看護師の特定行為研修の修了者の活動状況に関する研究

文献情報

文献番号
201605022A
報告書区分
総括
研究課題名
看護師の特定行為研修の修了者の活動状況に関する研究
課題番号
H28-特別-指定-024
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
永井 良三(自治医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 春山 早苗(自治医科大学 看護学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成27年度10月に制度が創設された看護師の特定行為研修の修了者の活動状況は、修了者の養成計画や医療提供体制に大きな影響を及ぼすため非常に注目されている。また、当該研修制度は公布後5年を目途として、施行状況等の結果に基づいて、所要の措置を講ずるものとされている。今後、当該研修制度のさらなる普及が望まれる中、制度見直しに向け、修了者の医療現場における活動の現状や課題を把握することは重要である。本研究の目的は、修了者の活動の実態及び現状の課題を把握すること、またその活動に関連することを探索することとした。
研究方法
平成28年2月までに指定された21の指定研修機関に協力を依頼し把握した研修修了者(204人)及び修了者の所属施設の管理者(164人)並びに修了者の所属部署の管理者(204人)を対象に郵送による無記名自記式質問紙調査をした。調査期間は平成28年12月2日~平成29年2月13日。回収数(率)は修了者94人(46.1%)、施設管理者70人(42.7%)、部署管理者56人(27.5%)であった。調査項目は、修了者は所属施設及び属性、修了研修の概要、特定行為の実施状況及びインシデント・アクシデントの発生状況、修了後のチーム医療の状況、修了後の変化、活動上の課題等。施設管理者は所属施設及び属性、施設内の修了者数、修了者の配置形態や組織体制、処遇の変更の有無、修了者の活動への支援、修了者の活動に関する課題等。部署管理者は所属施設及び属性、部署内の修了者数、修了者の活動への支援、修了者の活動に関する課題等。量的データについては、SPSS ver.23を用いて単純集計をし、また、研修修了後のチーム医療の状況については「実施有り」特定行為数等により2群に分け、平均値の差の検定等を行った。記述データについては、質的に分析した。また、地域特性を考慮した研修修了者の必要性と課題を検討するために、研修修了看護師がいる山間過疎地域のへき地診療所及び修了看護師がいない離島のへき地診療所の各々看護師1人、医師1人にヒアリングを行った。
結果と考察
修了者の所属部門について際だって多い部署はなかった。過去1か月間にいずれかの行為を1回以上実施した者は約65%であり、また各区分別科目の修了者割合と実施者数割合は必ずしも比例していなかった。未実施者理由は38行為中30行為で「対象となる患者がいなかった」、「手順書が未作成」の順に多かった。特定行為の実施状況から修了者は5つのタイプに分けられた。研修及び修了者の活動が医療現場にもたらした成果として、チーム医療の促進、臨床判断能力の向上とそれに基づく看護実践能力の向上、その結果である患者・家族の満足感や安心感等の高まり、修了者のアサーティブネス及び看護師としての自律性の向上と医師・他職種との相互作用の促進が示唆された。研修修了者の活動に関わる課題として[研修制度及び修了者活動の周知]、[修了者の活動についての組織のビジョンと組織的な合意]、[修了者の勤務配置・活動時間及び医療安全管理体制等の修了者が組織内で機能していくための具体的な組織内体制づくり]及び[修了者へのフォローの充実と修了者の自己研鑽]等が考えられた。課題解決のための取組として、〔研修制度や修了者の活動についての組織的な周知活動〕、〔会議等を施設内に立ち上げ、修了者の活動内容や問題の共有並びに改善策の検討〕、〔組織のビジョンに基づく修了者の活動体制の調整〕及び〔修了者への指導体制整備と自己研鑽のための支援〕が必要である。修了者の活動に関連することとして、病院規模、医師や医療現場の状況、修了者としての関わりを要する状況の整理、手順書の作成等が示唆され、修了者の活動体制づくりや今後の制度見直しにおいて考慮が必要である。
結論
本調査結果の回答者は平成28年の研修修了者が約8割を占め、多くは修了者としての活動期間が短く経験が浅い者と考えられたが、比較的活発に活動している者が全体の約3割いた。結果から、研修及び修了者の活動が医療現場にもたらした成果として、チーム医療の促進、臨床判断能力の向上とそれに基づく看護実践能力の向上、その結果である患者・家族の満足感や安心感等の高まり、修了者のアサーティブネス及び看護師としての自律性の向上と医師・他職種との相互作用の促進が示唆された。今後は実施割合が低い特定行為についてその理由並びにを活動が促進・活発化しても医療安全面に問題はないか等、継続して調べていく必要がある。加えて、修了者がチーム医療の推進等医療現場に及ぼす成果をさらに確認していき、また、本研究で明らかになった修了者の活動に関連することについては修了者の活動体制づくりや今後の制度見直しにおいて考慮が必要である。

公開日・更新日

公開日
2018-03-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-03-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201605022C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究により明らかとなった特定行為研修の受講及び研修修了者の活動により修了者に認識された変化及びそれらから示唆された医師や他職種に及ぼした影響により、チーム医療や他職種との協働において求められる看護師のコンピテンシーとして、アサーティブネス及び看護師としての自律性の重要性が再確認され、本研究結果はチーム医療の推進のために必要となる看護師、特に中堅看護師のキャリア教育を検討するために役立つ知見である。
臨床的観点からの成果
本研究により研修修了者の活動実態が全国レベルで初めて明らかになった。具体的には区分毎の研修修了状況、修了者の所属部署、各特定行為の実施状況、未実施理由、修了者の5つの活動タイプ、修了者の活動が医療現場にもたらした影響と課題等である。この結果は看護師の役割拡大が医療提供体制にもたらす肯定的な可能性を示すものであり、また修了者を医療現場でより機能させていくための取組に示唆を与える。また、施設管理者が当該施設において、より良い医療提供体制を構築していくための修了者の活用方法を検討していくことに役立つ。
ガイドライン等の開発
平成29年6月26日に医道審議会保健師助産師看護師分科会 第13回看護師特定行為・研修部会が開催され、特定行為研修制度の推進について検討される。その際に本研究で明らかになった特定行為研修の修了者が認識している研修を受けたことによる変化が参考として提示される。
その他行政的観点からの成果
平成27年10月に創設された看護師の特定行為研修制度は、公布後5年を目途として、施行状況等の結果に基づいて、所要の措置を講ずるものとされている。本研究により明らかとなった特定行為研修修了者の医療現場における活動状況の実態並びに、その結果から示唆された研修修了者の活動による成果、活動に関わる課題、課題解決のための取組及び研修修了者の活動に関連することは、特定行為・研修部会における今後の制度見直しに向けた審議の重要な基礎資料となり、当該研修制度の普及及びより円滑な運営に資するものである。
その他のインパクト
看護師の特定行為研修制度は平成27年に創設されたばかりであり、研修内容は保健師助産師看護師法に規定する当該研修に関する省令において定められているが、その運用については各指定研修機関が手探りで行っている部分も多い。厚生労働省主催の第1回看護師の特定行為に係る指定研修機関意見交換会(2017.3.2)にて本研究結果の概要を発表したが、本研究結果は研修機関が制度の趣旨に沿って、また各研修機関の受講者の特徴に応じて、より適切かつ効果的に研修を実施し、修了後も含めた研修機関の役割の検討に資するものである。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
1件
春山早苗:看護師の特定行為研修の終了者の活動状況に関する研究 調査結果から見た看護管理者に求められる役割、看護管理、27(11)、894-899.
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
村上礼子:第37回日本看護科学学会学術集会(2017.12.17)の交流集会で研究結果の一部を発表.
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
医道審議会保健師助産師看護師分科会 第13回看護師特定行為・研修部会(2017.6.26)の参考資料
その他成果(普及・啓発活動)
4件
春山早苗:看護師の特定行為に係る指定研修機関意見交換会(2017.3.2),JICA保健衛生管理セミナー(5.31).村上礼子:栃木県看護部長会研修、IMSグループ看護師特定行為研修講演会

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2021-07-16
更新日
-

収支報告書

文献番号
201605022Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,500,000円
(2)補助金確定額
6,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,439,422円
人件費・謝金 439,795円
旅費 335,860円
その他 2,784,923円
間接経費 1,500,000円
合計 6,500,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2018-06-06
更新日
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