小児摂食障害におけるアウトカム尺度の開発に関する研究 -学校保健における思春期やせの早期発見システムの構築、および発症要因と予後因子の抽出にむけて-

文献情報

文献番号
201606001A
報告書区分
総括
研究課題名
小児摂食障害におけるアウトカム尺度の開発に関する研究 -学校保健における思春期やせの早期発見システムの構築、および発症要因と予後因子の抽出にむけて-
課題番号
H26-健やか-一般-001
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
内田 創(獨協医科大学越谷病院 子どものこころ診療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 深井 善光(東京都立小児総合医療センター 心療小児科)
  • 永光信一郎(久留米大学医学部 小児科)
  • 角間 辰之(久留米大学 バイオ統計センター)
  • 作田 亮一(獨協医科大学越谷病院 子どものこころ診療センター)
  • 井口 敏之(星ヶ丘マタニティ病院 小児科)
  • 小柳 憲司(長崎県立こども医療福祉センター 小児科)
  • 北山 真次(神戸大学医学部附属病院 発達行動小児科学)
  • 岡田 あゆみ(土居 あゆみ)(岡山大学病院小児医療センター 子どものこころ診療部)
  • 井上 建(獨協医科大学越谷病院 子どものこころ診療センター)
  • 鈴木 雄一(福島医科大学病院 小児科)
  • 鈴木 由紀(国立病院機構三重病院 小児科)
  • 須見よし乃(札幌医科大学付属病院 小児科)
  • 高宮 静男(西神戸医療センター 精神神経科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2001年度から2014年度まで実施された健やか親子21第一次計画では、さまざまな健康指標が改善されたが、悪化した指標として、1.十代の自殺率の上昇と2.低出生体重児の割合の増加があった。思春期やせ症の割合は減少に転じたものの、不健康なやせ(BMI18.5以下)の比率は中学3年生において10年間で5.5%から19.6%と増加している。新生児の低体重化の原因として妊婦の痩身化が影響を及ぼしているものと思われる。健やか親子21の第二次計画では重点課題のひとつとして、「学童期・思春期から成人期に向けた保健対策」が掲げられ、思春期やせの防止に対する施策は依然として重要な位置づけとされている。我々は3年間の研究期間(2014~16年度)内の目標として、①学校健診における思春期やせ症の早期発見システムの確立(2014~15年度)、②思春期やせ症の予後に影響を与える因子の分析(2014~16年度)、③やせを来す要因の解析(2015年度)を掲げた。
研究方法
2016年度はそれらを踏まえて、34項目の予後因子と1年間のBMI-SDSの推移を統計的に比較検討し短期予後に影響を与える因子を抽出した。また、疾患分類の概要、中断例、自閉傾向、QOL、精神病理を踏まえた多軸評定、治療早期の体重増加と予後、血液検査所見、抑うつ傾向などの検討も合わせて行った。
結果と考察
今回のエントリー症例(全131例、1年後アウトカム取得88例)から得られたアウトカムを総合的にみてみると、本人の病前性格やQOL・抑うつ傾向の回復、家族の理解や支えなどは短期予後に影響を与えることがわかった。このことから本人・家族への早期介入の必要性が示唆された。また初診までの体重減少率が高いほうが予後は改善傾向であり、むしろ緩徐に体重が低下していくほうが、周囲に気がつかれず早期発見・早期治療に結びつけることが困難であることが示唆された。今後は複数年の長期予後を前方視的に集計し検討していく予定である。
結論
研究期間を通して131例の新規の小児摂食障害のエントリーがあり、そのうち1年間のアウトカムが出ている88例の予後に影響を与える因子として34項目の予後因子に加えてQOL、自閉症スペクトラム指数、うつ尺度、血液検査、知能検査などとの検討をおこなった。また、今回の3年間の発症要因や予後因子の研究から得られた知見を利用して、家族や学校むけのパンフレットを作成した。そしてこれらの結果と今後の長期予後の結果を利用して、小児摂食障害の早期発見・早期治療の必要性を啓蒙していく。

公開日・更新日

公開日
2017-05-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2017-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201606001B
報告書区分
総合
研究課題名
小児摂食障害におけるアウトカム尺度の開発に関する研究 -学校保健における思春期やせの早期発見システムの構築、および発症要因と予後因子の抽出にむけて-
課題番号
H26-健やか-一般-001
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
内田 創(獨協医科大学越谷病院 子どものこころ診療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 深井 善光(東京都立小児総合医療センター 心療小児科)
  • 永光信一郎(久留米大学医学部 小児科)
  • 角間 辰之(久留米大学 バイオ統計センター)
  • 作田 亮一(獨協医科大学越谷病院 子どものこころ診療センター)
  • 井口 敏之(星ヶ丘マタニティ病院 小児科)
  • 小柳 憲司(長崎県立こども医療福祉センター 小児科)
  • 北山 真次(神戸大学医学部附属病院 発達行動小児科学)
  • 岡田 あゆみ(土居 あゆみ)(岡山大学病院小児医療センター 子どものこころ診療部)
  • 井上 建(獨協医科大学越谷病院 子どものこころ診療センター)
  • 鈴木 雄一(福島医科大学病院 小児科)
  • 鈴木 由紀(国立病院機構三重病院 小児科)
  • 須見よし乃(札幌医科大学付属病院 小児科)
  • 高宮 静男(西神戸医療センター 精神神経科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本邦における児童・思春期の摂食障害(思春期やせ症)の予後または転帰に関する調査研究はない。我々は新規患者の登録制度を実施し、摂食障害の中核症状の程度、心理社会的因子の内容を厳密に討議し、主観的判断と施設間格差を最小限にした前方視的アウトカム(予後)スコアを作成し、患者の継続観察を開始した。アウトカムスコアは、摂食障害の中核症状に家族、家庭、学校環境を含めた12項目、36点からなる。3年間の研究期間中に以下の3点について明らかにする事で、思春期やせ症とそれに伴う心身の二次的健康被害の防止を行政的施策とした。
①学校保健における思春期やせ症の早期発見システムの構築(2014,2015年度)
②やせを来す要因の解析(2015年度)
③思春期やせ症の予後に影響を与える因子を分析(2016年度)
研究方法
2014年度は諸外国で汎用されている質問紙EAT-26の日本語版を原著の許可を得て作成し標準化をおこなった。また新規患者のエントリーを開始した。2015年度には2014年4 月から2015年8月の間に全国11箇所の共同研究施設においてDSM-5 (Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disuo0ders 5th ed.)またはGOSC(Great Ormond street criteria)を用いて摂食障害と診断され新規エントリーされた患者94名のアウトカムを集計し、やせの要因、発症の要因などを解析した。2016年度には2014年4 月から2016年8月の間に新規エントリーされた患者131名のうち、1年後のアウトカムデータが取得できている88例を集計し、予後に影響を与える因子を解析した。
結果と考察
2014年度、約7000人分の児童生徒のEAT-26データの集計・解析しカットオフ値を算出し標準化をおこなった。2015年度の結果からは思春期やせ症の患者では情緒的健康や友達との関係でQOLが低下し、自閉傾向も高い症例が多かった。そして本人自身の頑張り屋の病前性格や核家族などの家族背景もあり、さらに学校ではクラスメートと馴染めないことから家庭や学校でコミュニケーションが取りづらく孤立してしまう症例が多いと考えられた。
 また2016年度の結果からは、本人の病前性格やQOL・抑うつ傾向の回復、家族の理解や支えなどは短期予後に影響を与えることがわかった。このことから本人・家族への早期介入の必要性が示唆された。また初診までの体重減少率が高いほうが予後は改善傾向であり、むしろ緩徐に体重が低下していくほうが、周囲に気がつかれず早期発見・早期治療に結びつけることが困難であることが示唆された。
結論
研究期間を通して131例の新規の小児摂食障害のエントリーがあり、そのうち1年間のアウトカムが出ている88例の予後に影響を与える因子として34項目の予後因子に加えてQOL、自閉症スペクトラム指数、うつ尺度、血液検査、知能検査などとの検討をおこなった。また、今回の3年間の発症要因や予後因子の研究から得られた知見を利用して、家族や学校むけのパンフレットを作成した。そしてこれらの結果と今後の長期予後の結果を利用して、小児摂食障害の早期発見・早期治療の必要性を啓蒙していく。

公開日・更新日

公開日
2017-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201606001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本邦における児童・思春期の摂食障害(思春期やせ症)の予後または転帰に関する調査研究はなく、海外でも後方視的な研究のみである。今回我々は新規患者の登録制度を実施し、摂食障害の中核症状の程度、心理社会的因子の内容を厳密に討議し、主観的判断と施設間格差を最小限にした前方視的アウトカム(予後)スコアを作成し、患者の継続観察を開始し思春期やせ症をきたす要因や予後に影響を与える因子を分析し、その結果を日本小児心身医学会にて発表した。
臨床的観点からの成果
今回の結果から小児摂食障害患者本人の病前性格やQOL・抑うつ傾向の回復、また家族の理解や支えなどは短期予後に影響を与えることがわかった。このことから本人・家族への早期介入の必要性が示唆された。また初診までの体重減少率が高いほうが予後は改善傾向であり、むしろ緩徐に体重が低下していくほうが、周囲に気がつかれず早期発見・早期治療に結びつけることが困難であることが示唆された。そのため、今回我々は患者本人を支える環境にある家族や学校むけにパンフレットを作成し早期発見・早期治療に繋げていく試みをおこなった。
ガイドライン等の開発
2014年度、本研究事業の初年度の研究計画として、児童生徒の摂食態度を網羅的に評価し、思春期やせ症の早期発見スクリーニングと、思春期やせ症の病勢を反映することのできる質問紙、日本語版EAT-26 の標準化を予定どおりに実施することができた。2016年度、今回開発した小児摂食障害予後評価スケールは身体的側面(中核症状を含む)と心理社会的側面の要素を含み、いずれも経時的な予後(BMI-SDS)に有意に相関することが明らかとなった。
その他行政的観点からの成果
3年間の研究期間中に以下の3点について明らかにする事で、思春期やせ症とそれに伴う心身の二次的健康被害の防止を行政的施策とした。
①学校保健における思春期やせ症の早期発見システムの構築(2014,2015年度)
②やせを来す要因の解析(2015年度)
③思春期やせ症の予後に影響を与える因子を分析(2016年度)
その他のインパクト
特記すべきことなし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2017-06-12
更新日
2021-06-03

収支報告書

文献番号
201606001Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,500,000円
(2)補助金確定額
6,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,608,313円
人件費・謝金 182,220円
旅費 1,870,257円
その他 1,339,210円
間接経費 1,500,000円
合計 6,500,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2018-06-01
更新日
-