突然の説明困難な小児死亡事例に関する登録・検証システムの確立に向けた実現可能性の検証に関する研究

文献情報

文献番号
201606016A
報告書区分
総括
研究課題名
突然の説明困難な小児死亡事例に関する登録・検証システムの確立に向けた実現可能性の検証に関する研究
課題番号
H28-健やか-一般-007
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
溝口 史剛(前橋赤十字病院小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 神薗淳司(北九州市立八幡病院)
  • 岩瀬博太郎(千葉大学附属法医学教育研究センター)
  • 小林博(日本医師会警察活動等への協力業務検討委員会)
  • 森臨太郎(国立成育医療研究センター政策科学研究部)
  • 藤原武男(東京医科歯科大学国際保健健康推進医学分野)
  • 山中龍宏(産業総合研究所人口知能研究センター)
  • 小熊栄二(埼玉県立小児医療センター放射線科)
  • 沼口敦(名古屋大学救急科)
  • 柳川敏彦(和歌山県立医科大学保健看護学部保健看護学科)
  • 菊地祐子(東京都立小児総合医療センター心理福祉科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
小児死亡時に詳細な検証を行い、同様の死を防ぐ手立てを講じるチャイルド・デス・レビュー(CDR)は、1984年に米国のLAで開始され、現在英語圏の多くの国がCDRを制度化し、アジアでも香港とシンガポールで制度化されている。CDRにより「十分な情報収集、各機関の死因同定の正確性の向上」「関係機関の連携・効率性の改善」「犯罪としての捜査・訴追状況の改善」「小児医療提供体制の改善」など様々な効果が確認されている。日本小児科学会の子どもの死亡登録検証委員会でも4地域(東京・群馬・京都・北九州市)を対象としたパイロット研究が実施されている。本研究は、パイロット研究の方法論を基盤に、まず小児医療者間で連携体制を整備し、地域で包括的な検証を行う基盤を形成し、諸外国と同等の多機関連携でのCDRを実施しうる体制の社会実装を目指す。平成29年度にはCDRの取組を開始する地域を拡充し、平成30年には現時点でも弾力的運用で解決できる側面についてガイドラインにまとめ、法的整備が不可欠な部分について、提言をまとめる
研究方法
CDRの社会実装のための研究実施の基盤整備のためHPを作成し、CDRに関しての情報提供を行うとともに、研究参加施設はオンラインを通じて事例を登録することが可能なシステムを組み込む。3次医療機関へアンケート調査を行い、CDRの構築を進める意思を有する地域の確認を行う。諸外国のCDRの整備状況を確認し、諸外国への面会調査計画を立案。救急医と小児医療者の連携構築のためのアンケートを作成、剖検を通した臨床医-法医の連携の有用性について検討する。警察医組織の現状や新生児の登録システムの現状につき調査し、CDRシステムとの協力関係について模索する。死亡時画像診断の有用性を確認し、具体的な死亡時対応ガイドラインを作成する。前方視的なCDRに向けても情報収集体制の課題を抽出し、保健行政としてのCDR事業につき議論する。グリーフにつき、ファーストエイドとしての身体科の役割の明確化と、複雑化した場合の精神科の対応の在り方についての課題を抽出する。これらの課題を抽出し、ガイドラインに明示すべき内容を整理する。
結果と考察
単一施設でもCDRを行う意義につき理解し実践を行おうとする医療機関が参画できる研究体制を組み、オンラインでの登録体制を整備した。具体的な登録施設が拡充していくことで、地域(都道府県)レベルでの検証体制が構築され、さらには臨床医だけではなく法医学者などが参画したり、医療機関だけではなくその他の機関(行政機関・保健機関・教育機関・警察・検察)などが参画した多機関連携での検証体制が整備される端緒となることが期待される。そのような多機関連携体制を促進する上での問題解決を図るため、ならびに研究の場合には実施が困難な前方視的検証を将来的に行う際の諸問題を解決するために、諸外国のCDR、救急医療との連携、法医学-臨床医学連携、警察医との連携、新生児死亡登録システムとのリンケージ、死亡時画像診断の在り方、将来的な前方視的情報収取の在り方、司法事例の情報収集の課題、グリーフケアの在り方、につき現状を検討し、それぞれの分野に関しての課題を抽出した。
結論
CDRの社会実装を進めていくための基盤を整備した。CDRに関する具体的実践を行う中で、地域の医療者が新たな死亡を防ぐためのCDRにつき考察し、1例1例の死亡から得た学びを積み上げていくことの重要性につき、認識を深めるきっかけになることが期待される。しかし、CDRを真に有効なものとするための課題は、いまだ山積している。具体的実践を広げていくとともに、法的整備を見据えた今後のCDRの在り方につき明確化していく必要がある。現時点でも弾力的運用で解決できる側面についてガイドラインとしてまとめ上げるとともに、法律的な整備が不可欠な部分については、提言としてまとめ、提示する必要がある。
また医療者が「まず櫂より始めよ」の精神で取り組みを進めていくことは極めて重要であるが、CDRを地域に根付かせるためには、一般市民の理解や期待は大きな後押しになる。国民の理解を得られるような取り組みも並行して行う必要がある。

公開日・更新日

公開日
2017-06-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-07-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201606016Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,000,000円
(2)補助金確定額
3,935,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,065,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 0円
人件費・謝金 112,709円
旅費 546,160円
その他 3,276,423円
間接経費 0円
合計 3,935,292円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-06-01
更新日
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