文献情報
文献番号
201605033A
報告書区分
総括
研究課題名
ヘリコバクター・ピロリ除菌の保険適用による胃がん減少効果の検証
研究課題名(英字)
-
課題番号
H28-特別-指定-036
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
上村 直実(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 国府台病院)
研究分担者(所属機関)
- 加藤元嗣(国立病院機構 国立函館病院)
- 藤森研司(東北大学)
- 村上和成(大分大学)
- 菊地正悟(愛知医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
1,514,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
わが国における胃がんの年齢調整死亡率が著明に減少していることが周知されているが、この減少については胃がん検診の普及が大きく寄与してきたものと考えられる。一方、最近の知見から、胃がん減少の大きな要因として、胃がんの発症に深くかかわるヘリコバクター・ピロリ(以後、ピロリ)の感染率低下や除菌治療の普及が推測されている。
平成25年2月、わが国では、世界で初めて内視鏡検査と感染検査で診断されたピロリ感染胃炎に対する除菌治療が公的に保険適用とされたことにより、わが国における胃がん死亡者が減少することが期待されている。しかし、胃がん死亡率や死亡者数の低下に対するピロリ除菌の影響に関する明確な証拠はまだ明らかにされていない。
以上の背景から、本研究では『ピロリ感染胃炎に対する除菌治療の保険適用による胃がん減少効果を検証すること』を本研究の目的とした。
平成25年2月、わが国では、世界で初めて内視鏡検査と感染検査で診断されたピロリ感染胃炎に対する除菌治療が公的に保険適用とされたことにより、わが国における胃がん死亡者が減少することが期待されている。しかし、胃がん死亡率や死亡者数の低下に対するピロリ除菌の影響に関する明確な証拠はまだ明らかにされていない。
以上の背景から、本研究では『ピロリ感染胃炎に対する除菌治療の保険適用による胃がん減少効果を検証すること』を本研究の目的とした。
研究方法
本研究は、主任研究者、分担研究者および研究協力者が手分けして、胃がん死亡者・胃がん死亡率の推移、ピロリ菌感染率の推移、ピロリ感染率と胃がん死亡率の関連、さらに、ピロリ感染胃炎に対する除菌治療が保険適用された2013年前後の胃がん死亡者数などについて文献的な調査を行い、統計学的な解析および考察を加えて、研究班全体で統合した本報告書を作成した。
結果と考察
1975~2012年までの国立がん研究センターの公開データに基づいた2013~2015年の予測値と実測値(男女別)とを比較検討した結果、胃がん死亡率および死亡者数は若年者を中心として明らかに減少しているが、2013年の保険適用により死亡率の減少が著明に変化した客観的な統計学的証拠を見いだすことはできなかった。一方、ピロリ感染率について文献的に詳細な検討を行った結果、現時点での高齢者の感染率は50%以上であるが、若年者を中心にピロリ感染率が急速に低下していることが示唆された。さらにピロリ感染率の推移と胃がん死亡率の検討を行った結果、若年者における胃がん死亡率の低下はピロリ感染率の低下によるものと推察された。
2000年に胃潰瘍、十二指腸潰瘍に対する除菌治療が保険適用となって以降の胃がん死亡者数の推測値と実測値の検討から、次第に広がる除菌治療の普及による胃がん死亡者数減少効果が徐々に表れていることが示唆された。除菌治療のピロリ感染胃炎に対する適用拡大により、除菌による直接効果より内視鏡検査件数の増加に伴う胃がんの早期発見および内視鏡的手術件数の増加が胃がんの死亡者数減少に寄与している可能性が推測された。
日本における家族性胃がん家系と症例の経過観察により、ピロリ未感染者は胃がんで死亡することを考慮する必要がないことが示唆され、胃がん検診において特に若年者においてはピロリ感染動態を検査する方法を取り入れる必要があるものと考えられた。
2000年に胃潰瘍、十二指腸潰瘍に対する除菌治療が保険適用となって以降の胃がん死亡者数の推測値と実測値の検討から、次第に広がる除菌治療の普及による胃がん死亡者数減少効果が徐々に表れていることが示唆された。除菌治療のピロリ感染胃炎に対する適用拡大により、除菌による直接効果より内視鏡検査件数の増加に伴う胃がんの早期発見および内視鏡的手術件数の増加が胃がんの死亡者数減少に寄与している可能性が推測された。
日本における家族性胃がん家系と症例の経過観察により、ピロリ未感染者は胃がんで死亡することを考慮する必要がないことが示唆され、胃がん検診において特に若年者においてはピロリ感染動態を検査する方法を取り入れる必要があるものと考えられた。
結論
胃がんの発症さらに胃がんの進展にはピロリ感染の有無が大きく関わっており、ピロリ未感染者に胃がんの発症は稀であり、たとえ胃がんが発症しても進行がんへの進展が緩徐である可能性がが示唆された。
除菌自体の直接的な胃がん抑制効果が死亡率の低下に寄与する明確なエビデンスは得られなかったが、除菌の保険適用拡大に伴って臨床現場における内視鏡検査の増加が死亡者数の減少に寄与していることが示唆された。
以上の成果から、胃がん検診にピロリ感染動態のチェックを含めることが肝要と思われた。すなわち、胃X線検診や内視鏡検診の際にデジタル画像とAIを用いてピロリ感染の有無を判定可能にするシステムの開発などが必要と思われた
除菌自体の直接的な胃がん抑制効果が死亡率の低下に寄与する明確なエビデンスは得られなかったが、除菌の保険適用拡大に伴って臨床現場における内視鏡検査の増加が死亡者数の減少に寄与していることが示唆された。
以上の成果から、胃がん検診にピロリ感染動態のチェックを含めることが肝要と思われた。すなわち、胃X線検診や内視鏡検診の際にデジタル画像とAIを用いてピロリ感染の有無を判定可能にするシステムの開発などが必要と思われた
公開日・更新日
公開日
2017-06-23
更新日
-