理方法とデータ分析手法を突き詰め、具体的に考慮されていないがん登録データと既存データを併用したがんの実態把握方法の確立を目指す。
研究方法
都道府県がん登録の精度管理と全国がん登録への移行
1)47都道府県に1993年あるいは2003年以降のがん罹患個別匿名データ提供を依頼、一定の精度基準を満たすデータより2011、2012、2013年の罹患数・率推計、及び2006-8年の生存率集計をする。
2)都道府県がん登録作業の更なる標準化や作業精度の向上、電子化等の効率化、標準的ながん対策への活用方法、及び将来的な全国がん登録と都道府県がん登録の連携を検討する。
3)第3次対がんにおいて定めた、都道府県がん登録における「目標と基準」8項目を米国を初めとする諸外国に倣い改訂し「新精度管理基準」策定する。
B) 都道府県がん登録と院内がん登録全国集計データを用いたがん診療実態の把握
1)都道府県がん登録データと、国立がん研究センター実施の院内がん登録全国集計データを比較分析し、がん診療実態把握を進める。
2)院内がん登録全国集計データを、がん診療連携拠点病院と、県指定拠点病院、その他医療機関別に集計し、データの傾向や、症例分布の分析により、それぞれの医療機関内の院内がん登録体制や、受療患者群の特性を県別に把握し、都道府県がん登録の精度向上に役立てる。
C) 都道府県がん登録と既存がん統計の併用によるがん登録資料活用
1)がん関連公的統計資料から取得できるがん診療情報を整理し、将来的なリンケージを想定して、問題点を抽出する。
2)全国がん登録体制でのがん登録データと検診データとの照合による精度管理を見据え、継続的で一般適用可能な評価手法を検討する。
D)がん登録資料を効果的にがん対策に活用する統計手法の検討
1)がん対策の効果的な企画立案・評価に資するがん罹患・死亡・生存率の表現方法を検討する。がん患者や一般国民にとって直感的に理解できる形式を考案する。
2)最新の統計モデル手法を用いて、がん登録情報を国や都道府県のがん対策に活用する。
E)がん登録データの利用と提供に関する研究
研究者と国民の双方の理解が得られる全国がん登録情報の提供の在り方を検討する。
結果と考察
全国がん罹患モニタリング集計は、カバー範囲を全国に拡大し、高精度のがん罹患統計を作成し、生存率集計も、かつてない規模で実施することができた。全国がん登録体制の準備段階時期に、精度管理目標値を高めたことにより、より質の高いがん登録データの整備が期待される。拠点病院受診割合は、地域によって異なるため、拠点病院での属性、部位、進展度の状況を明らかにした。拠点病院診療症例の患者特性を明らかにすることは拠点病院全国集計値の代表性を考察する上で重要である。がん対策の推進に活用できるよう、がん生存率の府県格差、競合リスクを考慮したがん患者のがん累積死亡率の推定を行った。人口動態死亡票の利用により、がん患者の死因に関する研究を行った。小児がん患者の治療の詳細情報を病院に遡って収集し、生存解析を行った。がん登録推進法が想定する、対策型検診の精度評価の感度、特異度等の算出には、がん登録データと検診データの照合が必要である。自治体事業としての精度管理評価事例はないため、青森県、栃木県、和歌山県で事業を試行した。高精度地域を対象としたがん罹患データの分析は、年次推移の分析及び、小児がんの集計を行った。がん登録における登録率の推定法、リスク曲面を用いた、がんリスクの表現、都道府県別がん罹患数の区間推定を行った。研究者等に全国がん登録の匿名化情報が提供されることを国民はどう思うかについて適切な調査票の開発を目的とするフォーカスグループインタビューを行い、意識調査を行った。
結論
全国がん登録体制の早い段階で全国レベルでの質の高いがん統計が整備された。正確ながん統計を、国と都道府県、都道府県間で比較することが可能となり、がん対策の企画・評価に寄与した。また、都道府県がん登録と院内がん登録とが連携を強化することにより、がん診療の実態を把握し、国と都道府県、医療機関の役割を整理することができた。既存がん統計資料との将来的なリンケージ等の方向性を示すことで、クリアすべき法的、制度的課題を浮き彫りとなった。既存の集計方法や統計値を刷新し、解析結果を患者や一般国民が利用しやすい形で公開することにより、がん難民問題の解消と、地域に密着した政策判断に寄与した。

公開日・更新日

公開日
2017-06-23
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201607012C

成果

専門的・学術的観点からの成果
がん罹患率の推定、特に希少がんや小児がんなどにおける推定は、わが国の特性を含めて学術的な意義が大きく、今後の全国がん登録による罹患率算定への基盤的情報となるものと考えられる。なお、このがん罹患数・率については、わが国で唯一の大規模データによる推定であり、学術的にもその価値は極めて高いと考えられる。
臨床的観点からの成果
都道府県規模のがん罹患数を区間で予測する手法を確立したことで、全国がん登録実施後には既存の地域がん登録データも利用した都道府県別trend分析を可能とし、さらには、がん種別罹患数の将来予測に用いることができることから、臨床的にも診療体制のあり方を検討する上で、考慮すべき要素として重要であると考えられた。
ガイドライン等の開発
がん対策推進協議会(平成28年8月26日)において、全国がん登録データと小児がん登録とのリンケージなど、データ利用に関する手法の検討が必要とされた。登録データの利用に関する調査結果はこうした方法論を検討する上で、大きな影響を持つと推察される。
また、競合リスクを考慮したがん患者のがん累積死亡率の推定では、人口動態統計等、死亡統計算定における原死因ルールとの整合性、がん種別のルール設定などを検討する上での大きな参考となると予想される。
その他行政的観点からの成果
2018年以降に想定される、がん登録データとがん検診データの照合について、本研究での課題指摘を踏まえた標準的手法を確立することが可能であると考えられる。
また、フォーカスグループ研究を含めたがん登録データの利用に関する調査結果は、がん登録情報の利用・提供に関して、提供の可否を審査する審査者、提供される研究者ともに、国民の不安を払拭しつつ、利用を推進する配慮が不可欠をあることを提示でき、今後の開催が予想される厚生科学審議会がん登録部会での審議の参考となろう。
その他のインパクト
がん罹患率などの統計情報については、国立がん研究センターがん対策情報センターを通じて、記者発表され、2016年の罹患予測では100万件を超えたなどの記事が2016年7月に配信された。その他、同センターがん情報サービスのがん登録・統計のページを通じて、広く国民に推計結果などが発表されている。

発表件数

原著論文(和文)
16件
原著論文(英文等)
37件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
48件
学会発表(国際学会等)
17件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2017-06-23
更新日
-

収支報告書

文献番号
201607012Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
20,224,000円
(2)補助金確定額
20,191,000円
差引額 [(1)-(2)]
33,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,651,123円
人件費・謝金 8,760円
旅費 4,877,627円
その他 8,611,218円
間接経費 4,044,000円
合計 20,192,728円

備考

備考
国内旅費を支出予定だったが、別の経費から旅費を支出する事となった為、
研究費に余りが生じた。(自己資金:1,711円、利息:17円)

公開日・更新日

公開日
2017-11-30
更新日
-