NDB・DPCデータを用いた循環器・血液領域の医療の質の評価に関する研究

文献情報

文献番号
201605032A
報告書区分
総括
研究課題名
NDB・DPCデータを用いた循環器・血液領域の医療の質の評価に関する研究
課題番号
H28-特別-指定-035
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
野田 龍也(公立大学法人 奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 今村 知明(公立大学法人 奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
  • 安田 聡(国立循環器病研究センター)
  • 天野 景裕(東京医科大学 臨床検査医学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
(循環器領域)
冠動脈インターベンション(PCI)に関する平成23年ガイドラインでは、安定冠動脈疾患に対して、冠動脈の有意狭窄及び心筋虚血の存在する患者が待機的PCIの施行対象とされている。しかし、我が国では虚血の評価をせずに施行されているPCIが相当数存在することが示唆されている。本研究は、大規模全国データを用い、各種の指標を分析することにより、PCI術前の虚血検査の実態解明に資する基礎資料を提供することを目的としている。
(血液領域)
本研究の目的は、既存調査により全国の患者数がおおむね把握され、標準的治療の全国均てん化への社会的な要望が高いと判断された血液凝固異常症(血友病等)を対象とし、レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)を用い、血液凝固異常症の患者数や血液製剤の使用量、HIV合併率を地域差などを含め把握することで、血液凝固異常症の標準的な治療法の普及に資する基礎的なデータを提供することである。


研究方法
(循環器領域)
本研究は、平成26年7月~平成28年3月にDPC対象病院に入院した、安定冠動脈疾患に対してPCIを施行された患者を対象とし、厚生労働科学研究班DPCデータベース及び病床機能報告データを用いて分析を行った。
術前90日以内の外来での各虚血検査と冠動脈CT、PCI術中の冠血流予備能比測定 (FFR)を対象検査とし、施設ごとの対象検査の施行率をDPC種類別、病床数別、地域別で比較した。また、対象病院のPCI全件数、PCI全件数における緊急PCIの割合、冠動脈バイパス術(CABG)症例数の相関を見た。
(血液領域)
平成25年4月から平成26年3月のNDBを用い、各集計を行った(血液凝固異常症の患者数の算出、血液凝固異常症患者に対し投薬された血液製剤ごとの使用量の算出、血液凝固異常症患者に対し手術前医学管理料が算定された月に投薬された各血液製剤の使用量の算出、血液凝固異常症患者に対し算定された在宅自己注射指導管理料および静脈内注射実施料の回数の算出、血液凝固異常症の患者を有し、かつ抗HIV薬を投薬されている患者数の算出)。これらの算出は、必要に応じ、傷病名別・男女別・年齢階級別・地域別・診療年月別にも行った。複数レセプトを患者単位に集約する名寄せには、ID1を用いた。
結果と考察
(循環器領域)
DPC対象病院226施設において施行された、安定冠動脈疾患に対する待機的PCI延べ 15,522件を対象とした。対象施設の虚血検査全体の平均施行率は、37.8%であった。病床数に応じて虚血検査施行率が高くなる傾向は認めなかった。地域別では、東北、中部、中国四国、九州で全国平均より平均虚血検査施行率が高く、北海道、北関東、南関東、関西で低かった。虚血検査施行率、冠動脈CT施行率ともに、同じ地域でも施設間で施行状況に大きな偏りがあった。虚血検査の施行率、冠動脈CTの施行率と、各施設でのPCI件数、全PCIにおける緊急PCIの割合、CABG症例数での明らかな相関は認めなかった。
(血液領域)
患者数の推計では、血友病Aが5,978人、血友病Bが1,579人、von Willebrand病が5,090人と算出された。血液凝固異常症の患者が使用した血液製剤の使用量の集計では、コージネイトFSが約1億6000万単位、クロスエイトMCが約2800万単位等であった。血液凝固異常症の患者に対し手術前医学管理料が算定された月における血液製剤の使用は、ほとんどがゼロと算出された。血液凝固異常症の患者に対し算定された在宅自己注射指導管理料では、人口あたりの算定回数の差は小さかった。しかし、静脈内注射の算定回数は地域差を認めた。血液凝固異常症とHIV感染症の合併患者数は、血友病Aで475人、血友病Bで145人、von Willebrand病で21人であった。本研究で推計した患者数は、平成26年度「血液凝固異常症全国調査」報告書と比べて多い。この理由として、ID1の重複カウントと疑い病名の存在が考えられ、それらへの対応によりより精緻な集計が可能となる。
結論
循環器領域については、高機能施設や病床数の大きい施設では虚血検査施行率が高くなる傾向を認めたが、明らかな相関は認めなかった。冠動脈CT施行率と、病院機能、病床数との関連は小さいことが示唆された。また、虚血検査未施行の原因には地域要因も関連することが示唆された。血液領域については、血液凝固異常症の患者数について全国調査に準ずる結果となり、NDBを用いた全国集計に一定の妥当性が与えられた。

公開日・更新日

公開日
2017-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201605032C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究の成果は、ガイドラインに即した標準的な医療を幅広く達成するための基礎的な資料である。本課題は、今まで必要とされつつも達成困難であったが、臨床専門家と大規模データの専門家の密な協働により成果が得られた。本成果は、臨床分野の専門家と行政の担当部署に提供される。本研究課題は、関連学会及び行政において需要があり、今後、学会指針及び厚生労働行政施策の基礎資料として活用されることが期待される。また、本研究の手法は臨床医学の他領域についても応用可能なため、研究成果の幅広い展開が期待される。
臨床的観点からの成果
特記事項なし。
ガイドライン等の開発
本研究の成果は、ガイドラインに即した標準的な医療を、NDBというビッグデータを用いて支援する新しい試みであり、後継の研究班の成果へと発展し、研究成果は他の厚労科研研究班(「HIV感染症の医療体制の整備に関する研究班」代表・横幕能行)と共有し、共同研究が進んでいるところである。
その他行政的観点からの成果
循環器分野の知見は、国の平成30(2018)年の診療報酬改定に反映された。
本研究の成果は後継の研究班の成果と統合され、エイズ動向委員会にNDBを用いたHIV感染症患者に関する集計結果を継続的に提出している(第153回~第156回エイズ動向委員会)。特に、累積ではなく現在処方を受けている患者数を悉皆的に求められることがNDBの強みであり、今後もエイズ動向委員会を含め、行政との共同分析を継続する。
その他のインパクト
特記事項なし。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2021-06-08
更新日
2022-05-26

収支報告書

文献番号
201605032Z