在宅がん患者の栄養サポートに精通した在宅医療福祉従事者の全国的育成システムの開発

文献情報

文献番号
201607010A
報告書区分
総括
研究課題名
在宅がん患者の栄養サポートに精通した在宅医療福祉従事者の全国的育成システムの開発
課題番号
H26-がん政策-一般-010
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
福尾 惠介(武庫川女子大学 生活環境学部、栄養科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 佐古田三郎(国立病院機構刀根山病院)
  • 難波光義(兵庫医科大学病院)
  • 佐藤眞一(大阪大学人間科学研究科)
  • 倭 英司(武庫川女子大学 生活環境学部)
  • 鞍田三貴(武庫川女子大学 生活環境学部)
  • 長谷川裕紀(武庫川女子大学短期大学部)
  • 前田佳予子(武庫川女子大学 生活環境学部)
  • 榎本平之(兵庫医科大学 内科学肝・胆・膵科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
4,157,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん患者は高率に栄養障害を起こすが、栄養障害は、ADLの低下や死亡率の増加に繋がる。我々は、平成21年度の厚生労働省科学研究費「地域医療基盤開発推進研究事業」により、地域医療機関との連携による栄養サポートを開始し、現在も継続している。本事業は、在宅がん患者の栄養サポートを行うとともに、事例を用いた教育テキストを作成し、在宅医療人材教育に活用する。また、日本臨床栄養学会や日本在宅栄養管理学会との連携による研修会やセミナーの開催や、認定臨床栄養医や在宅訪問管理栄養士などの資格認定制度と連携し、全国的な在宅医療人材育成を行う。
研究方法
1.在宅がん患者栄養サポートシステムの構築
1) 国立病院機構刀根山病院等との連携:がん患者の栄養調査を継続する。一方、兵庫医科大学病院の在宅患者を対象として、栄養サポートががんの発症予防等に有用であるか調査を実施する。
2) 西宮在宅支援研究会との連携:西宮市在宅支援研究会」と連携し、在宅がん患者の栄養サポートシステムの構築に取り組む。
3) アンケート調査:がん拠点病院を対象として、在宅がん患者の栄養サポートが医療費削減にどの程度貢献できるかについて試算を試みる。
2.在宅医療人材教育プログラム開発
1) 臨床栄養スタートアップ講座:在宅医療に関わる医師等を対象に、症例を用いた多職種グループワークによる「臨床栄養スタートアップ講座」を本格実施する。
2) 日本臨床栄養学会との連携:在宅がん栄養講座を開催する。また、e-learning システムの開発を行う。さらに、研究代表者が会長を務める日本臨床栄養学会総会で、本事業の成果を発表する。
3) 日本在宅栄養管理学会との連携:「在宅訪問管理栄養士セカンドステップ研修会」での教育プログラムの開発と症例テキスト作成を行う。
3. 外部評価委員会の開催:有識者からなる外部評価委員による外部評価を実施する。
結果と考察
本研究成果の意義・発展性の1つは、がん患者に対する栄養サポートの事例をもとにしたテキストを作成したが、その内容として、a.がん患者の栄養学的基本知識、b.がん患者の臨床栄養の基本知識、c.消化器がん術後の栄養管理に関する症例、d.化学療法中の肺がん患者の栄養管理症例、e.放射線治療中がん患者症例、f.在宅終末期がん患者の栄養支援症例、g.がん患者の口腔ケアに関する症例、h. がん患者とその家族の心理的課題症例が含まれる。これらの中で、a~fは、ESPEN guidelines on nutrition in cancer patients(2016)のガイドライン項目に合致する内容であり、在宅医療人材育成用のテキストとして活用できると思われる。今後、臓器別に典型例の集積を行う必要がある。
在宅がん患者に対する栄養支援を目的として、栄養科学研究所内に新たに「栄養ケアステーション」を立ち上げることを決定した。今後、日本在宅栄養管理学会と連携して、新たな在宅がん患者栄養サポートモデルの開発を目指す。
関西圏がん拠点病院を対象としたアンケート調査から、在宅がん患者の栄養サポートによる医療費削減額を試算により明らかにした。これにより、がん患者に対する栄養改善により、厚生労働行政の「医療費の削減」に貢献できることが示唆された。
日本臨床栄養学会との連携では、当初の計画通り、認定臨床栄養医研修会で在宅がん栄養講座を開催した。また、e-learning による臨床栄養やがんと栄養に関する教育システムの運用を開発し、今後全国的かつ継続的な人材育成が可能になる。
外部評価委員会では、本事業に対して高い評価を得たが、今後、がん種やステージ別の教育システムの構築とともに、在宅現場への広報や在宅訪問医や看護師等との連携強化が求められた。
結論
本研究は、3年間の事業で、当初の計画通り、国立病院機構刀根山病院、兵庫医科大学病院の2つのがん拠点病院と、日本臨床栄養学会、日本在宅栄養管理学会と連携し、在宅がん患者の栄養サポートや症例テキスト、さらに、e-learningを用いた全国的な教育プログラムの本格的実施を行った。また、中間評価でのコメントに適切に対応するため、事業の一部を見直した。今後、在宅がん患者の栄養支援モデルの開発や認定在宅訪問管理栄養士や認定臨床栄養指導医が地域でスムーズに活動できる具体的なネットワークの構築を目指す。

公開日・更新日

公開日
2017-06-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-06-23
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201607010B
報告書区分
総合
研究課題名
在宅がん患者の栄養サポートに精通した在宅医療福祉従事者の全国的育成システムの開発
課題番号
H26-がん政策-一般-010
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
福尾 惠介(武庫川女子大学 生活環境学部、栄養科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 佐古田三郎(国立病院機構刀根山病院)
  • 難波光義(兵庫医科大学病院)
  • 佐藤眞一(大阪大学人間科学研究科)
  • 倭 英司(武庫川女子大学 生活環境学部)
  • 鞍田三貴(武庫川女子大学 生活環境学部)
  • 長谷川裕紀(武庫川女子大学短期大学部・食生活学科)
  • 谷崎典子(武庫川女子大学 栄養科学研究所)
  • 前田佳予子(武庫川女子大学 生活環境学部)
  • 榎本平之(兵庫医科大学 内科学 肝・胆・膵科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん患者では、栄養障害が高率に起こるが、年々がん患者数が増加し、早期退院・在宅医療が推進されるため、地域では栄養サポートが必要な在宅がん患者が急増している。この結果、在宅がん患者の合併症併発による入院や要支援者が増加するため、医療歳費の増加や在宅医療人材不足が危惧される。そこで、本研究は、在宅がん患者に対する栄養サポート体制の構築と在宅医療人材の全国的育成を目的とする。
研究方法
1.在宅がん患者栄養サポートシステムの構築
1)国立病院機構刀根山病院等との連携では、在宅がん患者における栄養状態の実態やニーズを明らかにするとともに、特徴的な症例をテキスト作成用にまとめた。
2)関西圏がん拠点病院アンケート調査では、在宅がん患者の栄誉実態に関する調査や在宅がん患者の再入院や合併症の併発等によってかかる医療費に関する調査を行った。
2.在宅医療人材教育プログラム開発
1) 臨床栄養スタートアップ講座の開発では、平成26・27年度は、試行的な実施と見直しを行い、平成28年度は、本格実施した。広報は、日本臨床栄養学会や日本在宅栄養管理学会のそれぞれのホームページ等を通じて行った。
2) 日本臨床栄養学会との連携では、平成27年度の理事会でe-learning 教育システムの導入を決定し、平成28年度からシステムの運用を開始した。
3) 日本在宅栄養管理学会との連携では、全国的な在宅訪問管理栄養士育成を目的とした「在宅訪問管理栄養士セカンドステップ研修会」での教育プログラムの開発と症例テキスト作成を行った。
3. 外部評価委員会の開催では、外部有識者からなる外部評価委員による外部評価を実施し、症例テキストが十分なモデルケースであるか等を検証した。
結果と考察
1.在宅がん患者栄養サポートシステムの構築
1) 国立病院機構刀根山病院等との連携では、初回化学療法肺がん患者を対象とした解析から、化学療法前の自宅での食習慣において、体重あたりの糖質摂取量が多いほど化学療法後の副作用数が有意に多いこと、化学療法の効果に入院前の食習慣、特に、脂質摂取量や間食摂取量が関連することを明らかにした。
2) 西宮在宅支援研究会との連携により、在宅がん患者の栄養サポートシステムの構築に向けて協働で取り組むことが可能になった。
3) 関西圏「がん拠点病院」を対象としたアンケート調査では、回収率は18.1%と低いが、回収されたアンケートの解析から、栄養障害を有する在宅がん患者の割合が不明とする回答が80%と、栄養実態の把握が不十分であることが明らかになった。在宅がん患者の栄養改善による医療費削減試算総額が約553億3,947万円/年になる可能性があることを示した。
2.在宅医療人材教育プログラム開発
1) 臨床栄養スタートアップ講座の開発では、当初の予定通り在宅がん患者症例に関するグループワークなどを行った。
2)日本臨床栄養学会との連携では、当該学会内に「がん栄養部会」を新設し、全国の開業医等が「がんと栄養」に関する基本的知識を習得できる研修システムとしてe-learning 教育システムを開発し、運用を開始した。
3) 日本在宅栄養管理学会との連携では、当初の計画通り「在宅訪問管理栄養士セカンドステップ研修会でがんと栄養に関する講義を実施した。

本研究事業では、中間評価でのコメントに適切に対応するため、事業の一部を見直し、開業医とのタイアップによる「栄養ケアステーション」の立ち上げ、がん拠点病院を対象とした調査から、在宅がん患者の栄養改善が医療費の削減につながることを試算から明らかにした。さらに、事業の継続に向けた外部有識者による外部評価委員会を開催し、事業の改善点を明らかにした。今後、在宅がん患者の栄養支援モデルの開発や認定在宅訪問管理栄養士や認定臨床栄養指導医が地域で効率的に活躍できる具体的なネットワークシステムの構築を目指す。
結論
本研究は、3年間の事業で、当初の計画通り、2つのがん拠点病院と、日本臨床栄養学会、日本在宅栄養管理学会と連携し、在宅がん患者の栄養サポートや症例テキスト、さらに、e-learningを用いた全国的な教育プログラムの本格的実施を行った。

公開日・更新日

公開日
2017-06-23
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201607010C

収支報告書

文献番号
201607010Z