HTLV-1キャリアとATL患者の実態把握、リスク評価、相談支援体制整備とATL/HTLV-1感染症克服研究事業の適正な運用に資する研究

文献情報

文献番号
201607006A
報告書区分
総括
研究課題名
HTLV-1キャリアとATL患者の実態把握、リスク評価、相談支援体制整備とATL/HTLV-1感染症克服研究事業の適正な運用に資する研究
課題番号
H26-がん政策-一般-006
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
内丸 薫(東京大学大学院 新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻病態医療科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 山野 嘉久(聖マリアンナ医科大学大学院 医学系研究科難病治療研究センター)
  • 末岡 榮三朗(佐賀大学医学部 臨床検査医学講座)
  • 齋藤 滋(富山大学大学院 医学薬学研究部産科婦人科学)
  • 森内 浩幸(長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科小児科学)
  • 渡邊 清高(帝京大学医学部 内科学講座)
  • 佐竹 正博(日本赤十字社血液事業本部中央血液研究所)
  • 塚崎 邦弘(国立がん研究センター東病院 血液腫瘍科)
  • 岩永 正子(長崎大学大学院 生命医科学講座)
  • 飛内 賢正(国立がん研究センター中央病院 血液腫瘍科)
  • 宇都宮 與(慈愛会今村病院分院)
  • 石塚 賢治(鹿児島大学大学院 医歯薬学総合研究科附属難治ウイルス病態制御センター)
  • 野坂 生郷(熊本大学医学部附属病院 血液腫瘍内科)
  • 今泉 芳孝(長崎大学病院 原研内科)
  • 戸倉 新樹(浜松医科大学医学部 皮膚科学)
  • 下田 和哉(宮崎大学医学部 内科学講座消化器血液学分野)
  • 伊藤 薫樹(岩手医科大学医学部 腫瘍内科学科 血液・腫瘍内科分野)
  • 森島 聡子(琉球大学大学院 医学研究科 内分泌代謝・血液・膠原病内科学)
  • 渡邉 俊樹(聖マリアンナ医科大学大学院 先端医療開発学分野)
  • 岡山 昭彦(宮崎大学医学部 内科学講座)
  • 岩月 啓氏(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 皮膚科学分野)
  • 足立 昭夫(徳島大学大学院 ヘルスバイオサイエンス研究部 微生物病原学分野)
  • 金倉 譲(大阪大学大学院 血液学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
16,888,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者交替 仲地 佐和子(平成28年4月1日~28年8月*31日)→森島 聡子(平成28年9月1日以降) 所属機関異動 野坂 生郷 国立国際医療センター( 平成27年4月1日~28年8月31日)→ 熊本大学(平成28年9月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は3つのグループにより以下の課題につき研究することを目的とする。ATL患者・HTLV-1キャリア相談支援グループでは、HTLV-1キャリア自主登録ウェブサイトキャリねっとの登録データにより明らかになったキャリア・患者の相談体制の実態とその課題を検討し、HTLV-1キャリア対策に必要な施策を明らかにする。全国実態調査グループでは、先行研究による第11次調査を継続して予後調査の結果を集計し、第12次調査として院内がん登録、血液疾患患者登録、皮膚悪性腫瘍学会疾患登録等の登録システムを利用した新しい調査システムを構築して実施する。総括班グループでは、「HTLV-1関連疾患研究領域」の各研究事業の進捗状況の把握と評価を行い、戦略的かつ総合的な観点から評価して総合的かつ効率的な研究体制の提言を行う。また、「ATL発症リスクの告知の指針」策定を目指し検討を進める。
研究方法
ATL患者・HTLV-1キャリア相談支援グループは、キャリア自主登録システムとしてウェブサイト「キャリねっと」の運用を継続し、登録データの集計と分析を行った。また、日赤における相談対応の実態調査を継続した。全国実態調査グループは、第11次調査で集積した症例を対象とする予後調査データの集計、解析を行った。また、既存のデータベースを利用した新たな全国調査としての第12次調査を行うため、院内がん登録データ、血液疾患患者登録、皮膚悪性腫瘍学会疾患登録データベースをもとに該当する535施設を対象として調査票を送付した。総括班グループでは、HTLV-1関連疾患研究事業の各班会議に参加しての評価書の作成、シンポジウムの開催などを通じて、国内外の研究の現状と課題を整理した年次報告書を作成した。また、リスク告知の指針検討委員会の設置について検討した。
結果と考察
HTLV-1キャリア自主登録システム「キャリねっと」の運用を継続、コンスタントに登録数は伸びており、5月24日現在の登録者数は354名である。登録データの解析から、妊婦検診で判明したキャリアの94%は相談を希望しており高い相談ニーズがあるととも、実際に行った施設は圧倒的に血液内科であり、保健所での相談は極めて限定的であり、相談体制の整備には血液内科を中心に拠点化により対応施設を整備する必要があることが明らかになった。また、妊婦への授乳指導に依然かなりばらつきがあることが推定されること、分娩後の授乳指導体制の整備が急務であることなど、今後の母子感染予防対策のための貴重なデータを得ることができた。全国実態調査グループでは、第11次ATL全国実態調査で集積した登録症例の79%の症例について調査票を回収し解析を行った。急性型、リンパ腫型では先行研究に比し生存期間中央値の改善は乏しかったが、4年生存率の改善を認め、一つの理由として造血細胞移植による長期生存例が増加していることが考えられた。くすぶり型の予後は勝屋らの先行研究より良好で下山らの報告に近かった。これは調査法の違いを反映している可能性が考えられた。第12次ATL全国実態調査については、院内がん登録、日本血液学会血液疾患患者登録、皮膚悪性腫瘍学会疾患登録のデータの二次利用が可能となり、該当する565施設を抽出、調査票を発送した。来年度データの集計、解析に取り掛かれる予定である。本システムによりデータベースにより迅速に該当症例を拾い出し、該当施設にてウェブ登録により調査に回答する新しい全国調査システムが完成し、調査に伴う負担が大きく軽減されることが期待される。総括班グループでは、第3回日本HTLV-1学会学術集会を共催し、同時期に学会と共催で国際シンポジウムを開催し情報交換と議論を行った。また、第9、10、11回HTLV-1対策推進協議会に参加し情報交換を行った。関係学会・研究会における発表内容の調査を行うとともに、HTLV-1関連疾患研究事業の評価書の作成を行い、研究代表者にも送付したが、第三者的な立場からのコメントは各事業の適正かつ効率的な運用に資するものと考えられる。研究補助金による研究の領域分布の検討も行い、研究事業の現状の俯瞰と評価を行った。リスク告知の指針検討委員会については、発症リスク同定の研究の進行を見極めて再検討する方針とした。
結論
HTLV-1キャリア、関連疾患患者には明確な相談ニーズがあり、相談体制の充実のためには血液内科における体制を整備することが重要で、血液内科病院を中心とする対応施設の拠点化を提言する。また、これらの充実により妊婦に対する授乳指導の標準化、キャリアマザーの分娩後の授乳指導体制の整備が必要である。ATLの実態調査の結果、ATLの予後は必ずしも改善していないが、造血細胞移植の増加により、長期生存例が増加してきている傾向が見られた。

公開日・更新日

公開日
2017-06-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

その他
総括研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2017-06-23
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201607006B
報告書区分
総合
研究課題名
HTLV-1キャリアとATL患者の実態把握、リスク評価、相談支援体制整備とATL/HTLV-1感染症克服研究事業の適正な運用に資する研究
課題番号
H26-がん政策-一般-006
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
内丸 薫(東京大学大学院 新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻病態医療科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 山野 嘉久(聖マリアンナ医科大学大学院 医学系研究科難病治療研究センター )
  • 末岡 榮三朗(佐賀大学医学部 臨床検査医学講座)
  • 齋藤 滋(富山大学大学院 医学薬学研究部産科婦人科学)
  • 森内 浩幸(長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科小児科学)
  • 渡邊 清高(帝京大学医学部 内科学講座)
  • 佐竹 正博(日本赤十字社 血液事業本部中央血液研究所)
  • 塚崎 邦弘(国立がん研究センター東病院 血液腫瘍科)
  • 岩永 正子(長崎大学大学院 生命医科学講座 フロンティア生命科学分野)
  • 飛内 賢正(国立がん研究センター中央病院 血液腫瘍科)
  • 宇都宮 與(慈愛会今村病院分院 血液内科)
  • 石塚 賢治(鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科附属難治ウイルス病態制御センター)
  • 野坂 生郷(熊本大学医学部附属病院 血液内科)
  • 今泉 芳孝(長崎大学病院 原研内科)
  • 戸倉 新樹(浜松医科大学医学部 皮膚科学)
  • 下田 和哉(宮崎大学医学部 内科学講座消化器血液学分野)
  • 友寄 毅昭(琉球大学大学院 医学研究科内分泌代謝・血液・膠原病内科学講座)
  • 伊藤 薫樹(岩手医科大学医学部 腫瘍内科学科血液・腫瘍開花分野)
  • 渡邉 俊樹(聖マリアンナ医科大学大学院 先端医療開発学分野)
  • 岡山 昭彦(宮崎大学医学部 内科学講座免疫感染病態学分野)
  • 岩月 啓氏(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科皮膚科学分野)
  • 足立 昭夫(徳島大学大学院 ヘルスバイオサイエンス研究部微生物病原学分野)
  • 金倉 譲(大阪大学大学院 医学系研究科血液・腫瘍内科学)
  • 仲地 佐和子(琉球大学大学院 医学研究科内分泌代謝・血液・膠原病内科学講座)
  • 森島 聡子(琉球大学大学院 医学研究科内分泌代謝・血液・膠原病内科学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動 岩永 正子  東京慈恵医科大学(平成26年4月1日~26年11月15日)→ 長崎大学(平成26年11月*16日以降) 石塚 賢治  福岡大学(平成26年4月1日~27年10月30日)→ 鹿児島大学(平成27年11月1日以降) 野坂 生郷  国立国際医療センター(平成27年4月1日~28年8月31日)→ 熊本大学(平成28年9月1日以降) 渡邉 俊樹  東京大学(平成26年4月1日~27年3月31日)→ 聖マリアンナ医科大学(平成28年4月1日以降) 研究分担者交替(琉球大学) 友寄 毅昭(平成26年4月1日~28年3月31日)→仲地 佐和子(平成28年4月1日以降) 仲地 佐和子(平成28年4月1日~28年8月31日)→森島 聡子(平成28年9月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は3つのグループにより以下の課題につき研究することを目的とする。ATL患者・HTLV-1キャリア相談支援グループでは、HTLV-1キャリア自主登録ウェブサイト「キャリねっと」を構築しキャリア・患者の相談体制の実態とその課題キャリアを対象に大規模調査を行い、HTLV-1キャリア対策に必要な施策を明らかにする。全国実態調査グループでは、先行研究による第11次調査対象集団の予後調査を行うとともに、第12次調査として院内がん登録、血液疾患患者登録、皮膚悪性腫瘍学会疾患登録等の登録システムを利用した新しい調査システムを構築して実施する。総括班グループでは、「HTLV-1関連疾患研究領域」の各研究事業の進捗状況の把握と評価を行い、戦略的かつ総合的な観点から評価して総合的かつ効率的な研究体制の提言を行う。
研究方法
ATL患者・HTLV-1キャリア相談支援グループは、キャリア自主登録システムとしてウェブサイト「キャリねっと」を構築し、登録データの解析により献血判明キャリアの動向、妊婦検診判明キャリアに対する相談体制、保健所の現状、都道府県の支援体制の構築などについての検討を行った。全国実態調査グループは、第11次調査で集積したATL996名の治療内容と予後の調査を行った。また、院内がん登録、日本血液学会血液疾患患者登録、皮膚悪性腫瘍学会疾患登録の3つのATL診療データを利用して、2012/13年に発症したATL患者の全国調査を開始した。該当する535施設へ調査依頼を送付した。総括班グループでは、日本HTLV-1学会学術集会の第1回から第3回までを共催し、学術シンポジウム、国際シンポジウムにより国内外の研究者との情報交換と議論を行った。また、関係学会・研究会における発表内容の調査を行った。さらに年間2回のペースで開催される「HTLV-1対策推進協議会」への参加と議論の情報交換、年3回開催の班会議を通じた評価と議論を行った。
結果と考察
ATL患者・HTLV-1キャリア相談支援グループはキャリねっとデータの解析をもとに以下の提言を行った。1)HTLV-1キャリアには相談ニーズが確実に存在し、相談体制の確立が必要である。2)相談対応のほとんどが血液内科病院で行われており、血液内科を念頭に置いた相談体制の構築が必要である。3)血液内科病院の拠点化が必要であり、それらの対応施設と産婦人科、小児科、赤十字血液センター、保健所などをつなぐ組織的な連携体制の構築が必要である。4)妊婦に対する授乳指導について、地域差、施設差が存在すると推定され、改めて授乳指導の現状について調査する必要がある。5)分娩後の授乳指導体制が不十分であり、特に短期授乳、凍結母乳を選択した母親に対する支援体制が必要である。6)キャリアマザーの児の抗体検査の体制について検討が必要である。7)総合対策における保健所の位置づけを再検討する必要がある。1次相談窓口としての機能とそこから拠点病院へつなぐというのが一つの役割として想定される。全国実態調査グループは、第11次ATL全国実態調査で集積した登録症例の79%の症例について調査票を回収し解析を行った。急性型・リンパ腫型の診断後の4年生存割合は、同種造血幹細胞移植施行例、未施行例ともに過去の報告と比較し改善していることが明らかになった。また、第12次ATL全国実態調査については、院内がん登録、日本血液学会血液疾患患者登録、皮膚悪性腫瘍学会疾患登録より抽出した症例の該当施設535施設へ調査依頼を送付した。今後調査票の送付、データ固定を今年度中に行う予定である。総括班グループでは、関連疾患研究領域の2014-2016年度までの研究課題の領域的な分布について検討し、ウイルスを直接対象としたウイルス学が採択されていないこと、HAMについて患者数のわりに採択件数が目立つなどの特徴を報告した。文部科学省/日本学術振興会の科学研究費による研究課題では採択件数に関しては、基盤研究を中心に一定の数が維持されていたが、昨年度終了の課題が多数あることから、今年度の採択数と研究分野の分布が注目される。
結論
HTLV-1キャリア、関連疾患患者には明確な相談ニーズがあり、相談体制の充実のためには血液内科病院を中心とする対応施設の拠点化が必要である。また、ATLの病態解明、標準治療法開発、診療実態の評価に基づくその整備のために、継続的な本疾患の全国調査が望まれる。研究課題の領域的な分布とテーマの内容を戦略的に配置し、有効な研究体制を検討して提案するため、HTLV-1関連疾患研究領域全体を俯瞰的に把握する体制を強化・維持することが不可欠である。

公開日・更新日

公開日
2017-06-23
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201607006C

収支報告書

文献番号
201607006Z