文献情報
文献番号
201605034A
報告書区分
総括
研究課題名
検疫業務の質的向上に向けた検疫制度に関する研究
課題番号
H28-特別-指定-038
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
亀井 美登里(埼玉医科大学 医学部 社会医学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
800,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
諸外国の検疫関係法令及び国内の検疫課題に関する調査を通じて、我検疫法令に改善を要する場合の具体事項を明らかにすることにより、将来、検疫法改正を検討する場合の基礎資料に資することを目的とする。
研究方法
第1段階:全国の検疫所に対し、検疫法令上の具体的な課題についてアンケート調査やヒアリング調査を実施。第2段階:諸外国12カ国の検疫法令等の状況について、文献調査等を実施。第3段階:上記の米国、英国、オーストラリア、韓国については現地調査を実施。第4段階:上記1の調査で明らかにされた法令上の課題及び上記2及び3の調査結果による諸外国等の検疫関係法令の状況を踏まえ、上記1の調査結果を加味し、検疫法改正の必要性について総合的に研究する。我が国の検疫業務の拠り所となる検疫法は、昭和26年に制定されて以来、その枠組に大きな変更がない中、昨今の科学技術の著しい進展による輸送機関の発達等により、より短時間で諸外国から一度に多くの者が航空機や船舶を通じて来訪できるようになったことから、現行の我が国の検疫法が検疫業務の現状に十分対応できているかどうかについて、諸外国における検疫関連法令の状況や我が国の検疫所の意見等を調査し、それらの調査結果を踏まえて現行の検疫法の妥当性等を研究した結果、我が国の検疫法令は、国際的により一層整合性のあるかつ現実的な法令規定に改正する必要性のあることが明らかとなった。
結果と考察
全国の検疫所の意見を調査した結果、我が国の検疫法令については、
ア.一部の検疫感染症の新たな知見とそれらの措置が、適切にマッチングしていない法
令上の規定箇所があること、
イ.現行の検疫法が、現在の検疫業務の実態とかけ離れ、検疫法の但し書き事項を常態
的に活用した形で運用されている規定箇所があること、
ウ.基準等が明確になっていない規定箇所があること
等が明らかになるとともに、これらについては所要の法令改正の必要性が明らかになった。
具体例は次のとおり。
○法第2条(検疫感染症)関係
検疫法第2条第3号に記載の検疫感染症の中で、中東呼吸器症候群(MERS)や鳥インフルエンザA(H5N1・H7N9)のように限局的「ヒト-ヒト」感染の知見を有することが明らかになった感染症も他の感染症と同列に指定されているため、検疫措置内容の違いに応じて、改めて法的な整備を実施する必要がある。併せて、感染症法、入管法と齟齬が生じており、これらを合わせるべきである。
○法第18条(仮検疫済証の交付)第2項、第3項、第26条の3(都道府県知事等との連携)関係
検疫感染症の中で、新型インフルエンザ等感染症とその他の検疫感染症では、健康監視の対応は検疫所か地方自治体かで対応が異なるが、医学上の観点からは区別する必然性はない。一方、水際対策を担う検疫所と国内対策を担う地方自治体との連携及び役割分担の観点から鑑みると、健康監視の対象者は居住地に近い地方自治体における健康監視の質が検疫所のそれと同等以上に確保されるのであれば、「属地的」な観点からも検疫感染症全て国内対策を担う地方自治体で行われるのが合理的である。
○法第3条、第8条第4項関係
検疫港・検疫飛行場、無線検疫対象港(非検疫港)、非検疫飛行場の法律上の取扱いに関して、それらの定義及び指定基準を明確化する必要がある。
○法第5条、第6条、第8条、第12条関係
いわゆる「ブース検疫」の根拠は、検疫法第5条に規定される「検疫飛行場ごとに検疫所長が指定する場所」とされているが、検疫実施区域ならば検疫法第8条の検疫区域(告示)に明確に規定する必要がある。
また、諸外国の検疫関係法令を鳥瞰するに、各国とも大枠においては国際保健規則(IHR)の考え方を基にしていることから、将来、我が国の検疫法の改正の際には、IHRの考え方をも遵守する方向で検討する必要があろう。
ア.一部の検疫感染症の新たな知見とそれらの措置が、適切にマッチングしていない法
令上の規定箇所があること、
イ.現行の検疫法が、現在の検疫業務の実態とかけ離れ、検疫法の但し書き事項を常態
的に活用した形で運用されている規定箇所があること、
ウ.基準等が明確になっていない規定箇所があること
等が明らかになるとともに、これらについては所要の法令改正の必要性が明らかになった。
具体例は次のとおり。
○法第2条(検疫感染症)関係
検疫法第2条第3号に記載の検疫感染症の中で、中東呼吸器症候群(MERS)や鳥インフルエンザA(H5N1・H7N9)のように限局的「ヒト-ヒト」感染の知見を有することが明らかになった感染症も他の感染症と同列に指定されているため、検疫措置内容の違いに応じて、改めて法的な整備を実施する必要がある。併せて、感染症法、入管法と齟齬が生じており、これらを合わせるべきである。
○法第18条(仮検疫済証の交付)第2項、第3項、第26条の3(都道府県知事等との連携)関係
検疫感染症の中で、新型インフルエンザ等感染症とその他の検疫感染症では、健康監視の対応は検疫所か地方自治体かで対応が異なるが、医学上の観点からは区別する必然性はない。一方、水際対策を担う検疫所と国内対策を担う地方自治体との連携及び役割分担の観点から鑑みると、健康監視の対象者は居住地に近い地方自治体における健康監視の質が検疫所のそれと同等以上に確保されるのであれば、「属地的」な観点からも検疫感染症全て国内対策を担う地方自治体で行われるのが合理的である。
○法第3条、第8条第4項関係
検疫港・検疫飛行場、無線検疫対象港(非検疫港)、非検疫飛行場の法律上の取扱いに関して、それらの定義及び指定基準を明確化する必要がある。
○法第5条、第6条、第8条、第12条関係
いわゆる「ブース検疫」の根拠は、検疫法第5条に規定される「検疫飛行場ごとに検疫所長が指定する場所」とされているが、検疫実施区域ならば検疫法第8条の検疫区域(告示)に明確に規定する必要がある。
また、諸外国の検疫関係法令を鳥瞰するに、各国とも大枠においては国際保健規則(IHR)の考え方を基にしていることから、将来、我が国の検疫法の改正の際には、IHRの考え方をも遵守する方向で検討する必要があろう。
結論
我が国の検疫業務の拠り所となる検疫法は、昭和26年に制定されて以来、その枠組に大きな変更がない中、昨今の科学技術の著しい進展による輸送機関の発達等により、より短時間で諸外国から一度に多くの者が航空機や船舶を通じて来訪できるようになったことから、現行の我が国の検疫法が検疫業務の現状に十分対応できているかどうかについて、諸外国における検疫関連法令の状況や我が国の検疫所の意見等を調査し、それらの調査結果を踏まえて現行の検疫法の妥当性等を研究した結果、我が国の検疫法令は、国際的により一層整合性のあるかつ現実的な法令規定に改正する必要性のあることが明らかとなった。
公開日・更新日
公開日
2017-05-29
更新日
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