文献情報
文献番号
201605019A
報告書区分
総括
研究課題名
ICTを利用した死亡診断に関するガイドライン策定に向けた研究
課題番号
H28-特別-指定-021
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
大澤 資樹(東海大学医学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
4,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
平成28年6月規制改革実施計画に基づき、健康・医療分野において「在宅での看取りにおける規制の見直し」が個別措置事項として閣議決定された。年間死亡者数の増加が予想される中、自宅で死を迎える在宅死が増加すると想定される。一方で、いつ訪れるかも分からない死に対して、常時医師が対応し死亡診断を行うことには限界があり、離島やへき地では医師の対応困難な状況が深刻化している。死亡診断は医師の専任事項であり、通常医師による直接的な死亡診断が行われているが、これを実行しようとする限り、必ずしも必要ない救急搬送が行われたり、実質的に死亡している人をしばらく放置せざるをえない状況も発生している。そこで、本研究においては、看護師が患者の元へ赴き、死亡確認を代行し、その結果を医師に報告し、医師が死亡診断書を作成することの補助をできるように、教育・訓練を受ける研修の場を整備することを目的としている。
研究方法
本研究においては、まず各領域から専門家8名を研究協力者として招き、看護師が遠隔で死亡診断をする際の補助を務めることに対する議論を5回にわたり重ねた。協力いただいた専門家は、今村聡(日本医師会副会長)、松本純一(日本医師会常任理事)、畔柳達雄(日本医師会参与・弁護士)、齋藤訓子(日本看護協会常任理事)、池田典昭(日本法医学会理事長)、柳井圭子(日本赤十字九州国際看護大学教授)、大木實(福岡県医師会監事)、西田幸典(昭和大学保健医療学部講師)各氏(敬称略)である。これと平行して、既に看護師による死亡確認が実施されている英国に視察に訪れ、現状や問題点についてインタビューを重ねた。また、死亡確認の際に情報通信機器を用いてどれほど正確に身体所見をとることができるのか、警察の検視で実際に使用されている機器と通信システムを使用して、遠隔での死亡確認に対して検証を加えた。
結果と考察
様々なことが議論の対象となったが、遠隔による死亡診断の適用となる医師が不在の時間数、転送された画像での身体所見の確認、多忙な看護師の研修内容と時間等が問題点として挙げられた。また、この意見交換に加えて、すでに看護師による死亡確認が実施されている英国での実践状況調査、セキュリティ対策機能をもつ通信システムの使用と遠隔での死亡確認に適した心停止の確認提示法についても検討を行った。これらの内容をまとめた上で、具体的な教育・訓練方法を提言として「ガイドライン」をまとめた。今後ガイドラインを公表した上で、平成29年度中には希望者に対して、研修の場を提供できるように体制を整備する予定であり、ICTを利用した遠隔での死亡診断が早期に開始されるように努める。今回の施行後、実施例を収集した上で、2年後には再度検討し、よりよい制度にすることを目標とする。
結論
看護師が実質的な死体を扱うことは、学部教育でも、看護の業務でも体系だって教わっていない。在宅死を扱う場合に、三徴候の確認による死亡確認だけでは不十分で、死体現象や損傷まである程度の知識が求められる。遠隔での死亡診断に関わる看護師には関連する法律や法医学について教育と実習を受けてもらい、一定の知識と能力を備えてもらうように体制を整える必要がある。また、死亡確認の具体的な流れについては、身体画像といった個人情報の保護に十分に配慮した上で、情報通信機器を使用した手技的な面でも確実な実施が求められる。今回まとめたガイドラインに従って、実際に遠隔で死亡確認が行われるようになることを期待している。これにより、終末期患者と家族が求める看取りに少しでも貢献できることが肝要と考えている。
公開日・更新日
公開日
2017-06-15
更新日
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