文献情報
文献番号
201605035A
報告書区分
総括
研究課題名
診療情報集積基盤(NCDA)を用いた、疾病ベースラインデータベースの構築と予防接種施策への活用を見据えた探索的研究
課題番号
H28-特別-指定-028
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 澄信(独立行政法人国立病院機構本部 総合研究センター)
研究分担者(所属機関)
- 谷口 清州(独立行政法人国立病院三重病院 臨床研究部)
- 大門 貴志(兵庫医科大学医学部 医療統計学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
3,077,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
予防接種の有効性・安全性の評価に際し、対象疾患の発症率や特定疾患の因果関係を評価することが不可欠である。しかしながら、有効性・安全性を評価するためにプラセボ対照臨床試験を実施することは困難なため、ベースラインデータを利用した評価が期待されている。現在国内にはいくつかの臨床データベースが存在するが、その中でも独立行政法人国立病院機構(NHO:National Hospital Organization)が構築した、高い人口カバー率と即時性、幅広いデータ種をもった診療情報集積基盤(NCDA:NHO Clinical Data Archives)を活用することで、上記評価が可能なベースラインデータの構築が可能と考える。本研究では、パイロットケースとして、いくつかの疾病に絞りNCDAから抽出可能なデータを解析することで、今後の発展可能性を探る探索的研究を行うことを目的とする。
研究方法
国立病院機構病院でNCDAに参加している病院(2016年4月41病院)より提出されたSS-MIX2データ、国立病院機構143病院から提供されているMIA(Medical information analysis databank、診療情報データバンク)に集積されているレセプト・DPCデータからロタウイルス感染症、ノロウイルス感染症、クロストリジウム・ディフィシル抗原、流行性耳下腺炎などのワクチンが今後、開発・普及される疾患の検査値ならびにギラン・バレー症候群、乳幼児の腸重積などのワクチンに関連して発現しうる疾患のバックグランドデータを抽出し、検討する。
結果と考察
NCDAからSS-MIX2データとして36病院から6,956名、延べ12,041件の検体結果が抽出されたが、病院からの提供件数は最小2件、最大1497件(中央値215件)とばらつきがみられた。また、臨床現場即時検査の検査陽性率は全体として10-20%程度(ロタウイルスウイルス抗原13.8%、ノロウイルスウイルス抗原12.5%、クロストリディウムディフィシル抗原8.6%、ロタウイルス+アデノウイルスウイルス抗原12.0%)であり、また疾患流行時に検査陽性率が高くなった。しかしながら、現在のシステムでは即時的にデータ収集ができないことが明らかになった。ギラン・バレー症候群は疑い例も含めて124件、ADEMは疑い例も含めて23件、乳児の腸重積は121件抽出された。
結論
流行性疾患を自動的に検出するためには、システム上の問題を解決する必要がある。ワクチンに関連して発現しうる疾患について一定程度のバックグラウンドデータが捕捉されることが期待され、経時的にモニタリングすることは有用となる可能性が示唆された。
公開日・更新日
公開日
2017-05-31
更新日
2017-06-09