文献情報
文献番号
201606012A
報告書区分
総括
研究課題名
小児ビタミンD欠乏症の実態把握と発症率の推定
課題番号
H28-健やか-一般-006
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
大薗 惠一(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 井原 健二(国立大学法人大分大学 医学部小児科学講座)
- 大庭 幸治(国立大学法人東京大学 大学院情報学環)
- 北中 幸子(国立大学法人東京大学 大学院医学系研究科小児医学講座)
- 楠田 聡(東京女子医科大学 医学部)
- 窪田 拓生(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
- 小山 さとみ(獨協医科大学 医学部)
- 清水 俊明(順天堂大学 大学院医学研究科)
- 棚橋 祐典(国立大学法人旭川医科大学 医学部)
- 塚原 宏一(国立大学法人岡山大学 医歯薬学総合研究科)
- 長崎 啓祐(国立大学法人新潟大学 医歯学総合病院小児科 )
- 長谷川 行洋(東京都立小児総合医療センター 内分泌・代謝科)
- 福本 誠二(国立大学法人徳島大学 先端酵素学研究所)
- 藤原 幾磨(国立大学法人東北大学 大学院医学系研究科小児環境医学分野)
- 水野 晴夫(公立大学法人名古屋市立大学 大学院医学系研究科 新生児・小児医学分野)
- 道上 敏美(地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪府立母子保健総合医療センター 研究所 環境影響部門)
- 依藤 亨(大阪市立総合医療センター 小児代謝・内分泌内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
7,690,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
ビタミンDは健全な骨発育に必要な栄養素であり、その欠乏はくる病あるいは低カルシウム血症をもたらす。近年世界的にビタミンD欠乏が増加していることが報告されている。乳幼児のビタミンD欠乏の誘因としては、ビタミンD経口摂取の減少と紫外線照射減少であるが、日本全体におけるビタミンD欠乏症の発症率やそのリスク因子に関する検討はない。そこで本研究では平成28年度に2つの方法によりビタミンD欠乏の頻度とそのリスク因子を調査する。調査1: 何らかの症状を伴い外来受診した患者におけるビタミンD欠乏症患者の全国におけるアンケート調査(100例以上の患者数の把握)。調査2:乳児検診や肥満検診などにおける、25水酸化ビタミンD値低下例の頻度調査(1500例以上の対象者)。ビタミンD欠乏の誘因となる環境因子についても調査を行う。
研究方法
1. ビタミンD欠乏症のアンケートによる全国調査
日本小児内分泌学会によって公表された診断の手引きに基づいて診断されたビタミンD欠乏性くる病・低カルシウム血症の症例データを収集した。臨床検査データ、居住地域、屋外活動時間、サンスクリーンの使用の有無、母乳栄養の割合、離乳開始・終了時期、除去食の有無、サプリメント使用の有無、周産期データなどについても情報を収集した。ビタミンD欠乏症の頻度調査は、「難病の患者数と臨床疫学像把握のための全国疫学調査マニュアル第2版」に従い、病院要覧を元に、全国の病院の小児科2677から、病床別に、855病院を無作為に抽出した。
2. 血中25OHD濃度を指標としたビタミンD充足率のコホート研究
乳児健診受診者・定期受診で疾患のコントロールがついており健康状態に問題のない小児・小中学生を対象とした肥満検診受診者を対象としたコホート調査を行った。生活様式・食事状況・乳児期の栄養法・妊娠中の状況に関するアンケート用紙に保護者からの回答を得た。血中25OHD、Ca, P, ALP, iPTHを検査会社に委託して測定した。血中25OHD濃度と食事や外出、日焼け止め使用などの生活習慣との関連を解析し、関連する因子を抽出した。
日本小児内分泌学会によって公表された診断の手引きに基づいて診断されたビタミンD欠乏性くる病・低カルシウム血症の症例データを収集した。臨床検査データ、居住地域、屋外活動時間、サンスクリーンの使用の有無、母乳栄養の割合、離乳開始・終了時期、除去食の有無、サプリメント使用の有無、周産期データなどについても情報を収集した。ビタミンD欠乏症の頻度調査は、「難病の患者数と臨床疫学像把握のための全国疫学調査マニュアル第2版」に従い、病院要覧を元に、全国の病院の小児科2677から、病床別に、855病院を無作為に抽出した。
2. 血中25OHD濃度を指標としたビタミンD充足率のコホート研究
乳児健診受診者・定期受診で疾患のコントロールがついており健康状態に問題のない小児・小中学生を対象とした肥満検診受診者を対象としたコホート調査を行った。生活様式・食事状況・乳児期の栄養法・妊娠中の状況に関するアンケート用紙に保護者からの回答を得た。血中25OHD、Ca, P, ALP, iPTHを検査会社に委託して測定した。血中25OHD濃度と食事や外出、日焼け止め使用などの生活習慣との関連を解析し、関連する因子を抽出した。
結果と考察
1. ビタミンD欠乏症のアンケートによる全国調査
2016年までの3年間におけるビタミンD欠乏症の診療患者数を把握した。回答は458病院から得られ、把握されたビタミンD欠乏症患者数は合計250人であった。小児人口10万人当たりの年間発症率は1.13人(95%信頼区間:0.89~1.37)と算出された。計画を達成したので、論文報告を行う。
データ集積管理システムREDCapを用いて、ビタミンD欠乏症患者レジストリデータベースを構築した。代表および分担研究者により、77例が登録された。血清25水酸化ビタミンD(25OHD)は測定された65例中、62例が20 ng/ml以下、中間値11 ng/mlであった。さらに、症例を増加させて、100例となったので、同様な解析を行う。
2. 血中25OHD濃度を指標としたビタミンD充足率のコホート研究
中学1年生492人(男子247、女子245)に対し、5~7月に採血を実施し、血清25OHDをRIA法より測定した(単位ng/ml)。その結果、全体で21.5±3.3(14~31)、男子で22.2±3.3(15~31)、女子で20.9±3.1(14~29)であった。血清25OHD濃度20ng/ml以下は、全体では185人(37.6%)、15ng/ml以下は、全体では11人(2.2%)であった。今後、FGF23など他の検査データとの関連性を検討する。
健常幼児34人(平均年齢4.7歳)の検討では、平均25OHD濃度は24.8 ng/mlであった。25OHDの値が20ng/ml未満の児は4人(12%)、15ng/ml未満は1人(3%)であった。関東地方で5年前に行った研究では、20 ng/ml未満の小児が、夏期6%であり、ビタミンD不足率が増加している可能性がある。今後、さらに検討症例が増える見込みである。
ビタミンD欠乏状態の第一指標は血清25OHDの低値であるが、病院対象の調査からのビタミンD欠乏症推定発症率と、コホート研究からの推定率は大きく異なる。理由として、25OHD濃度のカットオフポイントの問題、症状出現のリスク因子の存在、身長増加速度の低下や骨吸収の増加など気づかれにくい症状を見逃している可能性などが考えられる。これらを明らかにし、「妊産婦及び乳幼児の栄養管理の支援のあり方に関する研究」班と連携して、ビタミンD欠乏の予防に積極的に取り組む。
2016年までの3年間におけるビタミンD欠乏症の診療患者数を把握した。回答は458病院から得られ、把握されたビタミンD欠乏症患者数は合計250人であった。小児人口10万人当たりの年間発症率は1.13人(95%信頼区間:0.89~1.37)と算出された。計画を達成したので、論文報告を行う。
データ集積管理システムREDCapを用いて、ビタミンD欠乏症患者レジストリデータベースを構築した。代表および分担研究者により、77例が登録された。血清25水酸化ビタミンD(25OHD)は測定された65例中、62例が20 ng/ml以下、中間値11 ng/mlであった。さらに、症例を増加させて、100例となったので、同様な解析を行う。
2. 血中25OHD濃度を指標としたビタミンD充足率のコホート研究
中学1年生492人(男子247、女子245)に対し、5~7月に採血を実施し、血清25OHDをRIA法より測定した(単位ng/ml)。その結果、全体で21.5±3.3(14~31)、男子で22.2±3.3(15~31)、女子で20.9±3.1(14~29)であった。血清25OHD濃度20ng/ml以下は、全体では185人(37.6%)、15ng/ml以下は、全体では11人(2.2%)であった。今後、FGF23など他の検査データとの関連性を検討する。
健常幼児34人(平均年齢4.7歳)の検討では、平均25OHD濃度は24.8 ng/mlであった。25OHDの値が20ng/ml未満の児は4人(12%)、15ng/ml未満は1人(3%)であった。関東地方で5年前に行った研究では、20 ng/ml未満の小児が、夏期6%であり、ビタミンD不足率が増加している可能性がある。今後、さらに検討症例が増える見込みである。
ビタミンD欠乏状態の第一指標は血清25OHDの低値であるが、病院対象の調査からのビタミンD欠乏症推定発症率と、コホート研究からの推定率は大きく異なる。理由として、25OHD濃度のカットオフポイントの問題、症状出現のリスク因子の存在、身長増加速度の低下や骨吸収の増加など気づかれにくい症状を見逃している可能性などが考えられる。これらを明らかにし、「妊産婦及び乳幼児の栄養管理の支援のあり方に関する研究」班と連携して、ビタミンD欠乏の予防に積極的に取り組む。
結論
病院を対象とした調査および小児肥満検診対象者による血清25OHD測定では、ビタミンD欠乏症発症者およびビタミンD欠乏は稀ではなく、今後、ビタミンD欠乏症の発症予防対策が必要である。
公開日・更新日
公開日
2018-06-01
更新日
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