介護施設におけるケアの効果及び効率性の評価手法に関する研究

文献情報

文献番号
201605016A
報告書区分
総括
研究課題名
介護施設におけるケアの効果及び効率性の評価手法に関する研究
課題番号
H28-特別-指定-018
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
福田 敬(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 森川 美絵(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
  • 玉置 洋(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
  • 小林 健一(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
  • 大夛賀 政昭(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
  • 藤野 善久(産業医科大学 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
13,203,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、介護施設における利用者情報や介護記録がいつどのように収集・蓄積され、どの程度活用されているかといった実態把握を行い、このデータ化を行うとともに、この分析を通して、ケアの効率性や効果を評価する手法の検討を行うことを目的とした。
研究方法
本研究では、以下の5つの研究を実施した。
1)ケアプロセスの標準化とモニタリングに関する研究動向の把握
2)ヒアリング調査による施設ケアにおける各種ケア記録の整備・連動・活用状況の把握
3)ケア記録の定量的分析による介護施設におけるケア効果の評価手法の検討
4)ケア記録の定量的分析による介護施設における効率性評価の検討
5)症例調査による介護行為データベース化のための介護行為分類作成
1)については、OECDのポリシーペーパーを中心に、ケアプロセスの標準化とモニタリングに関するEU報告書などを概括した。
2)については、利用者情報や介護記録の情報活用の現状と課題に関して、特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム)3施設を対象に、記録の様式化の状況、記録の活用に関するヒアリングを実施した。
3)および4)では、介護付有料老人ホーム4施設から、アセスメント情報やケアプラン、モニタリングシートの他、ケア実施記録について、所定の2時点を始点とした各1週間分のデータを収集した。
 3)については、調査対象施設に調査期間中に入居していた利用者のアセスメント情報に着目し、2時点間の変動について把握を行い、状態の状況ごとに提供されていたケア実施記録上のケアがどのように異なっていたかについて分析を行った。
4)については、収集したデータを基にDEA分析を実施した。資源投入として、介護職員と看護職員の1週間の総労務時間と常勤換算した介護職員と看護職員の配置数、便益産出として、調査対象となった利用者数をいれることで、資源投入に対して、どの程度の利用者へのケアが可能となっているかを検討した。
5)については、排泄介助に着目し、介護老人福祉施設4施設、介護老人保健施設1施設の計5施設を対象にヒアリング調査を実施した。
結果と考察
1)アセスメントツールの標準化は一定程度進んでいるが、アセスメント結果をどのように個人のニーズや状況に合わせてケア提供を行うかといったことへの応用は発展途上にあることが明らかになった。
2)ケアマネジメントプロセスにおける情報の活用・連動:介護記録の収集・蓄積の目的は、ケアマネジメントへの活用のほか、リスクマネジメントや利用者アカウンタビリティなど様々であった。介護記録は、A社では、電子化されその情報をケアマネジャーやリーダー、管理者が閲覧していたが、B社では紙や口頭の情報共有となっていた。
3)ADLに着目すると、改善したものは少なかったものの、状態の改善・維持・悪化をした3群へのケアを比較することで、異なる傾向を示したケアを明らかにすることができた。
4)DEA分析の結果、DMUスコアが1となったのは、9施設中3施設であった。DMUスコアが低かった施設の一つは利用者に対して、人員配置が多くなっていたため、効率性が下がっており、もう一つの施設は労務時間の多さが課題となっていた。
5)5施設の25名分の利用者から事例が収集された。排泄介助のみに限定した場合、「トイレ誘導」、「トイレ動作の介助」等の分類でみた場合、施設間・事例間での大きな違いは見られなかった。
結論
1)我が国においても全国レベルでのデータを活用したニーズアセスメントから個人のケアプラン立案までの統一的方法論の開発が求められるものと考えられた。
2)ケアマネジメントプロセスに対応した記録の全体像、各種記録の連動性と利活用に関する実態と課題、評価のKPIを抽出する際の参考情報が得られた。本研究は、介護施設におけるケアの実施プロセスを活用した評価手法開発の基礎作業として位置づけられる。
3)今回得られた知見をもとに、継続した研究を行い、評価対象とすべきケアの項目の特定や具体的な評価の手法について引き続き検討していくことが必要と考えられた。
4)効率性の評価モデルからは、全体的傾向として、利用者への介護業務の効率性を上げるためには、ケア記録の回数より、労務時間と配置人数の削減が求められている状況を明らかになった。今後は、より総合的な観点から効率性の評価をする必要があると考えられた。
5)研究で収集した事例を作成した「排泄ケア提供内容に関する分類案」に当てはめた場合、ほぼ全ての症例において記述可能であった。同時にケア内容や手段は、施設や症例によって異なることが確認された。今後はケア内容に係わるデータを蓄積することで、同程度の状態像でも好ましいケアが提供されている施設や優良実践事例の把握や収集が可能となり、介護の質の向上に寄与できる可能性が示された。

公開日・更新日

公開日
2018-02-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-02-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201605016C

収支報告書

文献番号
201605016Z