わが国における遺伝性乳癌卵巣癌の臨床遺伝学的特徴の解明と遺伝子情報を用いた生命予後の改善に関する研究

文献情報

文献番号
201607011A
報告書区分
総括
研究課題名
わが国における遺伝性乳癌卵巣癌の臨床遺伝学的特徴の解明と遺伝子情報を用いた生命予後の改善に関する研究
課題番号
H26-がん政策-一般-012
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
新井 正美(公益財団法人がん研究会 有明病院遺伝子診療部)
研究分担者(所属機関)
  • 中村 清吾(昭和大学医学部・乳腺外科)
  • 福嶋 義光(信州大学医学部・遺伝医学・予防医学)
  • 三木 義男(東京医科歯科大学・遺伝医学)
  • 青木 大輔(慶應義塾大学医学部・産婦人科学)
  • 櫻井 晃洋(札幌医科大学医学部・遺伝医学・内分泌学)
  • 高田 史男(北里大学大学院医療系研究科・臨床遺伝学)
  • 戸崎 光宏(相良病院付属ブレストセンター・画像診断学)
  • 真野 俊樹(多摩大学医療・介護ソリューション研究所)
  • 山内 英子(聖路加国際大学研究センター・乳腺外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
9,382,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国における遺伝性乳癌卵巣癌(hereditary breast and ovarian cancer: HBOC)の臨床的な特徴を明らかにし、HBOC診療の普及に資する。従来のの5課題に加えて、癌のゲノム医療を促進するため最終年度は【6】【7】の2課題を追加検討する。
【1】わが国のHBOCの全国登録事業
【2】HBOCのサーベイランスにおけるMRI検査の有用性に関する前向き臨床研究
【3】リスク低減卵巣卵管切除術(RRSO)に関する臨床研究
【4】BRCA1/2以外の遺伝性乳癌関連遺伝子の変異に関する研究
【5】HBOC総合診療制度の構築
【6】「遺伝性乳癌卵巣癌-診療の手引きー」を作成する
【7】リスク低減手術の費用対効果を試算する
研究方法
【1】NPO法人日本HBOCコンソーシアム(JHC)の事業の一環として登録事業を計画した。平成28年3月より全国登録を開始して、8月に第1回目の集計を行った。
【2】対象はBRCA変異陽性で乳癌未発症者。年1回のMRI検査をサーベイランスとしてマンモグラフィー及び乳房超音波検査とともに実施し、画像所見の比較検討を行う。
【3】RRSO実施に関する多施設共同研究をNPO婦人科悪性腫瘍研究機構(JGOG)において実施する。また各医療機関でのRRSO症例の臨床的な検討を行う。
【4】乳癌の家族歴のある乳癌あるいは卵巣癌の罹患者であり、かつBRCA遺伝子検査で病的変異を認めなかった症例を対象として、RAD51C, PALB2, BRIP1の3遺伝子について、PCR-direct sequenceおよびMLPA法により変異解析を行う。
【5】日本医学会分科会である日本人類遺伝学会、日本乳癌学会および日本産科婦人科学会の3学会に働きかけて施設認定制度の有用性について議論を行い、さらにHBOCの総合診療制度を創設する。
【6】乳腺、婦人科、遺伝、その他の僚機の4領域に分かれて、CQの作成及びその回答を作成した。
【7】リスク低減乳房切除術(RRM)およびRRSOのサーベイランスに対する費用対効果を試算する。
結果と考察
【1】第1回の全国登録では、全国7施設から、BRCA遺伝子検査の受検者1759名、BRCA1変異陽性者218名、BRCA2変異陽性者197名を登録した。
【2】2016年3月現在で22例をエントリーして計35回のMRI検査を実施した。その結果、1例でMRI検査のみで認識できる乳癌を認めた。本研究班終了後もさらに症例数を増やして検討する予定である。
【3】JGOGにおいてBRCA変異陽性者を対象として予後調査、QOL調査などを行い、RRSOの有用性に関するコホート研究を立案してJGOG理事会で承認を得た(JGOG3024)。現在関連施設の倫理審査委員会で審議中である。
【4】乳癌家族歴のある乳癌症例100例を対象として上記3遺伝子の解析を行った。その結果、RAD51で1例、exon単位の大欠失を認めた。またBRIP1遺伝子に4例ミスセンス変異を認めた。これらは病的変異と確定できないが、3例で男性乳癌の家族歴があり、乳癌の易罹患性と関係している可能性が示された。PALB2には変異を認めなかった。
【5】平成28年8月に日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構(JOHBOC)を創設した。
【6】「診療の手引き」のドラフトを作成して、現在関連学会のコメントに対応して修正作業を行っている。、
【7】Ly(35年シミュレーションの期待生存率)をみると、BRCA1およびBRCA2ともに費用対効果がよいのはRRSO+RRMであった。
結論
【1】BRCA受検者を対象としたHBOCデータベースの基盤を整備した。平成29年度は第2回目の集計を行う予定である。
【2】乳癌未発症のBRCA変異陽性者を対象としてサーベイランスとして年1回のMRI検査を実施する臨床試験を実施している。1例でMRI検査のみで診断可能な乳癌を認め治療を行った。
【3】今後JGOGの中でRRSOのコホート研究を実施する予定である。
【4】BRCA遺伝子に病的変異を認めない家族性乳癌症例においてRAD51C, BRIP1の遺伝子解析は必須である。BRIP1遺伝子変異は男性乳癌とも関連がある可能性が示唆された。
【5】JOHBOCを設立した。今後、施設認定や全国登録事業を実施する予定である。
【6】「診療の手引き」を作成しており、平成29年中に刊行予定である。
【7】RRSOおよびRRMともにサーベイランスよりも費用対効果がよいことが明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2017-09-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201607011B
報告書区分
総合
研究課題名
わが国における遺伝性乳癌卵巣癌の臨床遺伝学的特徴の解明と遺伝子情報を用いた生命予後の改善に関する研究
課題番号
H26-がん政策-一般-012
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
新井 正美(公益財団法人がん研究会 有明病院遺伝子診療部)
研究分担者(所属機関)
  • 中村 清吾(昭和大学医学部・乳腺外科)
  • 福嶋 義光(信州大学医学部・遺伝医学・予防医学)
  • 三木 義男(東京医科歯科大学・遺伝医学)
  • 青木 大輔(慶應義塾大学医学部・産婦人科学)
  • 櫻井 晃洋(札幌医科大学医学部・遺伝医学・内分泌学)
  • 高田 史男(北里大学大学院医療系研究科・臨床遺伝学)
  • 戸崎 光宏(相良病院付属ブレストセンター・画像診断学)
  • 真野 俊樹(多摩大学医療・介護ソリューション研究所)
  • 山内 英子(聖路加国際大学研究センター・乳腺外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国における遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)の臨床的な特徴を明らかにし、癌領域もゲノム医療を促進するために以下7課題を検討する。
【1】わが国のHBOCデータベース作成のためのHBOCの全国登録事業
【2】HBOCのサーベイランスにおけるMRI検査の有用性に関する前向き臨床研究
【3】リスク低減卵巣卵管切除術(RRSO)に関する臨床研究
【4】BRCA1/2以外の遺伝性乳癌関連遺伝子の変異に関する研究
【5】HBOC総合診療制度の構築
【6】「遺伝性乳癌卵巣癌-診療の手引きー」を作成する
【7】リスク低減手術の費用対効果を試算する
研究方法
【1】NPO法人日本HBOCコンソーシアム(JHC)の事業の一環として登録事業を計画した。平成28年3月より全国登録を開始して、8月末日に第1回目の集計を行った。
【2】対象はBRCA変異陽性で乳癌未発症者。年1回のMRI検査をサーベイランスとしてマンモグラフィー及び乳房超音波検査とともに実施し、画像所見の比較検討を行う。
【3】RRSO実施に関する多施設共同研究をNPO婦人科悪性腫瘍研究機構(JGOG)において実施する。また各医療機関でのRRSO症例の臨床病理学的な検討を行う。さらに各医療機関でRRSOに関する臨床的検討を行う。
【4】乳癌の家族歴のある乳癌あるいは卵巣癌の罹患者であり、かつBRCA遺伝子検査で病的変異を認めなかった症例を対象として、RAD51C, PALB2, BRIP1の3遺伝子について、PCR-direct sequenceおよびMLPA法により変異解析を行う。
【5】日本医学会分科会である日本人類遺伝学会、日本乳癌学会および日本産科婦人科学会の3学会に働きかけて施設認定制度の有用性について議論を行い、さらにHBOCの総合診療制度を創設する。
【6】乳腺、婦人科、遺伝、その他の僚機の4領域に分かれて、CQの作成及びその回答を作成した。
【7】リスク低減乳房切除術(RRM)およびRRSOのサーベイランスに対する費用対効果を試算する。
結果と考察
【1】第1回の全国登録では、全国7施設から、BRCA遺伝子検査の受検者1759名、BRCA1変異陽性者218名、BRCA2変異陽性者197名を登録した。
【2】2016年3月現在で22例をエントリーして計35回のMRI検査を実施した。その結果、1例でMRI検査のみで認識できる乳癌を認めた。本研究班終了後もさらに症例数を増やして検討する予定である。
【3】JGOGにおいてBRCA変異陽性者を対象として予後調査、外科的閉経に伴うQOL調査などを行い、RRSOの有用性に関するコホート研究を立案してJGOG理事会で承認を得た(JGOG3024)。現在JGOG及び慶應義塾大学の倫理審査委員会に申請中である。また、RRSO前後の心理社会的研究を実施した。その結果、卵巣癌発症への不安の軽減や遺伝子検査で変異陽性の心的衝撃の改善が認められた。さらにRRSOで切除された卵巣の病理学的検索から卵巣にもin situのp53染色病変を認めた。
【4】乳癌家族歴のある乳癌症例100例を対象として上記3遺伝子の解析を行った。その結果、RAD51で1例、exon単位の欠失を認めた。またBRIP1遺伝子に4例ミスセンス変異を認めた。これらは病的変異と確定できないが、3例で男性乳癌の家族歴があり、乳癌の易罹患性と関係している可能性が示された。PALB2には変異を認めなかった。
【5】平成28年8月に日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構(JOHBOC)を創設した。
【6】「診療の手引き」のドラフトを作成して、現在関連学会のコメントに対応して修正作業を行っている。、
【7】Ly(35年シミュレーションの期待生存率)をみると、BRCA1およびBRCA2ともに費用対効果がよいのはRRSO+RRMであった。
結論
【1】BRCA受検者を対象としたHBOCデータベースの基盤を整備した。平成29年度は第2回目の集計を行う予定である。
【2】乳癌未発症のBRCA変異陽性者を対象としてサーベイランスとして年1回のMRI検査を実施する臨床試験を実施している。MRI検査のみで診断可能な乳癌1例を認めた。
【3】今後JGOGの中でRRSOのコホート研究を実施する予定である。
【4】BRCA遺伝子に病的変異を認めない家族性乳癌症例においてRAD51C, BRIP1の遺伝子解析は必須である。BRIP1遺伝子変異は男性乳癌とも関連がある可能性が示唆された。
【5】JOHBOCを設立した。今後、施設認定や全国登録事業を実施する予定である。
【6】「診療の手引き」を作成しており、平成29年中に刊行予定である。
【7】RRSOおよびRRMともにサーベイランスよりも費用対効果がよいことが明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2017-09-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201607011C

収支報告書

文献番号
201607011Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
12,196,000円
(2)補助金確定額
11,986,000円
差引額 [(1)-(2)]
210,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,986,850円
人件費・謝金 2,705,007円
旅費 975,416円
その他 1,505,392円
間接経費 2,814,000円
合計 11,986,665円

備考

備考
・計上していた委託費において、自施設での解析ですべての解析が終了できたので業者に委託する必要がなくなったことや、冊子の作成(構想立案・デザイン印刷まで)を委託する予定が、実際には、翻訳と印刷のみとなったため、業者に委託することは無しに作業が完了したことなどで、結果的に委託費の使用がなくなってしまったため。(自己資金:665円)

公開日・更新日

公開日
2018-01-04
更新日
-