熊本地震発生後の急性脳・心血管疾患発生数と予後に関する研究

文献情報

文献番号
201605025A
報告書区分
総括
研究課題名
熊本地震発生後の急性脳・心血管疾患発生数と予後に関する研究
課題番号
H28-特別-指定-027
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
掃本 誠治(熊本大学 大学院生命科学研究部循環器内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 橋本洋一郎(熊本市民病院 神経内科)
  • 榛沢和彦(新潟大学 医歯学総合研究科)
  • 小島淳(熊本大学大学院生命科学研究部心不全先進医療共同研究講座)
  • 末田大輔(熊本大学大学院生命科学研究部循環器内科学)
  • 中島誠(熊本大学医学部付属病院脳血管障害先端医療寄附講座)
  • 稲富雄一郎(済生会熊本病院 神経内科)
  • 坂本憲治(熊本市民病院 循環器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
2,562,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
熊本地震後の静脈血栓塞栓症いわゆるエコノミークラス症候群を含めて、急性脳・心血管疾患発症の現状を把握すること。
研究方法
熊本地震血栓塞栓症予防プロジェクト(KEEPプロジェクト)を主体として、熊本大学医学部附属病院循環器内科学教室と県内基幹病院において、熊本地震発災後の脳・心血管疾患の現状把握、支援のあり方について共同調査を行った。
結果と考察
詳細は別掲の通り。エコノミークラス症候群については、発災から2ヶ月間は日ごとに、それ以降は月別に記載。心臓突然死、心不全、タコツボ型心筋症、大動脈解離、高血圧性疾患、不整脈については、2016年、4月、5月、6月について集計(別掲参照)。神経難病は中島誠分担者、脳卒中、けいれんは稲富雄一郎分担者、避難所での深部静脈血栓症一斉検診は坂本憲治分担者、急性心筋梗塞は小島淳分担者が報告。また、災害時抗凝固療法を末田大輔分担者、過去の新潟県中越地震との比較を榛沢和彦分担者、組織のあり方を橋本洋一郎分担者が報告。調査の段階で、心不全入院が例年に比し、非常に多いこと、不整脈も多い印象をうけた。
しかし、2~3ヶ月を過ぎると、震災の影響なのか、通常でも起こりえた機序による発症なのか不明であり、前年とすべての疾患を比較してもこれはあまり関連病院に多大な労力を御願いする割には有益性が少ないと判断した。そのため、
予備実験として社会保険診療報酬支払基金のレセプトデータからエコノミークラス症候群について検討した。
結論
熊本地震後の心血管疾患について集計解析を行った。今後さらに課題を浮き彫りにして対応策を検討することと、災害時の遠隔医療
(情報通信技術ICTを利用した下肢静脈エコーreal time動画像伝送システム)の実現を目指していく。

公開日・更新日

公開日
2017-06-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2017-06-15
更新日
2017-09-13

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201605025C

成果

専門的・学術的観点からの成果
平成28年熊本地震では、避難所巡回検診において下肢静脈エコーを含めて予防啓発活動を行った。避難所での被災者3,500名の下肢静脈エコーデータは、そもそも災害発災直後の急性期からエコノミークラス症候群予防として下肢静脈エコーが必要かどうか、の根本的な問題に対しての資料となる可能性がある。つまり、支援活動の結果が、研究結果および考察の対象となり学会、文献等で報告しており、アカデミアとしての成果は大きいと考える。
臨床的観点からの成果
震災直後から、エコノミークラス症候群予防啓発活動として避難所巡回検診を行い下肢血管エコーによる深部静脈血栓症のスクリーニングと弾性ストッキング配布・指導を含めた保健衛生活動を行った。エコノミークラス症候群のアウトブレークは早期を除けば防げたと思われ、一定の成果はみられたのではないかと考える。
ガイドライン等の開発
今回のエコノミークラス症候群予防啓発活動では日本循環器学会からの災害時循環器疾患の予防・管理に関するガイドラインが大変有用であった。今回のデータをもとに災害時循環器疾患の予防・管理に関するガイドライン、あるいは肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断、治療、予防に関するガイドライン等に災害時の下肢静脈エコーなどの必要性の有無、また早期のマスメディアを含めたエコノミークラス症候群警戒警報のような告知方法など提案できればと考えている。
その他行政的観点からの成果
今回の熊本地震に対する研究および支援活動の母体となった組織は熊本地震血栓塞栓症予防プロジェクト(KEEPプロジェクト)であるが、この組織構成そのものが、日本循環器学会、日本静脈学会等の全国レベルの主要な学術団体、熊本県健康づくり推進課、熊本市、等の行政機関、地元マスメディア、熊本大学病院等の地元医療機関から成立しており、行政との連携で支援が成り立ち、その結果研究成果が得られたものである(ホームページ keep2017.umin.jp/index.html)。
その他のインパクト
エコノミークラス症候群予防啓発には、マスメディアによる報道が重要であり、KEEPプロジェクトによる支援活動、研究結果に関して新聞等で掲載いただいた。また、2017年4月22日、23日、熊本市のくまもと県民交流館パレアにて『熊本地震シンポジウム2017』を開催し、全国から災害医療の専門スタッフによる熊本地震の支援及び研究結果の討論を2日間行い、最終日は、市民公開講座を開催し、一般市民にも情報を共有した(ホームページ keep2017.umin.jp/index.html)。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
2件
深部静脈血栓症、脳卒中、てんかんに関する論文
その他論文(和文)
20件
学会雑誌、一般雑誌への投稿
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
46件
医師、看護師、技師、多くの学会・講演会で発表している
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
エコノミークラス症候群に対する市民・県民公開講座を開催

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2022-05-26
更新日
-

収支報告書

文献番号
201605025Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,818,000円
(2)補助金確定額
691,000円
差引額 [(1)-(2)]
2,127,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 175,280円
人件費・謝金 249,346円
旅費 0円
その他 10,468円
間接経費 256,000円
合計 691,094円

備考

備考
予算の請求に関して、活動した後に、基本的に遡って請求できないと指摘され、予算執行が難しかったため、別財源にて支出を行った。(自己資金:94円)

公開日・更新日

公開日
2018-01-10
更新日
-