文献情報
文献番号
201606005A
報告書区分
総括
研究課題名
先天性心疾患児の成人期以降も含めた長期予後の把握のあり方に関する研究
課題番号
H27-健やか-一般-002
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
白石 公(国立研究開発法人 国立循環器病研究センター 小循環器・周産期部門)
研究分担者(所属機関)
- 小川 久雄(国立循環器病研究センター)
- 安田 聡(国立循環器病研究センター)
- 大内 秀雄(国立循環器病研究センター 小児循環器部)
- 市川 肇(国立循環器病研究センター 小児心臓血管外科)
- 吉松 淳(国立循環器病研究センター 周産期・婦人科)
- 西村 邦宏(国立循環器病研究センター・医療統計学)
- 丹羽 公一郎(聖路加国際病院・心血管センター)
- 安河内 聰(長野県立こども病院)
- 賀藤 均(国立成育医療研究センター)
- 八尾 厚史(東京大学医学部 保健健康推進本部)
- 赤木 禎治(岡山大学病院・成人先天性心疾患センター・小児循環器学)
- 市田 蕗子(富山大学医学部 小児科)
- 落合 亮太(横浜市立大学 医学部 看護学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
5,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本には現在約45万人の先天性心疾患患者患者が存在すると推定されている(Int J Cardiol. 2011;146:13-6.)。これらの患者は、年齢面から小児科施設で受け入れが困難な一方、複雑な血行動態から内科施設でも敬遠される傾向にある。また一部の患者では、病気に対する理解不足から、思春期以降に診療を自己中断してしまうケースも少なくない。このような理由から、日本における成人先天性心疾患患者の実態の詳細は不明であり、患者に必要な集学的診療体制の確立や、医療・社会保障の充実を妨げてきた。成人先天性心疾患患者を適切に管理し、その生命予後を改善するとともに、生活の質を向上させるには、患者の実態を把握することが必須である。患者レジストリシステムを確立し、全国各地域で患者がどのように分布し診療を受けているかを把握し、診療連携と診療体制を確立する。
研究方法
班研究から立ち上がった循環器内科拠点施設「ACHDネットワーク」を利用して、地域の成人先天性心疾患診療の中核を担う施設を全国に約35カ所認定し、各地域の医療事情に応じた診療連携を実行する。本研究班から各地域の中核施設やこども病院に情報提供および提言を行い、地域ごとに新たに生じる問題点を収集し、その対策を協議する。最終的に各地域内でこども病院から拠点施設へ、小児科から内科へ、地域の中核施設から拠点施設への診療連携ネットワークを都道府県レベルで確立する。
結果と考察
成人先天性心疾患患者のレジストリシステムが構築されれば、日本での成人患者の実態が把握でき、それにより全国各地域の医療情勢に適した診療体制および診療連携を構築することができる。その結果、小児専門施設でも循環器内科施設でも受け入れが困難で、不整脈や心不全、妊娠出産の際に病状が急変することのある成人先天性心疾患患者が、安心して通院や入院治療を受けることが可能になる。最終的には、全国各地域、具体的には都道府県レベルでの診療連携、特に小児科と内科、地域病院と拠点施設の確間の連携の確立をめざす。
結論
昨年に比し、参加施設は33から35施設と増加し、レジストリー症例数報告施設は20施設と昨年度の15施設から増加したものの依然15施設からの登録が得られていない。そして、レジストリー症例数は6396例と昨年比43%増加した。今後の各施設の症例数の増加は十分期待でき、加えて残りの施設からの登録を得られれば、1-2万例以上の登録は十分に期待できる。詳細データを登録した施設数は6施設であったが、その症例数分布は全体と比較しても大きなばらつきの違いは無く、全体を反映していると考えられる。通院が必要なACHD患者に占める重篤な病態の割合など推定する材料としては有用と考える。しかしながら、より詳細な解析を行うためには、できるだけ早い全施設でのレジストリーの登録が望まれるのはもちろんであるが、いまだ参加施設がない地域もあり、JNCVD-ACHD参加施設の増加への働きかけも引き続き行う必要がある。このレジストリー推進により各施設からの多施設臨床研究の立ち上げへとつながることも十分に期待できる。
公開日・更新日
公開日
2017-06-27
更新日
-